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教会から始まる魔王の冒険  作者: ふしお
10/15

ハッタリ

 ミンスの瞳には暗闇に不定期的に光る眩い色とりどりの花火が映っていた。)

ミンスは耳を人差し指で耳栓代わりにして民衆の騒音をかすかに防いで足を裏門まで進める。

道中、ミンスはカオンとオーランに遭遇した。


 「作戦はどうなりました?」


 その質問にカオンは両手を開いて顔を傾けた。

ミンスとカオン達は会話を終えると頭を下げ、ドランに礼を言うと急ぎ足で目的地まで進んだ。

騒ぎの大きい方右角を曲がりかけたカオンは反対方向へ進むミンスに大声で


「そっちじゃないよ!」


 カオンの声は花火の爆音にかき消された。


「だめっすね、おれ達のやる事は終わったすからミンスを追いかけるっすよ」


 オーランはそう言うと走る片足を砂煙を立て止めるとすぐに振り返り数十メートル先にあるミンスの背中を追いかける。


「リュウさんのとこ行きたかったのにい、もう!」


 オーランに愚痴を言いながらカオンも引き返す。


「たくあんたはいつもいつも私の邪魔ばっかするわね!」


「おれじゃないっすよミンスっすよ」


「あんたがミンスにちゃんと伝えないからでしょ作戦」


「うるさいっすね!」


 カオンの後頭部に暖かい風が吹きかかった。


「うるさい? なによこのハゲ!」


 ・・・・・・


「何黙ってるのよ! なんか言いなさいよ」


 オーランは指をカオンの方へ向けた。


「どこ指差してるのよ! 私の顔に何か付いてるっていうの! ええ!」


「いや、後ろっすよ馬が・・・・・・」


「馬? あんた誤魔化そうったってそうは・・・・・・」


 ぐちぐち言いながら振り返ると確かにすぐ背後に鼻息を荒立て、我を失った馬が居た。


「きゃあああああ!」


「走るっすよ! 避ける暇なんてないっす」


「わかってるわよ! なんで早く言わないの!」


「突然現れたんすから言えるわけないっすよ!」


--------------------------------------------------------------------


「花火か、綺麗だな」


 王の問いにアランは横になったガドンの死体をみながら無言で返した。


「おい魔族のガキ、王のお言葉を無視するか」


「やめんかカサミ、お前は馬を引いておればよい」


「・・・・・・はい」


「もうすぐ裏門だ。着いたらお前を逃がす」


 お前を逃がす--------------その言葉にアランは何度も同じセリフで反応した。


「本当にいいのか? お前王なんだろこの国の」


「王だからさ、お前と盗賊団の話しを牢獄で聞いてから我は魔族と人間が共生できる可能性を見たのだ」


 馬車でアランと向かい合う王の眼差しは牢獄に足を運んだ時の迷った目ではない

堂々とした雰囲気を醸し出していた。


「な、ならこんなことしたら大王に殺されるぞ!」


 その言葉に王はただ黙した。



「ん? まだ門についてないではないかカサミ」


馬車の扉を王は開きながら外にいるカサミに問いかけると


「敵です」


「敵? まてまてここは我の領地だぞ」


 慌てて王は馬車から降りるとレッテル城の兵が数十人が道を塞いでいた。


「なんじゃお前ら」


「本当に来たぞあれ、王様だよな」


「ああ」


 兵士達が動揺し始めた。


「お前ら、表門の方へはよ行け」


「は、はい!」


「おいお前、なに敬礼してんだよ」


「あ、つい癖で」


 敬礼をした兵士の腹部を細長いレイピアが背後から貫いた。


「ヌ、ヌバル様どうし」


「どうしてですって? 笑わせないでくださいよ。 反逆者に敬礼する愚か者を排除するのは当然でしょう」


 ヌバルはレイピアを腹から引き抜き、意識を失った兵士を足で壁に押さえつけた。

そのあと腰に何本も巻きつけた短剣を一つ抜き、兵士の首を横から切り裂いた。

首は王の足元まで転がり、泡を口から吹き出したまま白目を向いていた。

突き刺し、首を切り裂いたヌバルの姿に王も兵士達も騒ぐことなく、沈黙した。


「いいですか、次このようなマネをしたものはこんなんじゃ済みませんよ。生きたまま肢体を切り裂きますからね」


「は、はい」


 兵士達は弱く握っていた長槍を強く握り締めた。

王のその疑問はカサミのある言葉から答えが導き出された。


ヌバル様が最近不穏な動きを見せております


その言葉が脳裏に蘇った。


「その顔、反逆者ではあるがやはり王でしたね。勘が鋭くてらっしゃる。

そう、私達は王都の裏切り者のあなたを討ち取りにきたんですよ」


「だ、誰が裏切り者だ!」


「ふふふ、しらを切れるとお思いですか? その馬車に乗っている者がなによりの証拠」


 ヌバルは腕を下ろすと


「王を討ち取り、魔族のガキを捕らえなさい。 みなのもの突撃です」


「おおおお!!」


 その無数の怒号に行動が伴う兵士は数人だけだった。

数人の兵士は王に槍を立てながら突進する。

先頭にいた兵士の足元に突然カサミが現れた。

すばやく体を地面すれすれまで落とし兵士の足鎧の隙間にクナイを突き刺した。

カサミの背中にもたれかかった兵士は


「おれの、おれの足がああああああああ」


 っと叫び、カサミがその場から消えると地面に倒れこんだ。

カサミは続けざまにほかの突進してきた兵士の関節や急所にすばやくクナイを投げ込んだ。

次々と倒れこみ、怒号からうめき声へと声は変わっていった。

その後カサミは兵士達の前に立ち


「私が境界線だ、進むものは殺す!」


「はあ、進みなさい」


 ヌバルは足が竦む兵士達を恫喝する。

カサミの威圧感に圧倒され、足はとてつもなく遅く、じりじりと踏み出した。


「あなた方、反逆者を逃がしたらどうなるかわかってますか? 死罪ですよ、つまりどの道戦わなければ死ぬのです。なら国の為にその恐怖心、捨てなさい」


「は、はい!」


 国の為、その一言に兵士達の士気は火に焚きつけられたように勢いをました。


「もう一度いいます。進みなさい」


「おおおおおお!」


「くっ王、お逃げください。遠回りにはなりますがほかの道から裏門へお進みください」


「できぬ! カサミお前もこい」


「できません! 私がここから去れば王もそのガキも・・・・・・」


「すまぬ! カサミ」


「どうかご無事で」


 王は馬車に乗りこみ紐を引こうとした瞬間


「見捨てるんだなあいつを。やっぱり人間は信用できねーや」


 アランはそう言うと馬車から降りた。


「やはり居ましたね、魔王の子」


 ヌバルはレイピアをアランに向けた。


「あの者があの魔王ラジェンの子です」


 アランは馬に乗りこんだ王を引きずりだし、腹を殴りこみ気絶させた。


「ガキ、何をする!」


 カサミは鋭い目でアランを睨んだ。

するとアランは大きな声で


「おれはアランだ! よく聞け下等な人間共、おれ様はこいつらを騙してここまで逃げ延びた。

だがもうこんなみみっちいことは止めだ。お前ら全員ぶっ殺してやるよ」


 魔法が効かないアランにとって兵士達に勝つ自信はなかった。

オークに変身できる力をもってしてもヌバルに勝てる保障がなかった。


「そこの人間の女、今の内に逃げるなら見逃してやる」


「なんだっ・・・・・・わ、わかった」


カサミは気絶した王を抱え、アランの横を通る瞬間小さく


「感謝する」


と言い残し、その場から走り去った。


「あなた達、ぼ~っと見てないでこいつを捕まえなさい。 手足の一、二本は切り裂いてもいいです」


「は、はい!」


 再び兵士達が槍を立て、アランに突撃した。


「オーク!」


 アランは小声で呪文を唱えた。

突撃した兵士達はアランの蒸気の煙の中に吸い込まれていった。


「どうなってんだいったい」


 兵達の視界は暗闇から真っ白な煙へと変化した。


「おい、やつを見つけたか?」


「い、いや」


 アランはオークの腕を煙の中を円を描くように振り回した。


「あああああ!」


「吹き飛んばしただと? 魔法は効かないはず」


 煙をヌバルは目を鋭くして覗くと

煙の中から赤い丸太のような腕が何度か煙の外に現れた。


「なんですかその腕は!」


 煙が拡散してアランの場所に花火の光が当る。


「答えるわけねーだろバーカ」


 アランの周囲には血を一滴も漏らさず倒れこむ兵士達がいた。


 つづく

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