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教会から始まる魔王の冒険  作者: ふしお
9/15

暴走馬

 乾燥した空気とは裏腹に人々が熱気に溢れる護送当日、夜。

カオン達の紙の情報を頼りにリュウ達は表門通りに訪れる。


「ミンスはまだなのか? たくあのババア」


 リュウが文句を垂れると


「仕方ないっす。それより配置図通りっすね」


「ああ、この紙がなかったらどの護送車にいるか検討も付かなかった」


 紙にはカモフラージュのために護送車を何台か置いていると書かれている。


----------------------------------


 その頃ミンスはナフの家の冷蔵庫でキンキンに冷えた牛乳を一気に飲んだことで

腹を下していた。

腰を下ろしたまま、ミンスはリュウからもらった地図を開いた。


「裏門? 表門? どっちだろう」


リュウの汚すぎる字はミンスの頭を悩ませた。


「お〜な〜か〜」


お腹と字にミンスは格闘していた。


----------------------------------------


「じゃ、そろそろいいなドランに知らせてくれ」


 リュウの言葉を聞きカオンとオーランはドランのいる職人街に向かい、全速で走る。


「リュウ君これを持っていきな」


 ナフはユニコーンの絵が刻まれているコインを何枚かリュウに渡した。


「それも携帯しているある程度体力と怪我が回復する。致命傷はさすがに修復できないけどね」


 リュウは花火の合図を待った。


ひゅ~ドン!!


そのけたたましい音に護送車を護衛してる兵、その脇で熱気をもった民衆が一同に静まりその音の在り処を探した。

探すのに数秒も取らなかった。

天空を見ると色とりどりの花が星や月より強く地面を照らした。


「こりゃめでてー人間様の勝どきだー」


 民衆が一気に盛り上がり始める。


「おい、こんなの聞いてないぞ」


 民衆の騒がしさとは別に兵士達の間では不安の声が列のどこでも聞こえ始めた。

リュウはその熱狂とした空気の中人混みを進んだ。

リュウは民衆の壁から少しはみ出て、護送車の列がはっきり見える位置に到達する。

静かにリュウはアラン達が乗っていると調べた馬車に向かって歩く。


「君! はみ出しちゃだめじゃないか。これ以上はいけないよ」


 リュウの後ろを若い兵士が腰を低くして忠告する。

リュウは煙玉をポケットの中で握り締めた。


「こら! 人の話を聞いてるのか坊主」


 兵士はリュウの肩を掴み、顔を後ろに向かせた。


「お前、リュウだな!」


「もうどうにでもなれ!!」


 叫びと共にリュウは地面に煙玉を叩きつけると

目的の馬車までまっすぐ走った。

するとリュウの頭にやわらかい感触がぶつかる。

その接触と同時に馬の高い声が響き渡る。

手に触れる感触は肉感から固く変わる。

リュウが馬車にたどり着くと煙はほんのり薄くなった。


「どこへ行った!? 探せお前ら!」


 甲高い声をした兵長の発言に目をしばしばとさせてまともに前が見れずにいた兵士達が

煙の外に出て、混乱がゆっくり静まり始めた。


「よしお前ら、煙周辺を囲め、出てくる者をねずみ一匹逃がすな!」


 兵長に敬礼をして兵士達は煙の周辺を囲み始める。


「ん? なにか出てきます兵長!」


 一人の兵士がその言葉を発した次の瞬間


 「ひひぃーん!」


「馬です! 馬が暴走してます兵長!」


 ドン!


という音にその兵士の顔は地面に叩きつけられた。


「お前ら何をしている、馬車を捕まえんか!」


 兵長の言葉が理解する暇もなく兵士達のすぐ前に迫る馬の

突進は足を竦ませ、前に立とうとする者は一人もいなかった。

民衆が逃げ惑う、波を逆らってナフはその中を進むと


「ひひーん!」


 左右に激しく揺れる馬車の車がナフに近づいくと


「ナフ!」


 馬車の窓から小さな手が出ると考えることもなく咄嗟にナフはその手を両手で強く掴み、

車の横にしがみついた。


「リュウ君かい?」


「ええ? 聞こえないようるさすぎて。とりあえずここから出ないと。しっかりしがみつけ」


表門通りを逆走し続けると馬は角を多きく旋回して馬車を壁にぶつけると馬車は分離して馬だけがその場を走り去った。


「いてて、ナフ!生きてるのか!」


 砂塵の中にリュウは突っ込んで衝撃で壊れた壁のコンクリート破片の山に登りナフを探した。

リュウはナフの壊れた丸メガネを瓦礫の間から発見した。


「ナフ! 死ぬなあああああああああああ」


 大きなうめき声も砂煙のかすかな音、空の爆音以外は何も音が聞こえなかった


「またあ、あの服着てやるううう! だから死ぬなあああ」


「え! なんの服?」


「女装だよおお。 本当は少しハマってたんだああああ!」


「ほうほう、そりゃ死ねないな」


・・・・・・


山から下を見下ろすとそこには汚れ一つない綺麗な服をまとったナフがにやにやと笑いながら

立っていた。


つづく。

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