右の部屋にて
「大変お待たせ致しました。全員の能力確認が終わりました。既にお気付きの方もおられるでしょうが、こちらにいらっしゃる皆様には、街や村に降り、そこで結婚相手となる男性達を探して戴く事になります」
……ああ、やっぱりね。
予想していた事が当たり、私は苦笑しながら、部屋に入ってきた人を見やった。
その男性はさっきまでのきらびやかな服装の人達とは違い、青色一色の、ちょっとダボッとした上衣とズボンを纏っていた。
言うなれば、そう、文官の服……みたいな感じだ。
……文官さん、かぁ。
安定感のある堅実な職だよねぇ。
容姿も悪くはないし、歳も……う~ん、21歳くらいかな?
だとしたら、なんとか許容範囲内、だよね……。
この人はもう、結婚しているのかなぁ?
「そこで貴女方には、この世界の一般常識を学んで戴いたあと、向こう5年間は暮らせるだろう金銭を贈ります。それが尽きるまでには、伴侶を迎えるか、ご自分に合った職を見つけるかをして下さいますよう、お願い申し上げます」
そう言って男性は頭を下げた。
私がじっと観察している間も、男性の説明は続いていたらしい。
いっけない、ちゃんと聞かなくちゃ。
えっと、一般常識を学んで、この先5年間暮らせるお金を貰えて、お金がなくなるまでには結婚するか職を見つけるかしてね、だったよね?
よしよし、耳には入ってるね、うん。
「さて……ここでの説明は以上ですが、一般常識を学んで戴く部屋に移動をする前に、ひとつ、重大な注意事項がございます。……世界によって、その存在を知る方も知らない方もございましょうが、この世界には人を襲う魔物がおります。それに、残念な事ですが、この世界の男が皆、紳士であるとは申せません。中には貴女方と結婚をする為に、強引な手段を取る者もおりましょう。過去には、実際にそういった行為がございました。それを踏まえて、お聞き致します。お一人で生活するのは不安、という方はいらっしゃいますか?」
えっ、な、何それ!?
魔物なんて、アニメやゲームの中の存在だよ!?
それに……強引な手段って、何!?
ま、まさか、レイ…………っ、じょ、冗談じゃないよ!!
男性の言葉に若干血の気が引くのを感じつつ、私は慌てて手を上げた。
視界に入る女性達も、ほぼ全員が手を上げている。
まあ当然だよね。
「……はい、わかりました。では貴女方には、先に自らの護衛となる者を選んで戴きましょう。その者達も結婚候補として見て戴いても構いませんので、それも考慮してお選び下さい。……ああ、その者達が貴女方を襲わぬよう、強制的に服従させるアイテムを身につけさせますので、ご安心を」
「えっ、ふ、服従っ!?」
次に男性から告げられた内容に思わず声を上げると、全員の視線が私に集まった。
「あっ、ご、ごめんなさい……!」
「いえ、構いませんよ。お嬢さんはお優しいのですね。けれど、ご安心下さい。護衛としての才能を持つ者達の中から、それをつける事を同意した者のみ集めておりますから。決して強制してはおりませんので」
「ど、同意……そう、でしたか。わかりました……。お話を遮って、本当に、ごめんなさい」
「いえ。さあ、それでは、護衛候補達の元へ参りましょうか。……必要ないという方は、もうしばらくこちらでお待ち下さい。すぐに別の者がご案内しに参りますので」
そう言うと男性は扉を開け、私達についてくるようにと促して歩き出した。
結婚候補にもなる護衛、かぁ。
護衛って事は毎日一緒にいる事になるんだし、接する時間が長い分、そういう関係になる可能性はきっと高いよね。
……歳の近い子、いるかなぁ?
う~ん、年上と年下、どっちがいいかな……。
あ、でも私より年下だと、護衛としての腕前は未熟な可能性があるかな?
どうなんだろう……う~ん。
……まあ、どういう人がいるのかはまだ全然わからないんだし、今考えても仕方ないかな。
全ては護衛候補達に会ってからだね、うん!