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企業選び1

「やっぱりさ、『ヘロデ・サイエンス』でいいんじゃないの?」

 私は、携帯端末で企業連所属の企業を孫会社まで徹底的に調べ、面倒臭くなってテーブルに突っ伏しながら言った。

「だから、ヘロデ・サイエンスから『劇薬すぎて嫌』って言われてんだよ。というか姿勢。サラに怒られるぜ?」

 テーブルの向こう側から、レイモンドのたしなめるような声がして、唸りながら渋々椅子に座り直して姿勢を正す。

 研究所から退院(?)したその日の晩の夕食後、私とレイモンドは、私の支援をしてもらう企業を選んでいた。サラは隣の部屋で私の件についての情報を集めている。因みに晩御飯はレーションを暖めただけのもので、美味しかったけどすぐ飽きる気がする。サラによればこの『ホーム』での食事はいつもレーションらしい。そのうち市場を見て、食材の値段によっては料理でもしよう。そうしよう。

 因みに、『ホーム』というのはノーマルやリンクスのパイロットとオペレーターに、機体を運ぶ『ストーク』、機体を修理調整する『メカニック』、健康を管理する『ドクター』、プログラムをいじる『SE』と、大規模なところでは宣伝担当である『PR』に食生活を管理する『コック』からなる集団とその拠点のことであり、ジャンク漁りで言う所の『チーム』のことだ。

 私のお世話になるレイモンドのホームは、この二人の他に、ストーク二人、メカニック十人、SE四人、ドクター一人からなるホームで、リンクスを一機持つホームとしては平均的な構成のホームらしい。私がこのホームに入るかはどの企業の支援を受けるかで決まるけれど、どのみちしばらくはこのホームでお世話になることになっている。

「でも、資本力、政治力、技術力のバランスを考えるとヘロデ一択じゃない?」

「確かにそうだが、拒否されている以上やめとけ」

 すげなく返されて、思わずむくれる。因みに、この二人以外のメンバーは私の乗っていた『アント』の修理や調整で出払っている。いや、ドクターだけは私の情報を研究所から聞きに行っているのだけれど。因みに、それらの経費は私持ちである。ジャンク漁り時代に溜めたIC(International Credit:この世界の共通通貨。電子化されている)は消し飛んだ上にヘロデ系列の銀行から借金まですることになった。泣きたい。

「あ。じゃあここは?『ヒューマン・ライブラリ』」

 気を取り直して提案したのは、医療器具や薬のシェア一位を誇る軍産複合企業(というか今ある企業はほとんど軍産複合)の『ヒューマン・ライブラリ』。ゲーム中ではエネルギー兵器とシールドジェネレーターが優秀で、また子会社の『トーテムポール』が『リンク・システム』の大御所でもあるので、熟練者は弾薬費を安く済ませるためにこの企業のパーツや兵器を良く使っていた。

「確かにそこならお前を良く扱ってくれるだろう。モルモットとしてな」

「うげ」

 ただ、ミッション概要を説明する仲介人の話し方や情報の出し方がどこか胡散臭く、この企業のミッションをやった実況動画のタグには「騙されたい人向け」とよく書かれていた。どうやらその胡散臭さは現実となったこの世界でも有名らしい。

「となると、『GF系列』か本社以外のヘロデ系列かあ……」

 ぼやくように呟く。

「いや『グリーンオーシャン』省くなよ」

 レイモンドが言った企業は、ゲーム知識によると『企業間大戦』で敗北し『TRUTH』までに解体された企業で、ホープ技術やパンドラボックスを発明した企業でもある。『TRUTH』の時点では『トーテムポール』に吸収されていて、トーテムポールはグリーンオーシャンの思想を引き継ぐことになる。さっき調べたところによると、グリーンオーシャン自体はかなり落ち目であるものの、未だ存在しているらしい。なぜこの企業が嫌かというと、答えは単純。

「変態すぎて嫌」

「だよなあ……」

 そう、変態企業なのだ。ホープ技術に特化するあまりエネルギーに依存しすぎる兵器に、エネルギーが無いと紙より弱い防御系。挙げ句の果てには『ホープ粒子』そのものを利用する兵器を作り出すというもう何を考えているのか理解したくない企業だ。

「その二つならGF系列しか無理じゃね?」

「えなん……。あそっか」

 レイモンドの言葉に疑問を抱くも、すぐ氷解した。ヘロデ系列で残る大御所は二社。『ワーグナー』と『ダークホース』である。ワーグナーは確かに医療、リンクス両方の技術に優秀だけれど、設定資料集によると大戦後政治力が極端に低下したとあるし、調べた感じそれは間違ってない。ダークホースの方は政治にも技術にも多大な影響力を及ぼしているけれど、それは大戦で多くの犠牲を出したからであり、ここの支援を受ければ早速戦場に出されそうだ。

「いや……」

ダークホースの子会社の『ミール』ならありか? いや、確かにここはゲーム中では政治的駆け引きが上手いと描写されていたし、リンクスの天敵であるフォートレスに対して非常に有効な兵器を作る。だけれど、リンクスに対しては雑魚だし、ここだけでリンクスを作ってはいないし、それになによりそこはかとなく変態臭がするのだ。やっぱりやめておこう。

「良しじゃあGF系列にしよう」

「それは良かった」

 レイモンドはとても嬉しそうだった。というのも、レイモンドはGFから支援を受けているため、GF系列の企業の支援を受けるならこのホームに残れるのだ。

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