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護衛

護衛候補達は皆、少年から青年までの若い男性達だった。

見るからに筋肉ムキムキのマッチョな人もいれば、すらりとした細身の長身に知性を宿した瞳をした人もいて、様々なタイプの人が集められているようだ。


「青年と呼べる年齢層の者は、既に護衛として問題ない実力を持っています。反対に、少年と呼べる年齢層の者は才能はありますが、まだ花開く前の蕾です。けれど、貴女方が一般常識を学んでここを出るまでには、それなりの実力を身につけて貰いますので、誰を選ばれても問題はございませんのでご安心下さい」


私を含め、女性達が興味深そうに護衛候補の男性達に視線を走らせていると、文官さんがそう説明した。

ふぅん、なるほどね。

という事は、好みのみで決めても大丈夫って事だね。

う~ん、誰にしよう……。


「あら、珍しい! 双子がいるじゃない! 私の国では滅多にいなかったのよ!」

「あら、本当! 双子だわ! へえ、可愛いじゃない!」


へ、双子?

私が護衛候補達を見回していると、女性達の中から明るい声が上がった。

そのまま視線を巡らせると、確かに、同じ顔をした双子がいた。

銀の髪に紅い眼をしたその双子の違いは髪の長さくらいで、一人は首の付け根までの長さで、もう一人は短く切り揃えている。

歳は私と同じくらい……いや、ちょっと下かな?


「いいわね、銀髪の双子! 私銀髪って好きなのよ! ……ああ、でも……う~ん。ね~え文官さん? 貴方さっき、5年間暮らせるお金をくれるって言ったけど、それは護衛の分も含まれているの? 護衛を複数選んだら、その分貰える額も増えるのかしら?」

「いいえ、そういう事はございません。金額は皆様公平に、同じ額を贈る事になっておりますので。……ただ、先ほど申したように、護衛は服従させる事ができますから、護衛に自らの才能に合った仕事をさせ、貴女方はどこか安全な場所でただ待ち、護衛が稼いだ金銭で生活する、という事もできますが……護衛も、感情を持った一人の人間である事だけは、くれぐれもお忘れなきように」

「ええ、勿論よ。わかっているわ。……けれど、そう。金額は増えないのね。となると……双子を護衛に選ぶと、かかる生活費も二人分増えるから、あまり得策じゃないのね」

「あら、別にいいんじゃない? 双子だからって、何も二人とも護衛にする必要はないでしょう? どちらか一人だけでもいいんじゃないの?」

「あ! そうね……! 言われてみればそうだわ! どちらか一人だけでもいいのよね!」


女性はそう言って、名案とばかりに手を叩き、嬉しそうな顔をした。

けれど私は、その言葉を聞いた途端、双子達が不安そうに顔を見合わせたのを見てしまった。

……ああ、そうだよね。

兄弟だもん、離れたくはないよね。

私には……肉親はいなかったけど、それでも、元の世界に親しい友人はいた。

彼女達にもう会えないと思うと、凄く淋しい。

友人でさえもこんなに淋しくなるんだから、実の兄弟ならきっともっと淋しいだろうな。

私と同じように、あの女性にも元の世界に友人はいたろうし、淋しい気持ちはあるだろうに、彼らの気持ちを考えられないんだろうか?

つい今しがた文官さんに、護衛も感情を持った一人の人間だって、言われたばかりなのに。


「ああ、どちらにしようかしら……違いは、髪の長さだけだからどちらでも……ああでも、せっかくの銀髪なら少しでも長い方がいいかしら?」


女性は頬に手を当て、双子達を見比べながら一人ごちている。

それを見た双子達は、諦めたように、目を伏せた。


「……お嬢さん。銀髪がお好きだというのなら、他にもあちらに、銀髪の青年がおりますよ?」

「えっ!? あら……!!」


双子達の様子に気づいたらしい文官さんが、意識を双子から逸らすように女性に声をかけた。

それは見事に成功し、女性の視線はもう一人の銀髪の青年に移る。

けれど、それは一時的しのぎにしかならないだろう。

女性が青年と双子達の間で迷い、結果双子のどちらかを選んだら、結局彼らは離れ離れになってしまう。

それがわかっているのか、双子の諦めたような表情には変化がなかった。

他の女性達は、双子には見向きもしていない。

まあ、複数護衛を選んでも貰える金額に変わりはないなら、生活の為にも護衛は一人のほうがいいと考えるだろうし、あの女性のように兄弟を離れ離れにさせようなんて思う人は少数だろうと思う。

……仕方がないね。

なるべく急いで、お金を稼ぐ方法を見つけなくっちゃだなぁ。

私は小さく息を吐くと、双子に近づいて行った。


「ねぇ、良かったら、私の護衛をしてくれない? 私、貴方達を選びたいんだけど、いいかなぁ?」


すぐ前に立ってそう尋ねると、双子はキョトンとした顔をした。

けれど、私の言葉の意味を理解したのか、すぐに輝くような笑顔になって、大きく頷いた。


「おや、どうやら決定したようですね。良うございました。では、これが服従の為のアイテムです。首輪と腕輪と指輪、どれがよろしいですか?」


すぐにホッとしたような顔をした文官さんが近づいてきて、私にアイテムを見せてきた。

く、首輪は、絶対嫌だなぁ。

無難なのは、腕輪、かなぁ?


「じゃあ、腕輪で」

「はい、かしこまりました。では、貴女の手で、彼らにつけて下さい。それでアイテムの効果が発動しますので」

「あ、はい。わかりました」


文官さんに促され、私は双子の腕に腕輪をつけた。


「あっ、嘘! そっちの子達取られちゃったの? う~、残念! でもそれなら、こっちの彼でいいわ! 文官さん、アイテムください!」


私が双子に腕輪をつけたのを見て、女性が残念そうな声を上げたけれど、次の瞬間にはけろりとして、青年の腕を掴んでいた。

……あのお姉さん、とりあえず銀髪ならいいんだね……。

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