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初仕事1

 作戦を説明する。


 雇い主はGF。

 目的は旧ブラゴベシチェンスク周辺の、破壊されたリンクスやフォートレスのパンドラボックス及びホープタンクの回収だ。


 この地域では、企業間大戦時に大規模な戦闘が行われた結果、多くの兵器の残骸が放置されている。流通網の回復のために南部からノーマル部隊が残骸や不発弾の回収や破壊を進めている。

 その邪魔になっているものの回収が、今回の依頼だ。


 ただ、きな臭いことにこの流通網が回復されたら困る連中がいるらしい。偉いさんによると、護衛のリンクスを用意しているらしいが、自衛出来る火器位は用意しておいた方が良さそうだぜ。


 こんなところか。

 悪くない依頼だと思うぜ。連絡を待っている。



   * * *




 舌を噛みそうになるくらい長ったらしい名前の都市だった場所の北部。ここにリンクスやフォートレスの残骸があるらしい。ノーマルや戦車や戦闘機といった『アームズ』の残骸が散らばる光景は元ジャンク漁りとしては垂涎の光景だけれど、目が痛くなるくらいに漂っている青白いホープ粒子にげんなりする。

「てかこれアントの電気系にダメージ入ってるんだけど……」

 リンク・システムにより自分のものとして感じられる乗機のアントの電気系に瞬間的な高電圧が走ることで、あちらこちらがエラーを吐いている。情報の海も、どこか霞んで遠くまで見通せない。

 ホープ粒子による汚染は、放射性物質と重金属を足したものらしく、放射性物質寄りの汚染能力は液体の水に触れればなくなるものの、そんなものは存在しない乾燥した天気の下では酷く影響を受けている。ホープ汚染に強いリンクスとはいえ、この濃度はきついらしく、アントが何時まで保つか不安だ。

『予想以上に汚染が酷いな。依頼を受けている以上一個は回収した方がいいが、その後は帰って塗装を対ホープ用に変えた方がいいと思うぜ』

 お薦めはD&C製だ、と通信を入れてきたのは、蓮重工から派遣されてきた、私のオペレーターだ。ダン・チャンドラという名前だけれど、その名前で呼ぶと不機嫌になり、『おやっさん』と呼ぶと機嫌がいい、不思議な白髪の交じったおっさんだ。

 先日の面接と話し合いの結果、私は蓮重工に所属することを決めた。その結果蓮重工から大勢の人間が派遣されてきたけれど、それに文句を言わず、むしろ歓迎してくれたレイモンドのホームのメンバーには感謝が尽きない。

「だねえ、おやっさん。でもそれ、借金になるでしょ?」

 そう言うと、おやっさんに笑われた。

「笑いごとじゃないよ……」

 そう、笑いごとじゃない。この仕事を受けた結果、いくらかの前払い金を貰ったけれど、それはほとんど借金の返済に使われてしまった。対ホープ汚染用の塗装なんて高級品、手持ちじゃあ買えないので借金になる。十歳目前に自前の借金まみれなんて。泣きたい。

『なら、SEに頑張ってもらうか』

 なぜそこでSEが出てくるのか分からず、首をかしげる。

「何でSEが出てくるの?」

 すると、おやっさんは常識を教えるような、出来の悪い子に教えるような優しい声色で教えてくれた。

『そりゃあな、ホープ汚染で機械にダメージが入るのは、ホープ粒子のせいで意図しない電流や高電圧が電気系に発生するからだ。それはシーナも気付いてるだろ?』

「まあ、ね」

 というかビシビシ感じてます。何気に痛いです。

『そういうのはプログラムをいじれば影響を押さえられるんだ。難しいがな』

『難しい、って……。それ大丈夫なの?』

 サラが通信に割り込んでくる。どうやらずっと聞いていたみたいだ。

『そういうのが得意な変態を連れて来たからな』

 おやっさんはそう笑ったけれど、全然面白くない。それはサラも同じだったみたいだけれど、どうも私が感じているものと方向性が違うみたいだった。

『変態って……。シーナの身に危険が及ぶようなら……』

『大丈夫だって。なんせそいつは数式にしか興奮出来ねえからな!』

「……それ逆に不安なんですが」

 思わずぼやくと、サラも『うんうん』と共感してくれた。だけれど、おやっさんは自信満々に言う。

『なーに、俺がついてりゃ大丈夫さ』

 不思議な説得力に、私はため息をついて頼んだ。

「じゃあ、お願いね?」

 その言葉におやっさんは『任せろ!』と胸を叩き、サラも諦めたようなため息をついて言った。

『……シーナがそう決めたんだったら文句は言わないけど、監視はするからね?』

『なーに、結果を楽しみにしといてくれ』

 そんな話をしているうちに、私は一つ目のパンドラボックスの反応を見つけた。

「パンドラボックスの反応を感知。これより回収に向かいます」

『了解』

 ふかしていたブースターの速度を絞り、目標上空でホバリング。下半身の無いリンクスの周囲に転がる人型ノーマルの、肩部に装備されたミサイルポッドを刺激しないよう慎重に降下、着地する。

「目標を目視。これより解体作業に入ります」

『了解。丁寧にいけよ?』

 言われなくても、とおやっさんに返し、アント左肩部に固定していた解体用の作業キットを左腕に装着し、パンドラボックスの入っているリンクス機体胸部やや後方、コックピットの後ろの部分を取り外すためブースターユニットの解体に取りかかった。

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