足癖が悪い
白海美香は、足癖が悪かった。
その悪さは、とても常人のそれではなく、つい最近では、足がとうとう自我のようなものを持ち始め、ボタン式の自動ドアを足で押そうとしたり、スカートを家に帰ってきてから脱いだ後、それを足で掴んで洗濯機へ、無意識のうちに投げ入れてしまったり、とても普通ではない。
そんなある日、彼女はいつもの通り、足癖の悪い両足を鬱陶しく思いながら帰っていると、暗闇の中、不思議な店を見つけた。
狭い路地をなんとかすり抜けた先にある、どうにも奇妙な店。そこへ吸い寄せられるように、自分の意思で進んでいった彼女は、看板を目にして、とても仰天する。
あなたの悪い癖、買い取ります。
そんな文言と、パウチされたメニュー表。もしかしたら、ジョークかもしれない。そう思ったが、どうやら手続きはとても簡単なようで、名前を書いて、据え置きの箱に入れるだけでいいとのこと。
今日も今日とて、足癖の悪いために嫌なことしかなかった美香は、なかば自暴自棄になりながら、そこへ当初をして、家に帰った。
翌日、足癖は全くなくなり、そこからは順風満帆。もともと、美香自身の容姿や性格は良かったので、そのままスグに結婚、寿退社、二児の母として、すっかり幸せを手に入れていた。
そんなある日のことである。ニュースで、とても気になる事件が報道されていた。
この近辺で、強盗や殺人、クラッキングに詐欺が横行し始めたとのこと。しかし、犯人はとても頭のいい人間らしく、逃走中とのこと。
アナウンサーは、次に目撃者へインタビューをしていた。
「いやあ、とっても手癖足癖の悪い犯人ですよね」