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教会から始まる魔王の冒険  作者: ふしお
11/15

人の山

「結局馬車にいなかったんだね」


 ナフにリュウはこくりと首を縦に振った。


「で、おれは女装されてるわけだが」


 リュウの半身ノリ気な言葉に


「ええ、リュウ君がしてくれると言いいましたからね」


「どうです? その服、急いで作ったんでおれの上半身はスッポンポンなわけですが」


 リュウの元々着ていた泥だらけの短パンを裏返し、股の部分を裂いてジーンズスカート風にアレンジ。

また着ていた半そで白Tシャツにはナフが着ていた服を細長い一枚の布にしてすそ先などTシャツの先端にフリルのように縫い合わせた。


「ま、いいんじゃないの? 知らねえけどよ・・・・・・ふん」


 リュウは頬を染めてナフから首を逸らした。


「あ、おいあれ見ろ!」


 リュウが振り向いた先には見覚えのある銅色の鎧、一角兜がそこにいた。


「ああ兵士がこっちにまで追いかけてきたんだね、早く逃げなきゃ」


 ナフが兵士から逃げる動作を始めかけた時ナフの腕をリュウは強くつかんだ。


「どうしたんだい?」


「あいつ見覚えがあるんだ。ナフ、後追おう」


----------------------------------------


隊長はヌバルの命令で裏門に向かう途中ミンスの姿を捉えて手下に先に行かせてミンスを探していた。


「王ここで待っていてください」


「ゲヘ、ゲヘヘがはははは」


 隊長は全力で角を曲がった。

すると


「何やつっ!」


 隊長の体に細い鎖が巻き付いた。

突然の出来事に隊長は驚く声も出なかった。


「ふんっ!」


 体が宙に浮き、巻きついた鎖が解ける回転が体にかかるとそのまま建物の上を通り越してその場から姿を消した。


「あれ、消えた!?」


「お前もか!」


「えっ!」


 鎖帷子を身にまとった女のクナイがリュウの四肢に突き刺さった。


「いってえええええ」


「子供? ・・・・・・やってしまったああ」


 カサミは王を干し草を積んだ荷車に隠して倒れたリュウの元に駆け込んだ。


「おい! しっかりしろ」



「痛ててどうやらこのメダルの力は本当だったみたいだな」


 リュウは上半身を起こして右と左のふとももに突き刺さったクナイを同時に抜いた。


「いっチクチクしやがる」


 肩に刺さったクナイもゆっくりと皮膚から取り除いた。

起き上がったリュウに驚いているカサミの背後に怯えた声が近づいた。

その声がカサミの真後ろまで迫り


「リュウ君たたた助けるようわああ」


「今度こそ敵か! えいっ」


 カサミは無表情で胸に触れた腕を掴みナフを前に投げ飛ばした。


「硬いおっぱい!」


 仰向けに倒れたナフにカサミは蔑んだ目を向けた。


「お前仮にも元レッテル城の兵士であろう、そんな下品な言葉を使うなど、粛清です」


 カサミは背の腰に巻きつけた短刀を鞘から抜いて倒れたナフに乗りかかった。


「え、ちょま助けてリュウ君」


ナフは何か誇らしげににやにやとしながらまぶたを閉じた。


「おい! やめてくれそいつはおれの仲間なんだ!」


「え!」


 カサミはナフの首元めがけて振り落とし腕をナフの耳元スレスレまで咄嗟に持って行った。


「やっぱり死にたくひゃ!」


 スカーフがゆるく首元まで落ち、白い肌にほのかなピンク色の唇、

そして黒い瞳の綺麗な顔がナフの目に映りこんだ。

その綺麗さに心を奪われるも刃の突き刺さる音が耳元に伝わり一瞬で我に返ると


「すまんな、私の手違いだ許してくれ」


 カサミは無表情のままナフの体から立ち上がった。


「え、いやあの」


「大丈夫かナフ? おい」


「あ、いけないいけない」


 リュウがナフを少し持ち上げて肩を揺らすとカサミから視点をリュウに向けた。


「よし大丈夫みたいだな」


 そういうとリュウはナフの上半身をゆっくり地面に置いた。


「おい女、覚悟しろよ」


「あ、いやすまん悪気はない。 と言っても殺しかけたからな、私の仕事が終わったらこの身は好きにしていい。だから今は見逃してくれ」


「は? 意味わかんねーよ説明しろ」


「それはできない」


「今はこれで許してくれ」


 カサミは自分の左手をクナイで突き刺した。


「おまっ!」


突き刺した傷から血が溢れ出し地面にぽたぽたの垂れ落ちた。

痛いという反応を出すこともなく無表情の顔はリュウの顔をじっと見つめる。


「これじゃ証明にならないか、仕方ない腕まで切るそれならどうだ」


「どうだってお前」


 リュウの答えを待たずにカサミは抜いたクナイで再び腕を突き刺そうとするその瞬間

ナフは振り上げたカサミの腕を掴んで


「わ、わかりました落ち着いてください。その仕事とやら同行させてくれませんか? おれたち、いや僕たちがここにいるのはですね今日護送されている魔王の子を救出するためなんですよ」


「おいナフ!」


「ここは正直に言わなきゃだめだよリュウ君」


「ちっわかったよ」


--------------------


 その頃投げ飛ばされた隊長は気絶していた。

ゆっくり隊長は目を開けた。


「な、なんだこの馬~! と、止まれ!」


「馬~すぐ後ろに来てるよオーラン!」


「わかってるっすよ」


「アランさんどこですか」


 奇妙な集団の疾走劇は先頭を走るミンスの行動で終演をむかえようとしていた。

正面に3メートルほどの赤い壁が突如現れてミンスはその壁に激突すると

背後からオーラン、カオンとミンスの上にかぶさった。


「止まれ! この」


 隊長が馬の紐を勢いよく引くと馬は大きく前足を上げた。


「この野郎」


 その行動に隊長は瞬時に対応することもできず人の山に落ちた。


「ヒヒーン」


 馬は人の山を避けて正面に立つ男に突進。


「ふふ、邪魔ですよお馬さん」


 その男は馬の前蹴りを交わして横腹にレイピアを突き刺した。

地面に着地した前足は立つ力を失いガクンと関節が曲がり馬は静かに鼓動を止めた。


つづく

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