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最高
男は、最高の人生を送っていた。
裕福な家に生まれ、裕福に育ち、品行方正、誰からも好かれて、才能にも恵まれている。顔はとてもハンサムで、彼女だって優しく、かわいらしい彼女がいる。
しかし、彼は最高の人生を送ってここまできたからこそ、普通の人生を過ごしたいと、そう願うようになった。
その願いは日に日に大きくなっていき、ある日、誰かを影武者に据えることで、普通の人生を歩めると、そう算段を立てた。それからはトントン拍子で仲のいい友人を影武者にし、自分はその友達の妻と、普通の家庭の暮らしを体験した。
普通の会社、普通のご飯、普通の妻、普通の会話。
最高だ、普通の生活は、なんて素敵なんだ！
思わずそう叫んだ男は、自分の叫び声で夢から覚めた。
