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異世界講座 1

護衛に選ばれた青年や少年達は、あのあと迎えに来た騎士様に何処かへ連れて行かれた。

私達が一般常識を学び終わるまで、騎士見習いと同じような扱いを受け、騎士様方と寝食を共にしながら、剣技や魔法の訓練に励む事になるらしい。

次に会えるのは、私達がここを出る時だそうだ。

連れて行かれた後になって、そういえばお互いに自己紹介をしていない事に気づいた。

次に会った時には、真っ先に自己紹介をしないとなぁ。


あれから、私達はまた移動して、今度は会議室のような部屋に案内された。

文官さんの立つ位置から、コの字形に長方形の机と椅子が置かれていて、そこに私達が座っている。

部屋の端には正方形の小さな机があり、その上には木製のトレーが鎮座していて、白い布が被されていた。

現在、この部屋にいる女性の人数は、あの右の部屋にいた時よりも少ない。

今後は個人個人が理解するまでしっかり教える為にも、1グループの人数はできるだけ少なくするらしい。

グループ分けはくじ引きで行われた。

私がそのまま文官さんが教えるグループに入れたのは、ラッキーだったと思う。

だって、教える人の中には、明らかに厳しそうな眼鏡の男性がいたから。


「それではこれより、この世界の一般常識を学んで戴きます。まずは、この世界の文字から。貴女方は既に読む事はできるでしょうが、書く事はできないはずです。故に、世界のどの国でも通じる、共通文字を修得して戴きます」

「どの国でも通じる共通文字? まあ、そんなものがあるのね。助かるわ」

「本当に! それひとつ覚えればいいんだものね」


文官さんの説明に、女性達がホッとしたような声を上げる。

すると文官さんは苦笑した。


「はい。私達教える側も、その事に非常に助かっております。……昔は、国ごとに文字が違い、それら全てを召喚した女性達にお教えしなければならなかったようで、お教えする側も教わる側も、大変苦労したようです。その為、共通文字を作ろうという事態になったと、記録にあります。過去の方々のそういった努力によって、今の楽な状況があるのですから、ありがたい事です。……さて、では始めましょうか」


文官さんはそう言って1歩横にずれると両手を翳して、つい今しがたまで自分がいた場所に半透明の長方形の光の板のようなものを作り出した。

大きさは、学校の教室にあった黒板、大体二枚分だろうか。

そこに先ほどの、ステータスに表示されたアルファベットに似た文字を記していく。

少し大きめに書いてくれているから、見やすくて助かる。


「これが共通文字です。一番左上が"あ"、一番右上が"ん"です。下に向かって、あ い う え お。上に戻って、隣が、か き く け こ、という順です。今から紙とインクとペンを配りますから、見ながら書き取りをして、覚えて下さい」


そう言い終わると、文官さんは右手をスッとひと振りした。

すると部屋の端にある机に置いてあった紙やペンなどが、ふわふわと宙を漂いながら私達が座っている場所へやってきて、それぞれの机の上に着地する。

……こ、これが、魔法なんだね。

凄い……まさかこうして実際に目にする事ができるなんて、思ってもいなかったよ……!

なんか、感動した……!!


「シズル・ホウジョウさん? どうかされましたか?」

「えっ? あっ……! ご、ごめんなさい! すぐ始めます!」


飛んできた紙やペンを見つめていた私が文官さんの不思議そうな声に顔を上げると、他の女性達は既に書き取りを始めていた。

それを見て文官さんの問いの意味を理解した私は、慌てて書き取りを始めたのだった。

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