エコバッグは忘れがち
予定は一週間後
現世に来た時の負担を少しでも減らす為、康成は現世の食材を置いていくことにした。
「今日は少ししか持ってきてないから、また明日持ってくるよ」
「すみませんがよろしくお願いします。役に立つかは分かりませんが現世にはないと思われる鉱石を探してみました。珍しい石は価値があるようですので遊びに行く私達にかかる費用充ててください」
そういうと甚平は木の箱を康成に渡した。
「そんな、気を使わせたみたいで悪いな」
「念のため確認してください」
甚平が促すため康成は木の箱を開けた。
「おぉ……」
箱の中には赤、青、緑が混じる金にも銀にも見える水晶が複数入っていた。
「霊力が入っている状態の霊水晶です。普通は単色なのですが自然にできた霊水晶はたまに複数の属性が混じるモノが見つかります。どうです?現世でも通用しそうですか?」
「そんな貴重そうなモノ貰えないぞ」
「気にしないでください。たまに見つかると言っても採掘で100個に1つは見つかりますので凄く貴重と言うわけではないのです」
「アクセサリーにもできそうだな」
「現世ではそれも良いと思いますよ。霊力の使い道もあまり無いようですしね。見た目は綺麗な水晶ですので娘さんや、お母さんに渡したら喜ばれるのではないですかね?」
「そういうことなら貰うことにするよ。ホントに大丈夫なんだな?」
「大丈夫だぜ?俺も採掘の手伝いに行くと良く見つけるからな」
こんなに綺麗なのになぁ……
逆に霊界ではどんなものが価値を持つのだろうか?
「なぁ康成?明日も来るんだろ?また狩りに行こうぜ?」
「確かに明日は食材を持ってきて調理方法を教えるくらいだから暇だな。別にいいぜ?」
「それじゃあ約束だからな!」
「決まりだな、それじゃあ今日は戻るとするかな。明日の買い出しもあるしな」
「わかりました。それではよろしくお願いします」
明日の予定も決まり康成は少し早いが帰宅することにした。
………………………………
家に帰ると康成は車を出し、近くの商店街へと足を運んだ。
「卵はあっちにあるだろうし……いやっ材料は現世のを使った方が良いな、一通り揃えるか」
卵や野菜、冷凍のブロック肉をどんどんカートへ入れていく。
「四人分だけど大食いが二人いるからさすがに値段は可愛くねーなぁ……」
一通り買い揃えると値段も大きく、康成の財布からは諭吉一人と野口が数人消えていた。
「あーぁ、さすがに金欠だな」
買い物袋を車の後部座席へ付けると甚平から貰った水晶を思い出した。
「確か商店街に貴金属買取り店があったよな、試しに持ってくか」
箱から一番小さな水晶を取り出すと康成は商店街へと戻った。
商店街の中程にある貴金属店へ入ると店員に専用のカウンターへ通され水晶の査定を行う。
査定を行うのは50歳程の丸眼鏡が似合う店員だ。
「天童さん、お待たせしました。こちらにお座りください。それで今日はどんなモノをお持ちでしょうか?」
「あぁ、これなんですけど」
康成が水晶をポケットから出し、机に乗せると店員は首を傾げ水晶をみる。
「何でしょうかこれは?」
「わかんないっすね。価値があるのかもわからないので持ってきました。もしかしてそういう依頼はダメでした?」
片眼用の顕微鏡のようなモノで何度も確認するが店員は首を傾けるだけだった。
「すみませんが私にはわからないです。ただの石では無いようですし、人工的なモノでもありませんが……多数ある水晶の中でもこの水晶の種類がわからないのです」
「では買取りは難しいですかね?」
「私の力不足で申し訳ないです。本店の方へ預けていただければもしかすると解る可能性もありますが、失礼ですがこの水晶はどちらにあったモノですか?」
あーぁ……やっぱりこっちにはない水晶だったのか……
どこで見つけたことにするかなぁ……
河原でいいかな?
「いやっこの間、家の近くの河原で見つけたんすよ」
「河原で?」
「河原で」
「本当に河原にこの水晶が?」
「本当に」
「まぁ良いでしょう。お客様の守秘義務を守るのも仕事の一つですから、どうしましょうか?本店に送らせていただいてもよろしいですか?」
「構いませんよ、どれくらいかかりそうです?」
「長くても2週間って所ですかね。こちらの他に水晶はありませんか?細かい破片があれば検査にまわしたいのですが……」
康成はポケットを探すと箱に入っていた水晶の欠片が見つかった。
「多分これもかな?小さいけど大丈夫ですかね?」
5ミリ程の小さな欠片を出す。
「大丈夫だと思いますよ。こちらの欠片を精密検査に出してもよろしいですか?」
「それくらいならいいっすよ」
「ありがとうございます。それでは、お預かりいたします。結果がわかりましたらすぐに連絡を入れたいと思いますがよろしいですか?」
「お願いしますね。これ、携帯の番号です」
すぐには売れなかったな……
まぁいっか……臨時で小遣い貰うかな。
……………………………
「これ、なんだい?」
棗は康成が貰った水晶を見ながら呟く。
「今度お世話になるから少しでも足しにしてくれだってさ。今日貴金属の店に行ったけどわからないから調査させてくれって言われたよ」
「へぇー、なかなか綺麗な水晶じゃないか」
「ぱぱ!あやちゃんにも見せて!」
彩愛はテーブルの上の水晶が気になるが背が低いためジャンプしながらのぞいている。
「ほら、抱っこするから」
康成が彩愛を抱っこすると、彩愛は、食い入るように水晶を眺める。
「凄いね!色んな色があるね!あやちゃんが好きな黄色もあるよ!」
「使い道が無いならアクセサリーにでもしてくれってさ。あっちでは良く採れるモノらしいよ」
「遠慮なく貰うよ。ちょっと遅い母の日かね?」
「来年は忘れないようにします」
「期待しないで待ってるよ」
水晶が気に入った様子の棗は笑うながら立ち上がると
「そろそろ寝ようかね。あんたも明日行くんだろ?早く寝な」
「わかったよ。あやちゃんも寝るぞ。明日も保育園で躍りの練習するんだろ?」
「はーい。ねぇぱぱ?今日はこの宝石持って寝ても良い?」
「いいよ。無くさないようにしなね。今度ネックレスみたいに紐でもつけようか?」
「私のも頼むよ」
「うん!お姫様みたいなやつがいい!」
「あいよ」
その後、夜勤明けだったのもあり、康成は布団に入るとすぐに眠りについた。
…………………
時刻は深夜二時を回る時
康成は尿意で目が覚めた。
隣に寝ている彩愛を起こさぬようにそっとトイレに起きる。
「ん?」
トイレを済ませ寝室へ戻る際、二階の窓から外の庭に小さな物陰が見えた。
外の街灯だけの灯りだけでは判断が難しいと思ったが康成にははっきりと見えた。
「白い狐?」
最近夜勤明けの日に色々起こりすぎじゃねーか?
再度寝ようとも考えたが、好奇心には勝てずに康成は外へ出た。




