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教会から始まる魔王の冒険  作者: ふしお
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城と闇医者ナフ

 塔の地下、牢獄の中から断続的な破裂音が響く。

手足を鎖で拘束されたガドンは魔族の死体の正体を問い詰められていた。


「汚いブタが! 吐こうが吐かまいがあと一週間だ。魔族のてめえらに休息なんて与えねーからな」


 木の細長い棒を片手にもって高圧的な口調で看守の男は意識半場のガドンに話しかける。

ガドンの前にアランの死体を物のように投げ捨てた。

鎖を解こうと暴れる。


「やっぱりこいつを知ってるんだなも。な~もなもなも、。お前ら拷問を続けろなも」


 棒を持ち偉そうに部下に指示すると檻を出て姿を消した。

部下達はガドンの口の中に3cmほどの針を刺し抜き、その後かならず

こいつは誰だと問いかける。


「ぐぁあああああああ」


「問いかけに応じないたびに、これを刺す。」


ガドンは拷問に耐えながら悲鳴をわざとあげ、その瞬間にアランの傷の修復魔法を微量に少しずつかけ続けた。


---------------------------------------------

その頃

兵士達に追われているリュウ達。


「追いつかれるぞデブ女、その大根足は飾りか!」


 リュウのはるか後方にいたミンスは今にも兵隊に捕まりかけていた。


「よし、足の遅い女はもう少しで捕まるぞ、ふんばれみな」


 兵隊はまじかに迫るミンスの背中に手をかけようとすると


「遅くありません。お仕置きです!」


 ミンスはカオンを片手で担ぎたくさんの真珠を兵士達の顔めがけて投げつける。

先頭を走っていた兵士達が倒れるとそれに連鎖して背後にいた兵士がつぎつぎとピンのように倒れる。


「やるじゃんデブ、はやくこいよ、こっちだ」


 兵士達は姿勢を正して右折したミンスの人影を追う。

角を曲がると影すらもはや無く、リュウ達を見失った。


「巻いたな、子分たちを降ろそう」


「はい」


 リュウとミンスはベンチの上にカオンとオーランを乗せた。


「カオンは重症かと思ったけど鼻血が出てるだけか」


「でもオーランさんは深刻な状況です」


 リュウは苛立ちと焦りを見せた。


「私の知ってる医師さんならたぶん助けてくれます、行きましょう」


「わ、わかった行こう」


 苛立ちをしていたリュウはミンスの真剣な顔を走りながら時折見つめた。

カオン達を支える腕が限界に近づいた。

リュウはミンスの案内で二階建ての建物に着く。


「おい、ただの飯屋じゃねーかボラふきやがって」


「いえこの上です、さあ早く、私の腕の力がなくなる前に」


 リュウ達は酒の臭いのする騒がしい部屋の隅の階段を駆け足で上った。

階段を上りつくと扉に闇医者ナフと書かれた小さな看板がぶら下がっていた。


「おい、闇医者じゃねーか何されるかわかったもんじゃねーぞ」


 リュウはたどり着いて体力もわずかな状態で疑心の思いを口に漏らした。


「だいじょーぶです知り合いですから。開けますよ」


闇医者という言葉からリュウの脳裏に恐怖がよぎる。

扉を開く間、リュウの鼓動は高まり始めた。


「いますか~ナフさ~ん」


 部屋は病院らしい器具などがなく、服や下着がそこらじゅうに散らばっていた。


「ナフさ~んいないんですか~」


 天井まで盛り上がった服の山からこもった男の声が聞こえた。


「そこにいたんですか~出てきてください、助けてほしい人がいるんです」


「んぐぐ、出たくても出れないんだよ。ミンスちゃん僕をまず助けてくれ」


 ミンスとリュウは床にカオン達を降ろすと服の山を掻き分けた。

天井まであった服の山をなんとか壁にある窓の高さまで低くなった。

腕が見えてきて、リュウ達は引っ張り上げた。


「ぷっはーこのまま死ぬかと思った。自分のオシャレへの欲望もほどほどにしなくてわな。がははは」


 言動に似合わないぐるぐる眼鏡の男は白衣に中指を立てた絵の缶バッチを襟にいくつもつけていた。


「ミンスちゃんひさびさだね、どうおれの最新ファッション」


「気持ち悪いです、あとあまり近寄らないでください臭いです」


リュウは初めてミンスの軽蔑のまなざしを見た。


「一ヶ月風呂に入ってなかったわ、ごめんちゃい」


 ナフは手を目の近くにもってきて舌を出しながらピースをした。

リュウはナフのピースを無視して


「おい、こいつらを助けたいんだ頼む」


「いいけど~助けたら~それなりのことしてもらわないとね」


 リュウが目をつぶりゆっくり頷くと


「やったー子供の被検体は初めてだぞ。おおおわくわくしてきたあ」


リュウは不安が当たったようにガクブルと体を一瞬痙攣した。


「リュウさんが考えている事じゃないですよ安心してください」


「その黒い光が安心させない証拠なんだが」


「あ、あれ~なんで光ってるんでしょう、不思議ですね~おほほ」


 ミンスは今までの暴言にやり返すようにとぼけた。


「いいよ、覚悟はできた。だから早く助けてくれこいつらを」


「君とおしゃべりしている間にすでに治したよ」


(そんなわけ・・・・・・あった)


「どうやっておれに気づかれずに治したんだよ」


 ナフはその言葉がくるのを待っていたように笑いを噴出した。


「そ、それはなーだわわ、この部屋自体がすでにだわわ、治癒結界の領域だからだよ。

君もここに入った時体が疲れていたみたいだけど今はどうだい?」


 リュウは手や腕を適当に動かした。


「ナフさん私は寝室を借りていいですか?この子達が起きるのを待ちたいんです」


「おっけー」


 リュウはミンスがカオン達を運ぶのに乗じてこっそりと寝室に歩いた。


「リュウ君~君はおじさんと遊ぶんだよさあこっちえおいでえええええ」


「助けてくれええミンスううう」


「嫌です。ふん」


-------------------------------------------------------


その頃レッテル城の王の間に伝達兵が到着する。


「ご報告します、町で追跡していた盗賊団及びシスターの女を見失いただいま

捜索に当たっております。それと先月の大嵐による花火大会中止が町民の反感を買っております」


「下がれ」


「はっ」


 王は突然立ち上がり


「近衛達よ、我は今日は疲れた寝させていただく」


 執務を終えた王は寝室のベッドに腰をかけた。


「ご報告致します!! 魔族が」


 兵はあわただしく扉を開けた。


「我は寝ると申したぞ! いいかげんにせい」


「ですが・・・・・・」


 兵の肩を引き、額に赤い石を埋め込んだ男が王の前にひざまつく。


「ヌバルか、おぬしであっても我の寝室に入ることはそうそうな出来事じゃ許されぬぞ」


 ヌバルはレッテル城から出兵した兵を指揮した将軍である。

先の大戦で勇者カーランと共に戦いそこそこ名が知れていた。


「ですが、あの捕らえた魔族の子が息を吹き返し、尋問いたすればなんと・・・・・・」


「魔王の子だと!!!」


「そうそうな出来事でありましたでしょ?」


「それどころで無いわ! 魔王の子なんじゃぞ!」


「お待ちください、これはチャンスなのです」


 王はヌバルの青い目を見つめた。


「魔王の子を王都に謙譲すればさぞこの国も栄えるでしょう・・・・・・王?どうかされましたか」


「いや、なんでもない下がれ、護送する日まで考えさせてくれ」


「はっ」


 ヌバルは王の寝室を出た。

 王は枕に顔をうずめて横になると苦しくなりすぐ仰向けになった。

 枕を腕の中に抱きかかえ王は悩みながら眠りこんでいく。


つづく。

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