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Navagos Memorys -異世界の漂流者-  作者: 織田 伊央華
第1章「ビブリア王国」
7/13

第6話「第1階層」

お待たせいたしました。第6話約19000文字での更新になります。

2017年6月27日修正:サブタイトルの変更および本文の分割

         *本文を分割して一話増えました。並びは変えていません。約1万文字ほどです。

         :誤字脱字および加筆修正

 その少女は足元まで伸びる灰色のローブを着ていた。


「君は?」


 身なりからしてそこまで裕福なものではない、むしろ貧困に当たるかもしれないほどに薄汚れている。背中にはその背丈に合わないほどの大きなバッグを背負い、フードを被ったままの少女だ。


しかしながら冒険者などはその仕事の性質上身なりが綺麗な場合は少ない。だがそれらと照らし合わせてもお世辞にも綺麗とは言い難い服装をしている。


「おっと、私としたことがすみません。私は名前をリアと言い、補助者(サポーター)をしています」


 その少女は自分の名を名乗る。そんな少女からは不思議と女の子らしい甘い香りが流れてくる。どうやら見た目はともかく、清潔にはしているようだ。


補助者(サポーター)?君が?」


 リンクがそう言うのもしょうがない、それほどの少女は小さく見えたのだ。年齢にすると10代前半、明らかに子供の身長と体格である。


「はい。もし体が小さいことを気にされているのであればご心配なく、これでも力持ちですので」


 そう言って被っているフードの中から元気な笑顔を見せた。その顔はリンクが声から想像していたよりも幼く、しかし非常に整っている顔立ちをしていた。


 もし何かしら問題があるとしたら真っ先に経験のあるエリナが反応するだろう。しかしながらその反応がないことからもこの少女は補助者(サポーター)をやっているというのは間違いなさそうだ・


「・・・それならまあいいけど、迷宮って結構危険だぞ?」


 リンクとしてはこんな年端も行かない少女を危険な場所に連れて行くことはためらわれる。しかし、隣で見ていたエリナは違う考えだったようだ。


「では仮契約でどうでしょうか?」


 仮契約とは正式にパーティーに加入する前に一度ともに潜り、その力量を見極めるための時間を設けるという事だ。それを知っているエリナはそう提案してきた。


「私はそれでも構いません。報酬に関してもお任せしますっ!」


 どうやらこの酒場に入った時点で彼女はリンク達に目を付けていたらしい。それほどまでに即決だった。


「いかがでしょうか、ご主人様」


 リンクにしても荷物持ちである補助者(サポーター)は必要なのだ、だったらこの際仮契約状態でも構わないだろう。


それに未だに補助者(サポーター)と言うものがどういうものなのかを解っていないというのもある。


「わかった、じゃあリアよろしくね」


 そう言うとリンクはリアという補助者(サポーター)の少女と仮契約を結んだのだった。





「それにしてもリンクさんはすごいですねっ!」


 ギルドに戻る道中、必要になると思われる品物を買い集めている時にふとリアが呟いた。


 いつの間にかエリナが自分を購入した時のことを教えていたのだ。


「普通高級奴隷とはいえ、金貨100枚以上なんてぽっと払えませんよ、どこかの貴族のご子息様なんですか?」


 そこまでお金を持っている、という事は普通そのようなことを考えても仕方がないだろう。


「ん?いや、ただの軍人の息子だけど」


 リンクとしては嘘は言っていない。しかしながらリアにとってそれは疑わしいものだったようだ。


「本当ですかぁ?リアに嘘ついてません?」


 まるで大人をからかうように悪戯しそうな表情で笑顔で問いかけるリア。その表情からも歳相応の楽しそうな雰囲気が感じられる。


 そんな時、ふと思いだしたようにエリナが呟いた。


「そう言えば先ほどから血の匂いがしますが、どこか怪我をしているのですか?」


 心配そうな顔をするエリナ、その視線の先にはリアがいた。人間よりも発達した嗅覚が捉えたようだ。ちなみにリンクは全く気付いていなかった。


「え?あっ、すいません今日はちょうど月のものが・・・・ですが軽い方ですので全然大丈夫ですよ?ご心配おかけしました」


 性別的な問題で生物である以上仕方のない事だった。それを知ったエリナはすまなそうに謝る。


「すいません、そうとは知らず」


 そんなエリナの謝罪に対し、いえいえ慣れていますからと笑いながら返事を返すリア。


 女性のそれらの問題に対して男であるリンクは何もできないし、同感することなども出来ない。それだけに居場所のない感覚に襲われるのだ。


 そうこうしているうちにギルドへと戻って来た。


 迷宮に入るにはギルドの一階、エントランスに設置してある巨大な転送陣の中央にある石碑に触れる必要がある。


 それは迷宮が初めてになる初心者にとっても、多くの階層を攻略している玄人にも同じである。


「これを使って転移?をするのか?」


 転送陣を初めて使用するリンク。その戸惑いは得体のしれないものを利用する恐怖から来ている。


 科学技術の発達したリンクの世界でも物質を転送する技術はいまだ確立していなかったからだ。


しかしそれ以外の二人は使用するのは初めてではない。その為使用するのに何のためらいもないのだ。


「はい。この石に触れて、行きたい階層数を頭に思い浮かべることで転送できます。また転送できる階層は各自の到達階層が限度で、パーティでは一番浅い人の階層になります。ですので今回は第一階層ですね」


 各自の到達階層はギルドカードに記録されている。原理としては階層下るとき通過する門によって自動的に記録され、次回からその階層の位置口に設置してある石碑まで転送することができるのだ。


 ギルドに初登録した冒険者のカードには第一階層があらかじめ登録されているのではじめから転送できる、という仕掛けである。


 真っ先に石碑に触れるエリナ。


「それでは行きましょうか」


 エリナに続くようにリアも石に触れる。ここまでくればリンクも触らずを得ない。


「じ、じゃあ行くか」


 そう言い、頭に階層数である1を思い浮かべる。すると直後に体を引っ張られるような感覚が襲ってきた。そして視界が一瞬暗転する。


 次の瞬間目の前に広がっていたのは先程のギルドのエントランスではなく、洞窟のような四方を壁に囲まれている薄暗い空間だった。


「無事に転移できたようです」


 そう言ってきたのはリンクの傍に居たエリナだ。


 転送陣はその性質上時々違う階層に飛ぶことがあるらしい。階層を思い浮かべるときにほかの事を考えているとおきる事故である。しかしそれらはすぐにギルドに戻り、再度飛びなおせば問題はない。


 それに今のリンクには1階層にしか飛ぶことが出来ないので間違いが起きるはずもないのだ。


 ちなみにギルドの転送石碑は複数あり、入り口として設定されているのが先ほどリンクたちが通ってきた石碑で、それとは別に帰還用の石碑が設けられている。これは転送時の混雑やそれによる事故を未然に防ぐためである。


 それらが確立するまでには何度か不幸な事故が起こり、思い浮かべた階層とは違った階層に飛ばされたり、物質の中に飛ばされ行方不明になることもおきていたのだ。


「そうですね、まずは迷宮第一階層へようこそ」


 何度も来た経験があるのか、エリナとリアは自然体である。


しかし始めてきたリンクは未知の世界に警戒心を露にしていた。いわばここは戦場なのである。


「そこまで警戒しなくてもこの転送陣の周りには強固な結界が張ってあるのでモンスターアは近づきませんよ?」


 リンクの心配は転送後すぐに戦闘になるのではないか、と言うものだった。


しかしながらその懸念はすぐにリアの言葉で取り除かれる。


 リアの言葉通り、石碑の周りには等間隔に円になるように鈍い緑色の光を放つ石が設置されており、おそらくそれらがモンスターよけの設備なのだろうと予想がつく。


「いくら慣れている冒険者でも転送後すぐに戦闘を始めるのは難しいですからね」


 確かに転送直後にモンスターに囲まれるなど最悪以外に他ならない。いくら有力な冒険者でも戦闘準備前にモンスターの襲撃を受ければ無傷ではすまないだろう。


 そんなことを言いながらリアは準備を始めた。


 彼女が今回持ってきているのは自分の身長ほどもある大きなバッグだった。リア曰く、このバッグは魔法袋らしい。


「ランクとしては2ですね、内容量は5倍ほどまで入ります、重さもそれなりにありますが移動には問題ありません」


 そう言うと改めて思い袋を担ぎ上げる。


「じゃ俺も準備するか」


 そう言ってリンクも準備を始めた。


 リンクが今回持ってきているのは今現在着ている戦闘用のスーツ、そして腰の両側にかけている拳銃型の武装が二つである。


「それにしても見たことのない武装ですね」


 改めて動作を確認していたリンクに興味津々なリアが話しかける。確かにこの世界には銃という概念が存在しない。


 そもそも銃と言うのは15世紀ごろよりも前に開発され、23世紀を終えるころまで火薬銃として使用されていた。


 しかし現在リンクが手に持っている銃は火薬を炸裂させて弾丸を射出するタイプではない。


 使用するのはエネルギーである。MEMと同じ小型のイオンリフレクターをマガジン部に内蔵し、そのエネルギーを射出する。


 使用者の電脳とリンクすることでエネルギー弾の威力、射程、貫通力など様々な調整が出来、そのエネルギーは光源がある限り無限である。


「これは銃って言ってたぶんこの世界に俺だけしか持ってない武装かな」


 この銃の機能としてはそれだけではないが、今のところそれらを使う予定はリンクにはない。


「へぇ、そのような武器、初めて見ました」


 興味津々なのか、食い入るように見つめるリア。しかしリンクがそれをホルスターになおすことでリアの視線から外れる。


そんなリアとは反対に、興味が無いのかエリナは自分の武装を点検している。冒険者としての矜持なのか、細かく装備を確認しているエリナはどこかメイドからはかけ離れて見えた。


「じゃ行こうか」


 暫定的にリーダーであるリンクが先頭を務め、全員が進み始めた。


 迷宮と言っても現在ギルドで公開されている情報では第20階層まではすべて探索済みであるという。それらの地図はギルドにて高価ではあるが購入できるのだ。


 そして現在はその地図によってリンクは歩みを進めていた。


「ところでリンクさん、地図はどうしたんですか?」 


 歩き始めてすぐ、何も手に持っていないリンクが迷うことなく進んでいることを不思議に思い、尋ねてくる。


「ん?ああ、地図は頭の中に入れてきた」


 実際には見た時に画像を保存、現在視界の中にAR表示の矢印で進む方向を表示させ自動で案内をさせているのだ。


しかしながらそんな視界の中をリアが見れるはずもなく、なぜに迷わなのか不思議なのだろう。


「へえ、あれ程複雑な地図を殆ど見ただけで覚えたんですか?」


 実際にここ迷宮第1階層の広さは1キロ四方以上もある。そんな面積の中に迷路のように道を巡らせているのだ。


「まあ俺の特技の一つだよ」


 そう言いながらリンクは背中に張り付いているバックパックを電脳で操作する。ちなみに着ていた服はすでに脱ぎ、収納している。いきなり服を脱ぎだしたときはリアはあわて、エリナはなぜか食い入るように視線を向けていたが。


その為スーツがむき出しの状態が現状なのだ。


「わっと、びっくりしたぁ」


 すぐ後ろを歩いていたリアが声を上げる。


 その視線の先にはバックパックからポトリと小さなものが待ち構えていたリンクの手のひらの中に納まった。


「それは何ですか?」


 背中が開いたのはスルーし、どうやら出てきたものに興味を示したようだ。


「これは偵察用のドローンで、そうだな言わば斥候かな」


 そう言うとリンクは起動ボタンを押し、ボール状のものを起動させる。


 するとそのボールは二つに割れ、四つに割れ、最終的には小さな16個の物体に分かれる。そしてそれらの個体はそれぞれに羽を生やし、虫の様に飛び立っていった。


「すごっ、あれってリンクさんの召喚獣なんですか?」


 召喚獣と聞きなれない言葉が出るがリンクはあえてそれを肯定した。もちろんリンクが召喚獣を知っていたわけではない。しかしながら言葉からある程度は予想できるのだ。


 そんな偵察用小型ドローンを電脳で操作しながらリンクは歩みを再開する。


 リンクが偵察用のドローンを飛ばしたのはもちろん理由がある。


 この先の通路の安全の確認が第一であるからだ。もちろん事前の情報であると複数種類のモンスターが出現する迷宮。そんなモンスターは自然に迷宮の壁から湧き出し、迷宮内を闊歩するという。


 それらモンスターを事前に偵察するためである。


 その甲斐もあり、すぐにドローンから情報がもたらされた。


「この先30メートルほど先にモンスターがいる。体長は130センチほどの緑色の醜い生き物だ」


 鮮明に届く映像と赤外線などの各種センサー情報。それらからも人間の様に生きている生物であると判明している。


「それは小鬼(ゴブリン)種でその大きさだとゴブリンですね。単体の強さは大した事ありませんが群れで行動するので厄介な敵です」


 そう言うとエリナは静かに戦闘準備を整えだした。


「数は5はいるな、装備もまだらでそう危険なものは見えない」


「すごい視力?ですね」


「まあこれはあれだ、先ほど出した召喚獣とやらと視覚を共有してるんだ」


 適当に誤魔化してリンクも戦闘の準備を始める。


 腰の両側に装備していた銃を取り出し、戦闘モードに移行させる。それと同時に僅かな駆動音がその銃から聞こえてくる。


「まずは俺だけで始末するからエリナはリアの護衛だ」


 短く発するとリンクは体を加速した。背後からエリナの了承の言葉を聞きながらすぐに意識を目の前の敵へと向ける。


「意識的に敵を殺す、という行為はイオスとテロリスト以外は初めてだが、これも生きるためだ」


 そう呟きながらカーブを曲がり、ゴブリンの目の前に踊り出る。


 先ほどドローンから得ていた情報通り、ゴブリンは5体いた。


 それぞれに原始的な武器を装備し、一人は弓やを装備している。そして彼らの体には質素にもほどがある僅かな布切れが巻かれているだけであった。


 そんな彼らを一瞬で認識するとすぐに第一目標を決める。


「遠距離は厄介だな」


 いくら強化されている肉体であっても弓矢が顔に刺さればそれなりに怪我をする可能性がある。


それに後続にはエリナとリアの二人もいるのだ。だからこそ真っ先に標的を弓矢を持った個体に決める。


 瞬時に反応した右手とその先にある銃。現在はガンモードに固定してあるその銃の引き金を引き絞る。


軽めに設定している引き金とそれに反応するように飛び出たエネルギーの塊。それは対人用の威力に抑えられているとは言え、一撃で敵を葬り去る威力を秘めている。そしてその弾丸が秒速3キロほどの速度で弓ゴブリンの頭部に到達する。


その直後、弾丸の威力に頭部が耐えられなかったのか、脳漿をぶちまけながら飛び散った。


「まずは一つ」


 そう呟く間もリンクは動きを止めない。戦場で動きを止めていいのは勝利した後だけだ。それは動いて、動いて、動きまくる。それがリンクの考えかただ。


 すでに1匹を葬られ、残りの4匹のゴブリンは怒りの声を上げる。そして手にしていた武器を手にリンクへと襲い掛かろうと動き出した。


 一斉に動き出したゴブリン達、しかしながら彼らに連携というものはすでになく、ただ感情に任せてリンクへと走りだしていた。


 しかしながらリンクまでの距離は10メートルほどあった。


「近接武器では遠すぎる間合いだ」


 そう呟くとリンクは銃の射撃モードを変更する。


〈モード:ラピット〉


 弾の威力を抑え、連射モードに切り替わる銃。その直後に引き金が引かれた。


 なんの明かりもない空間に青白いエネルギーの流星郡が僅か数秒放たれる。そしてその後には動くものはなかった。


 リンクはもう一度敵の生存を確認する。


 視界の中にいたゴブリン5匹は見事に沈黙していた。最初の弓ゴブリンは頭部を無くし、残りの4匹は体中に穴を空けている。


「少しやりすぎたかな」


 ゴブリンなどからは討伐証明用の部位の提出がギルドでは求められている。その為それらの部位と体内のどこかにある魔石を回収する必要があるのだが。


「うわっ、もう終わってる」


 後ろから魔石灯を手に現れたエリナとリア。その中でもリアは目の前の惨状を目を丸くして驚いている。


「時間にして10秒ほどですか、流石ですご主人様」


 リンクが飛び出した直後走って来たのだろう。その間に戦闘が終了していたのだ。


「いやいやいや、おかしいですよっ」


 しかしながら納得していない人物もいた。


「たかがゴブリン5匹ですから弱いのは理解できます。私一人でも10分ほどあれば殲滅できる弱さです。でもいくら上級の冒険者でも一人でこれほど早く倒せる人はいませんよ」


 驚いているためか早口に説明するリア。そう言いながらも素早く部位を回収しているのは流石だと言わざるをえない。


「エリナ、参考までに一般的な殲滅時間を聞いてもいいか?」


 戦闘とは先手必勝であり、瞬時に決着をつけるのが最も好ましい。こちらに被害を出さず、最低限の負傷で勝つのが鉄則である。


「見たところ一匹弓使いがいますね。それに棍棒持ちのゴブリンが4匹。もし一般的な上位冒険者で黒ランクの4人パーティーですと最低でも3分ほどは必要かと思われます」


 それらの事を聞いたうえで改めてそこまで早いのか、とリンクの頭の中で疑問が浮かぶ。


「ちなみにエリナだと?」


 黒ランクはエリナが昇り詰めたランクの一つしたである。そしてその銅ランクと黒ランクの間には決定的な差があると言われているのだ。


「私一人ですと2分あれば十分かと」


 そう言い、リアに習い慣れた手つきでゴブリンから魔石を取り出していく。


そんなエリナの言葉に目を丸くして再び驚いているリアの姿が見える。しかし口を開くことはしなかった。それなりに理解したのだろう。


ゴブリンの魔石は主に胸部に集中しているらしく、戦闘で運悪く破壊されたの一つ以外はすべて回収できた。


「で、結局のところリンクさんって何者なんですか?」


 最初のゴブリンと遭遇してから3度ほど戦闘になった。しかしながらそれらを1分もかからずに一人で殲滅したリンクは手ごたえの無さに多少暇を持てあましていた。


 そんなところにもうすでに慣れたのか、驚きを見せずしかしながら鋭い視線はリンクの正体を探ろうとする野次馬根性逞しく尋ねてくる。


「そう言われてもな、元軍人だって言っただろう?」


 エリナの作業を見様見真似で手伝っているリンク。その表情には戸惑いが浮かんでいる。


 確かにリンクの正体と言ってもそれ以上に説明しようがないのだ。説明したところで信じてもらえないだろうが。


「ここまでの戦闘と殲滅速度、そして的確な攻撃。そしてあと少しで一層のボス部屋ですよ」


 リアが言うにはここまでの速度は大手クランでもなかなかお目にかかれないそうだ。それもそのパーティーには20名以上所属しているという条件でだ。


「そう言ってもそこまで苦戦するような相手じゃないしな。弱点は基本的に生き物と同じだし」


 ゴブリンの生命力はすさまじい。それは第二戦目においてリンクが一匹の腕を吹き飛ばしたのにも関わらず、襲い掛かって来たことにもうかがえる。


 しかしながら最終的には人間と同じく出血多量か頭部や重要器官の破壊によりその生命活動は停止するのだ。


「ここまでだったらこれを使うまでもなかったかもな」


 そう言って見せるのは先程の戦闘においても使用していた銃だ。


「なっ、それを使わずに素手だけであれだけのモンスターを倒せるんですか?」


 それを聞いて驚くリア。恐らくはリンクの強さの秘密がその銃に秘められていると思っていたのだろう。


「そうだな、じゃ次のボス戦?には素手で挑もうか?」


 リンクとしても銃のデータはほとんどとれていた。あとはブレードモードだけだが現在の相手に使用すると弱すぎるためにデータがあまりとれないだろうと考えている。


 では次に必要なのがリンクが身に着けているスーツのデータだ。データ収集自体はルシアにも言われていたことであり、必要だとリンク自身も感じていたため行っている。


「なっ、第一階層のボスは“ホブゴブリン”でその取り巻きには5匹の武装したゴブリンがいるのですよ?一般的にホブゴブリンは2メートル近くの巨体に高い知性と力を持った厄介な敵です」


 同時に説明をするリアは優秀と言えるだろう。


「まあやってみて無理そうなら武器を使うよ」


 そう言うといつの間にか採取を終えていたのか、エリナが傍に戻ってくる。


「もう、どうにでもなれ、です」


 半場やけくそ気味のリアの表情は呆れた表情そのものだ。


 しかしながら当事者であるリンクの頭には次に敵であるボスモンスターの事しか頭にない。


 通常迷宮には各階層にボスモンスターが存在している。


 その階層に出現するモンスターの上位版がそのボスにあたり、強さも耐久力も一回り上昇しているモンスターだ。


 それらボスモンスターはボス部屋と呼ばれるエリアから動くことはない。そして討伐された後も一定間隔で復活するのだ。


 その為下の階層に初めて降りるにあたり必ず討伐しなければいけない存在となっている。


 歩みを進めること約10分。1度ゴブリンの集団と出くわしたがすぐに殲滅し、ボス部屋の前にたどり着いた。


「なんか重厚な扉だな」


 見るからに金属質であり、何か魔法がかかっているのか劣化などは見られない。どこか模様にも見えるミミズが這ったような凹凸は一種の恐怖感を助長させる働きをするものだろう。


 扉の大きさは優に5メートルを超え、まるで巨人が通るのかというようなものである。


「この先にボスモンスターがいます。中に入ると一定時間で扉が閉じ、外には出れなくなります。そうなると倒すか、死ぬかの二択になるのです」


 何度か討伐の経験があるのかリアは渋々と言うように説明をする。


「経験上ボスである“ホブゴブリン”は金属製の剣と木製の盾を持っているはずです。力も獣人以上に強いので気を付けてください」


 そう言いながらリアも短剣などを装備していく。乱戦になれば自分の身は自分で守る必要が出てくるのだ。しかしながらリアに戦闘を指せる気はリンクに全く無かった。


「エリナはリアの護衛を続けてくれ。一応取り巻き達もそっちにやらないように戦いつもりだが万が一の時は頼むな」


 腰のいつもの位置に銃を戻しつつリンクも準備を始める。


〈モード:バトルモード〉


 スーツのエネルギーを上昇させ、戦闘用に切り替える。先ほどまでは基本的に肉体を補助する程度しか使用していなかったのだ。


 スーツの各部から青白い光が灯っていく。それはまるでリンクの体を縁取るかのように照らし出した。


「・・・きれい・・・」


 ぽつりとつぶやくエリナ。その声を聴覚に捉えながらリンクは目の前の扉に手を掛けた。金属のスーツ越しに鉄の感触を手のひらに感じる。


「じゃあ行くとするか」


 そういい、扉を開いたのだった。




さて、なぜここまで文字が多くなってしまったのだろう、と考える織田です。

最近何かと忙しく、つい更新時間を間違いそうになってしまいます。

ですが頑張って間違わないようにしますので!!ので!!

大事なので2回ですwww


では二日後3月8日火曜日の更新まで今しばらくお待ちください。

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