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教会から始まる魔王の冒険  作者: ふしお
2/15

仲間

 街灯が不定期に点滅する暗い道

リュウ達は出店の並ぶ大通りから道をそれた路地裏の

ボロ部屋にアランを運び茶色のボロソファーに体を置いて調べた。

砂の付いた上着をアランの頭から引っぺがす。

オーランは砂けむりに上着を落とし、両手で目を覆う。


「目がっ、目があああでやんす」


「バカやんな」


目を擦るオーランをどかし、

 リュウは子分がアランの体を調べているとき、背中に奇妙な紋章を見つけた。


「リュウさん、これってもしかして魔族の紋章なんじゃ・・・・・・」


 魔族の紋章とは

魔族の中でも人間に近い姿をしている物は同族にも人間との区別がつかなく、

人間の策により、同士討ちをさせられた。

その事件をきっかけに人間に酷似した魔族は魔族としての証として決して消える事のない紋章を体のどこかに宿している。


「あわわ、こいつの親魔族ですよリュウさん。やばいでやんすよ」


 オーランは両足を震わせ、アランとリュウをちらちらと見続けた。

リュウはオーランの動揺に若干の冷や汗を垂らした。



「おい、こいつを起こせ」


「わ、わかりました。いきますよーほいっ、やんす」


 オーランは溝や筒の部分が凹凸のできたバケツで町に流れる小さな川の水をすくい

わさわさと千鳥足でアランの近くまで歩いた。

そしてバケツを綺麗にひっくり返した。

アランの鼻に水が少しずつ進入していき鼻から喉へと水が行き渡った。


 どくどくと菅を満たす水。

ゆっくり鼓動が早まり呼吸のリズムが狂う。体が無意識に起き上がった。

金属の綺麗な音が部屋に響いく。


 バケツの角が見事にヒット。

まだ眠いという様な様相で頭に片手を置きながら少しずつ目を開ける。


「んーおっぱい」


 リュウ達の高笑いの反応にアランはすべてを理解し、顔がみるみる赤く染まる。


「貴様ら、おれ様を愚弄するか!」


アランの必死な意地をはった態度も意味をなさず。


 鼻水をたらしながら弁解するアランにリュウ達は高笑いで返した。

そのたびにアランの顔はさらに高温になる。


「ヒャヒャヒャあー別に何も聞いてないよ・・・・・・プッ」


「あ、ちょ」


 リュウは突きを入れられた痛みが全身に走るとようやく笑いを止めた。


「あー笑い疲れた。すまんな。いやな・・・・・・」


 オーランとカオンはリュウが笑いをやめてもまだ小さく笑い続けていた。

リュウはまぶたについた涙を腕で拭ってアランに自分達の事情とこの部屋へと連れてきた理由を話す。

アランもやっと興奮が少しずつ収まり、話の理解に努める。

アランは未だいらいらとしながら話を理解しようと努めた


-----------------------------------------------------------------------------------------------


リュウは魔族と人間の争いにより親族を無くし、偶然同じ境遇のオーラン、カオンと出会う。


二人の弱った体を見て、近くにあった出店のリンゴを盗すもうと画策する。

リュウは人ごみの中を華麗に歩く。


店員が客の応対をするため顔を売り物からそらすのを見計らい

一つリンゴを手にし、もう一個と手を伸ばす。

店員が客の応対を終え、顔を戻した。

リュウは伸ばした手を店員が顔をもどす瞬間にひっそりと引っ込め、二人の元へと戻った。


「あ、ありがとう。そ、その」


「あ、リュウだよおれは」


 オーランとカオンはリュウの行動に目を光らせた。


「あのさっきの私たちにもできますか?」


「あ、うーん教えるの苦手なんだ。だからその・・・おれの子分になれば行動を盗んでできるようになるかも知れないなー」


 リュウは照れくさく断るつもりで冗談で言うと

二人はお互いの顔を合わせる。

同時に首を立てに振った後リュウの顔を見て


「なります。一日でも早く、あなたの、リュウさんの様になりたい」



リュウはため息をついて二人をアジトに案内した。


-----------------------------------------------------------------------------------------


「で、おれ様の紋章見たんだろえーとリュウに・・・」


「オーランやんす」


「カオンよ」


話終えたリュウはしばらく沈黙する。


「お前、親はどんな魔族なんだ?」


「え、魔王」


 ・・・ ・・・


リュウ達はポカーンと口を開け放心した。


「な、なー魔王って冗談だよな?」


「冗談じゃない、でも安心しろ父ちゃんはこの前死んだ。今は魔族狩りで魔族が根絶やしにされてる。

時期におまえら人間だけの世界になるからさ」


 アランは悟りきったような顔で軽い口調でリュウ達に話した。

リュウがアランに話かけようと口を開ける前。

カオンはアランの頬を平手で思いきり叩いた。


「ふざけないでよ! そうやって開き直って、私たちだって必死に生きているのよ。そんな軽く家族のことを言わないで」


「そ、そうだ」


 オーランはカオンの行動にたじろいたが同調した。

 アランは今までのつらい出来事を噛み締めていた感情が

まるで糸が切れたように噴出した。


「お、おれ様だってな死にたくないよ。父ちゃん・・・ガドン・・・みんなみんな」


「なによ、私だって姉いちゃん・・・、ママ・・・・・・」


 感化されたように叩いたほうのカオン、オーランも目からしずくが溢れ出した。

リュウは一人呆然と光景を眺める。


「おい、お前ら、もう泣きやめよ。ほら」


 全員を抱き寄せて肩を叩きリュウはなだめた。


「ふうー落ち着いたか?」


 アランは目を充血させて泣き止んだ。


「ごめんね、アラン」


「おれもごめんでやんす」


 アランは顔をうずめた自分の腕をひっそりと出してカオン達の言葉を聞いて何も言わずまた腕の中に顔を伏せた。


「おいアラン、仲間にならないか?」


「でも、おれ魔族だし」


 アランは腕の中から篭った声を出すと


「関係ないわ、私は賛成よ」


「おれもいいでやんす」


「ほら、子分どももいいって言ったからさ」


 アランがこくりと首を振るとカオンとオーランはリュウに抱きついた。


「あ、アラン。ずっと鼻水垂れてたわよ。これつかって」


 カオンのハンカチで口まで垂れた鼻水を綺麗に拭う。


「ありがと」


 カオンはアランの鼻水がたくさん付いたハンカチを嫌々そうに指で摘んだ。


「どういたしまして」


 こうしておれはリュウが率いる盗賊団の仲間になった。


---------------------------------------------------------------


 曇天の夜を明け、曇りがなくなった晴天の早朝

大通りを少し進むと丸い噴水を囲んで十字の形で道があり、

その左右の道には新しく店を開くものが集う。

リュウ盗賊団は盗みの常連であるゲートを越えてすぐの店の連立は盗み防止対策がされており、

盗みをしたことがないアランにはまだ早いということで

ここ最近出来た果物屋を訪れた。

この世界は4つの大きな大陸で作られており、

この新しくできた果物屋はアランがいるラサ大陸から王都のある島を越えさらに北にある

ガッズム大陸、元魔族の領土であった場所。

そこで魔族達が食べてたという、めずらしい果物を輸入していて、アランにはなじみがある食べ物と判断したリュウはこの盗みをするよう

仕事を与えた。


「いいかアラン、おれは教えるのが苦手だ、だからおれが最初に盗む、それを見てから

やってくれ、いいな?」


 アランはリュウに不安な目を向けてみると


「不安なのはわかる、でも安心しろ、失敗したら子分が煙幕玉で逃げるのを助ける。

逃げたあとはあの部屋で集合だ。いいな?」


 アランはまだ不安を隠せないが、失敗してもいいという安堵が先ほどより不安を和らげた。


「じゃあいってくるぞ」


 噴水のベンチから立ち上がったリュウはのろのろと歩きつつ、ちらほらといる大人を監視しながら

果物屋の前で止まった。


「アラン、見るのは盗む動作じゃなくてどうやって相手の目をかい潜って盗むかでやんす」


 オーランは小声でアランにアドバイスを伝えた。

店員が剣を持った顔をフードで隠した二人組と話す隙をついてリュウは表面がボツボツとした木の実を手に取る。

二人組の片方の肩に背負っている袋にそれをわずかに袋からはみ出るようにひょいっと入れる。

店に背をむけ、しばらく静止した。


「この場所をおれらに譲れ、王様直属のデーモンキルの命令だ、いいな?」


「わ、わかりましたよ」


 二人組は話を終えたのか何も買わず、出店の暖簾から体を乗り出し外へ出ようとした

その時


「おいまて! おまえらその袋にあるものは何だ!」


 店員が突然大きな声を出して二人組はフードの上からでもわかるぐらい

体をビクッとさせる。

振り返ると店員が顔をしかめて

袋を掴み、果物を手に


「お前らさっきの話は盗みを働くための嘘だな!」


 店員と二人組が顔をにらみあってほかに眼中がいかなくなったその空間に

大人たちの胴までしかない小さい影が。

時間が静止したように誰にも発見されず

果物を二つとり、アラン達のベンチに戻った。


「ざっとこんなもんよ、驚いた?」


 アランは口を開けてただ目の前で起こった現象に顔を固めた。


「まあ、リュウさんのあれはまだできないわよ、私たちにもできないし。でも最初のあれはあなたにもできるはずよ」


 リュウの一切の隙を許さない手際にアランは感銘を受ける。

気持ちを引き締めようと

 アランはリュウにハイタッチをして選手交代をするかのようにベンチを座り立ちした。


「これ、あとで食い方教えてくれよアラン」


 アランはこくりと首を振り、両手で頬を叩いて歩き出した。


「リュウさん見てでやんす、あの歩きをマスターしてるでやんす」


 リュウが先ほどしたのそのそとした歩きとは

手を振った時、同時に同じほうの足を出す歩き方である。

これは服の摩擦を減らし、足音を減らす、簡単な動作だが自然にやるのには少し慣れがいる

歩法。

 カオンはオーランに目を合わせると同じことを思ったように、


「これは、先越されないよう、ががが、がんばらないとねー」


「ははは、大丈夫さ。お前らのほうがまだまだ上さ、動きをマネできても精神はマネできない。

特に初めてやる人間と普段から日常的にするおれらとじゃさ。さっき安心させようと声をかけたけど

たぶんまだ不安は拭えていないんだろう。歩くたびに不安が大きくなり、いざというとき自分でも意味のわからない行動に出てパニックになる。煙幕玉の準備はしとけよ」


 リュウは両腕を前で組んだ。

 周囲を見ると果物屋から二人組が外に出て、片方がイライラして歩いていた。

 たくさんの果物がはいった馬車が近づいた。


 アランは歩きながら姿勢を落とす。地面に落ちていた、少し尖った小さな石を拾い、

店の前に着くと


「おや、帽子の坊や、お使いかな? ごめんねちょっと外でなきゃいけないだ、すぐ戻るからまっててね」


 店に輸入しにきた馬車だと思い、馬に石を投げて暴れた隙に盗もうとした。

しかし、店員が目を四方八方に回転させながらまるで自分の意思でないような歩きで店を出た。


小さな丸い果物がいくつもついた房を二つほどとり、背中に隠しつつ外をゆっくり見ると

店員は二人組みが進んだ方向に歩いていた。


 アランは店に大きな袋を見つけ、果物をいくつも入れ、

重そうに引きずりながら店を出て、ベンチへと帰還する。


「ほい、どうだ」


「ど、、どうやってこんな量・・・・・・」


 アランのほうけ顔よりさらにほうけた顔をしたと思えば急に目を見開き

リュウ達はしつこく質問を繰り返した。


「おい、さっき店員が店から出て行ったのは魔法か」


「いや、剣ないと魔法使えないし、おれ様もなんで出て行ったのかわからん

それよりもっとおれ様をほめてくれって質問だけじゃなくて!」」


 それでもアジトへ帰るまで質問は続き、


「やや、やっぱりね。リュウさんよりそそ、そんなすごいこと偶然じゃなきゃできるわけないですよねー」


「そ、そうでやんすす、リュウさん大丈夫やんすよ」


「ゴツン」


 オーランとカオンに頭に拳骨をしてリュウは部屋の片隅でうずくまってめそめそと泣き始めた。


「どうせ、おれなんか、ただのかませ犬ですよーだとほほ」


 指で地面をゆすりながら、鼻水をすする音が鳴り響いた。


「ほら、オーランあんたが空気読まないこというからでしょ、まったくky!」


「ええーカオンが先にリュウさんにいったやんす」


「なによー」


 リュウがめそめそとしている間、カオンとオーランは口喧嘩を始め、まさに阿鼻叫喚の図である。

アランは自分の行動でここまでなるとはとても思えず、わさわさとなにかしないとと考える。


 アランは袋から先ほどリュウがとってきた果物と同じものを取り出し、

リュウの元へと持っていった。


「ほらこれ食い方教えるっていったろ? やろうよ」


「いいよ、今腹すいてないし」


「あっそ、じゃあいいよ」


 アランはリュウのとなりで表面のぶつぶつを指でつぶしていった。

リュウは腕から目をわずかに出し、アランの行動を時折覗いた。

 リュウはアランのおかしな行動にいつのまにか泣くのを止めた。


「よーし、これで全部潰した。カオン、その袋にある果物ナイフ取ってくれ」


「もういいわよ、オーランのバカ、ky、あっかんベーだ」


「おい、話は終わってないでやんすよ逃げるんでやんすか!」」


 口喧嘩を遮り、カオンは果物ナイフをアランの手に渡して再びオーランの元に戻り

口論を始めた。

アランは目を粒のようにして呆然とその光景を眺め

アランはカオンの負けず嫌いさに驚きを隠せなかった。

が、気を取り直して

ナイフで果物を真っ二つに切断。

そしてリュウの近くに片方を置いた。


「うっめええ、カラシス」


 アランは果物を豪快にかぶりつくと口からたくさん漏れた果汁が顎から服に垂れる。

リュウは目の前のみずみずしい果物の断面を見つめた。


 アランが食べるのに集中してるのを見て、リュウはゆっくりと果物を持ち、口に運んだ。

果物にかぶりつくと噛み切ったところから果汁が溢れだすが

アランのようにうまく食えなかった。

そうすると


「こうだよ、こう上向いて食べれば果汁も口に入るでしょ」



 リュウは顔を上に向き、果物に再びかぶりついた。


 舌の上に留まる果汁を味わおうとのど奥に流れるのを塞ごうとしてもみるみる溢れる果汁に

口の中が限界に達して喉へといっき飲み込まれる。


「うまあああああああああい!」


 リュウの大声にカオン達は喧嘩をやめ、リュウの元に近づいた。


「なにがうまいんですか、リュウさん」


「これだよこれ、なんて言ったっけ?」


「カラシスだよ」


「そうそれ、お前らも食え」


「ほんとだうっめえええでやんす」


 カオン達がさきほどのリュウのような間違えた食べ方をした。


「あー違うよ、こうすんだよお前らまったく汚いなー」


「あー本当だわ」


にぎやかな会話を聞いてアランはほっとしたように密かに笑みをこぼした。


「今日は果物パーティーだ」


「おおーー」


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 その頃、赤い月が夜空を灯していた。

大通りから外れたこれまた別の路地裏でフードを被った二人組の元に果物屋の店員がと近づくと


「さっきはよくもふざけた事してくれたな」


店員の青いエプロンの上を一本の剣が貫き、そのあと盾続きに体の肢体を切り刻んだ。


「ちっ荒っぽくなったが、これでわかったな、あいつ、ガキどもの中にいたな」


「ああ」


「あとはあいつの仲間を人質に取れば・・・」


 カラスが上空を旋回し、血の染み込んだエプロンの上で男達はしばらく高笑いをした。

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