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教会から始まる魔王の冒険  作者: ふしお
4/15

混沌

 カオンは下半身の肢体と体を揺らして怯えた目の奥から少しずつ涙溢れる。


「ちっ放心してやがるこのガキ。コールもう一回やれ」


「あいよー」


 カオンは頭を捕まれて恐怖のあまり意識が一瞬飛び、

再び視界を取り戻した時オーランのもう片方の腕を片手で掴み、肘の関節にもう方ほうの手を挟み

手の甲の方向にオーランの腕を回し始めた。

悲痛の声とともにオーランの顔はくしゃくしゃになる。


「ま、待って! わ・・・・・・わかったわ。アジトに案内するからオーランをこれ以上傷つけないで」


 頭を掴んでいた男はカオンの顔の前でにやりと顔を変え、


「それでいいんだお嬢ちゃん。おいコールそいつはそのまま抑えとけ」


オーランの頭を強く地面に押し付けたコールは渋々に承諾。


「さあ、案内しろ」


「おい、いつまで泣いてんだてめえ、案内ちゃんとしろ、さもないと・・・・・・」


 マーダは威圧する声とともにカオンの肩にひやりと冷たい剣の刃先を置く。

カオンは自分の不甲斐無さとともにマーダ達への殺意が心の底から沸々と湧き上がった。

睨み返そうとすると運悪くアジトに着いて

しまう。

感情の整理に忙しかったカオンは無意識にも等しく足を動かした。


「おい、ここだな」


 マーダはカオンが考える間も与えずにカオンに質問をする。

 カオンは鼓動が高まっていき、思考がマヒしかけた。


「開けろクソがき」


その頃 部屋の中にいたリュウ達。


「ど、ど、どうもすいませんでふぃた」


「はい、やっと言えましたね。よしよし」


顔に青筋を立てたミンスはみるみるとその浮き出た血管を収めていく。


「ごめんなさいね。でも悪い事したら謝るのは例え魔族であっても同じですよね」


「う、うんごめんミンス」


 「ぁああああああああああああああ」


 アランとリュウが部屋でミンスに正座をさせられ説教を受ける。

ミンスは話し疲れほんの少し沈黙。

その瞬間、外から大きな悲鳴が響いた。


「な、なんですかこの声」


「オーランの声だ!」


 リュウとアランは正座を解いて足が痺れていてうまく動かせジグザグに歩く。

ミンス達が来た扉と反対の部屋の奥の小さな穴から四つん這いになって外へと出て駆けて行った。


「ちょ、私も行きます・・・ ・・・出れないんですけどアランさん助けてください」


「助けるかバーカ、デブ」


 アランは穴に挟まったミンスに舌を出して片目のまぶたを手で伸ばして小ばかにして

笑いながら走り去る。

ミンスは近くの小枝を握り締めた。


 小枝をポキポキと折りながら部屋の中に残った足を伸ばすと硬い壁のようなものが当たる。

そこを蹴りながら外の木に手で懸垂のようにつかまり、胸を壁の穴に吸い込むように強引な動きが穴の歪みを開かせ穴を拡張するとすんなりと抜け出した。



 アランの後を追ったミンスは角を回るとミンスが細い道を抜けて少し広くなったあの場所の茂みに着く。

そこでアランとリュウは身を潜めていた。

ミンスが大きな声で怒鳴りかけようとすると


「しーーーー」


 リュウとアランは同時にミンスの口を塞いでとてつもない形相をしていた。

ミンスはその光景を見て、アランの顔を見ると今にも飛び出して殴りかかりそうな顔する。

ミンスはすぐに察した。


「んんかにんんすかん、ほどんんくだんん」


 ミンスが息苦しそうにしていると

リュウとアランは手を解いた。


「アラン、あいつらもう一人いるんだろ?」


 必死に感情を抑えつつアランは首を振る。


「そうか、カオンもいないな。おい、落ち着け気持ちはわかるおれも同じだ。

だけど今はまだオーランは殺されてない。なら行動より考えなきゃ。

今出て行って助けられるかわからないんだ」


「何睨んでんだてめえ! こっちだって明日の飯食うためにやってんだ。おら!」


 男はオーランの上から立ち上がり腹や顔にまるでボールに当たるように激しく蹴りを入れた。

オーランは蹴りを入れられた後

耳を引っ張って頭を上げられてコールに耳元で罵倒し始める。

意識が消えゆきかけた時、リュウの顔が茂みの奥に。


「おい! アラン出るなって行っただろ!」


 地面を走る大きな音は罵倒に集中していたコールもすぐにその音の方向へ顔を向けた。

 アランは鞘を抜き捨て黒い剣を両手で相手の腹に突くように両手で持ちながらマーダに突進。

奇声と足音が鳴り響きながら武器を持って突進してくる姿を捉えたコールは

体制を整える間もなく


「お、おいこいつがどうなってもいいのか」


 反撃できないと判断したコールはすぐさまオーランに刃を向けようとしたその時


「ゴツン」


 とコールの手の甲にリュウの硬い石が投げ込まれ、コールは剣を落とした。


「やれ! アラン」


「死ねええええ!」


 コールが許しをこう暇もなくアランの剣は腹を貫き背中まで風穴を空けた。

もたれ掛かったコールの体を蹴り飛ばす。

 放心しかけたアランはオーランの体を起こした。

リュウ達もすぐオーランに近寄り、


「アラン、飛び出すなって行っただろが!」


 リュウが怒鳴りだそうとしたが

その一言の後


「オーラン、早く病院に連れて行かないとすごい傷だ。それに右腕が」


「なら私に相談しに来た医師の方がいます。その方に頼んでみては?」


 リュウは今怒るべき時ではない事を悟り何度かオーランの体を揺さぶると、気がついのか

オーランは膨れ上がった青いあざのまぶたを

無理やり開けた。


「おい、安静にしてろ」


 オーランは首を横に振った。


「違うんだ、カオンが、カオンが捕まって今アジトに向かっているんでやんす

今リュウさん達がここにいるって事は・・・ ・・・」


オーランは激しく咳をしてつばに混じる黒く染まった血を何度か口から噴き出した。


「わかった、ゆっくりでいいからな。おれ達がここにいるって事はなんだ?」


 オーランが振り絞って声を発しかけると

大きな声がそのかぼそい声を遮った。


「お前達がああ・・・・・・。フウー、ここにいるって事はおれが来た道を戻るってことだ、クソガキ共。フフ、フハハハハ、フハハハハハ、ハアー・・・ ・・・。覚悟しろよてめえら」


「コールの野郎こんなガキどもにやられるとはやっぱりパーティーの人選間違えたぜ」


 カオンの両腕を掴み大剣を背中に乗せてぼそぼそと独り言を始める。

その隙を見てミンスはアランの耳元に口をもっていき


「今がチャンスでわ?」


黒い剣は静かに周りの空気を吸い込むと風が止み鼓動のような音とともに剣の周りをオーラのようなものがまとう。


「あん?まだわかってねーみたいだなお前ら魔族が負けた理由をよ、ハハハ」


 独り言をぱたりと止め人質にしたカオンを壁に叩きつける。

のめり倒れたカオンの頭部から赤い鮮血が流れ出す。


「てめえ」


 アランがまた先走りだそうとするとリュウが今度はしっかりと腕を掴み


「だから焦るな、おれにも殺らせろ」


 リュウの目から光を失いその顔にもはや冷静の二文字は残っていない。

リュウはとがった石をいくつか拾うとアランに合図を送りアランは進撃する。


「魔法はもう効かないんだよばーかぁ」


 アランは剣を大きく振り上げるとオーラが剣先を数メートル覆いそのままマーダの体を真っ二つにするごとく綺麗な立て切りをする。

するとマーダの服に剣先が触れた瞬間にオーラが消え元の剣へと戻りそのまま大切りをして隙だらけの

アランの横腹に大剣の横切りが綺麗に入る。裂け目から血があふれ出し、倒れこむ。

リュウとミンスの目にそのとてつもない攻撃をまるでどうさもないようにかき消す。

ただ無音の惨劇が

目へと映りこみ、マーダへの殺意すらを忘れさせた。


「ふふ、ふははは、ふ~はああ、どうだ貴様らこれが魔王を死へと追いやった魔法絶縁体服だ! おまえら人間にはこんな服使わなくてもこの大剣ひとつで粉砕できるけどな」


 オーランが瀕死、カオンが生死不明、アランは死亡、残されたリュウとミンスはただこちらに歩いてくるマーダにたじろぐこともできず立ち尽くしていると


「遅くなってすまない、魔族はどこだ!」


 銀色の鎧、鋭く光る長槍を携えた兵隊が現れた。

銀色の鎧の人混みを銅色の鎧が浮きでてマーダの元へと向かう。


「こいつが、魔族です。背中に紋章が付いてますみてください」


 リュウは手に持っていた石をこっそり背中にもっていき川に落とす。


「ふむ確かにこれは魔族の紋章、よしデーモンキルに報告することを許可しよう、だがこの倒れてる二人の子供はどうした?」


 マーダは隊長らしき銅色の鎧の男に最近町を騒がした盗賊団だということを告げた。


「なるほどこの盗賊団が魔族をかばっていたと言う訳だな。ならば今回の子供へと暴虐をギルドに報告しないでやろう」


「ありがとうございます」


 状況をあまり理解できないミンスはただ大人の子供達への態度に憤りを覚え


「あなた達! 子供を助けてくれないんですか」


 兵士達とマーダは笑いながら


「子供~う? この魔族と人間が戦いをした世で子供も大人もいくら死んだと思ってるんだ。

それにこいつらはただのスラムのガキ、身の上もないゴミ同然なんだよ・・・・・・ハハッ」


「隊長さんこいつらも殺しますよね?」


 マーダが腰を低くして隊長に問うと


「それはだめだ、この黒いローブを着た女は町で幾ばくか有名なのでな。噂が立ち上られては困る、

なので・・・・・・連れてけ、もちろんそこのガキ共は皆殺しだ」


抵抗するミンスを捕らえ、リュウの首元に槍の刃が届こうとすると


「まった! みなさん私を見ないでください!」


 槍を止めた兵隊やその場にいたリュウ以外の大人はミンスのほうへ数秒向く。

リュウはその妙な発言を死が迫る中一瞬でそれを理解し、目を閉じると


「なんだこの黒い光は」


 突然の閃光に兵隊達は目を閉じ手を当て騒ぎ始める。

マーダも目を閉じて、ぼやけた視界が治った時にはすでに

捕らえていたミンスがカオンを持ちながら逃げ出した。

リュウはオーランを持って、細い道をくぐり抜けていた。


「ちっ、お前らあいつらを追え残りの者はこの魔族のガキをレッテル城に運べ」


「はっ!」


「あ、あの~これは私の責任じゃないですからね?報告しないでくださいよ」


「分かっておるわ、黙っておれ!」


「はいいい」


 マーダは腰を曲げて隊長と共にレッテル城へと向かう。


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 レッテル城は塔が束になり一つの城となる奇形な城だ。

建築者は王都の大王の命で配属された王の居場所を悟られないよう束のように設計したという。

そんな城の無数にある塔の一角にマーダと隊長は魔族の死体を王に謙譲した。


「このもの背に紋章を刻みこまれ、子供ながらに大変魔族としての頭角を十分開花させるほどの魔力を秘めておりました」


 王はまだ30と若く黒い髪に似合わない、高貴な服を着飾られていた。


「子供まで手にかけるか・・・・・・いやなんでもない。わかった褒美をやろう」


「ありがたきお言葉」


 マーダは王の使いから金10枚包みごと賜るとふかぶかと頭

「それはそうと、その魔族と組んでいた盗賊団とあの町で有名なミンスというシスターがなにやら

知り合いらしいのですが、怪しい行動にでぬよう奴を城まで拘束し、尋問する許可をいただきたいのですが」


 隊長は一角が生えた兜を脱ぎ、坊主の頭を布で拭き王の返答を待つ。

 王は頭の王冠を深くかぶり沈黙をする。


「仕方ない、許可する、その死体は来週護送するオークのガドンとやらに見せ、どういう者だったか吐き出させろ」


「御意」


 マーダと隊長は部屋を出てお互い見向きもせずただ己の欲望のために歩き始める。


つづく

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