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初めての王城にて

今回もユーイン視点です。


今回から、文の始めをヒトマス開けてあります。

前話までも、時間を見つけて順次ちょこちょこそのように編集する予定です。

 王都の王城には、僕達以外にも結構な数の男達が集まっていた。

 この全員が、異世界から来る女性達を守る護衛を希望する人達なんだろうか?

 一体何人の女性が召喚されるのかはわからないけど、僕達はちゃんと護衛になる事ができるんだろうかと、不安が過る。

 遥々王都までやってきたのに、護衛になれなかったと情けない顔をして故郷に帰るような事は避けたいなぁ。

 隣を見ると、ルーインも同じような事を考えているのか、強張った表情で、周囲の男達を何度も断続的に見回していた。

 そうこうしていると、僕達一同の前をゆったりと、けれど堂々とした足取りで、王城の上級文官の制服をその身に纏った青年が歩いて、人垣のちょうど中央辺りで止まった。

 その青年から発せられた、長々とした大仰な挨拶を除いた説明を纏めると。

 異世界の女性が望まぬ行為を強いられる危険を防ぐ為、護衛には服従のアイテムを身に付けて貰う事になる。

 まず、それが許容できないという人物は今すぐこの場を去って欲しい。

 次に、護衛としての力量が備わっているかと、一般常識がきちんと身に付いているかどうかを測らせて貰いたい。

 その上で、こちらが定めた基準をクリアした者のみを護衛候補として認め、女性達に引き合わせます。

 という事だった。

 服従のアイテムの使用は、か弱い女性達に安心して貰う為には、仕方ない事だろう。

 何しろ、護衛という名目があるとはいえ、傍にいる事になるのは、異世界の、全く知らない男達だ。

 突然この世界に呼ばれる女性達の心情を思えば、もしもの時の為の保険としてそういったアイテムがあるほうがいいだろう。

 けれど、力量を測るテストと一般常識の有無を見るテストがあるというのは予想外だった。

 仮にも貴族の子息として、僕もルーインも一般常識はきちんと身に付けている。

 護衛としての力量も、問題ないとは思う。

 でもそれは、あくまで僕達が考える基準での話だ。

 王城の人達が定めたという基準がどれほどのものか……それが問題だ。


「ルーイン……どうしよう。僕達、受かるかな?」


 視線は文官の青年へと向けたまま、僕は思わずルーインにそんな事を尋ねてしまった。

 けれど、次の瞬間。


「受かるさ。……受かってみせる」


 ルーインからは、そんな力強い返答が返ってきた。

 驚いて隣を見れば、ルーインは文官の青年を真っ直ぐに見つめていた。

 その目には挑むような光が宿っている。

 ……そうか、ルーインは幸せな家庭を築くのが夢だと言っていたもんね。

 女性と知り合う絶好の機会であるこのチャンスを逃す気は、一ミリたりともないんだね。

 ……なら、僕も。

 君と離れず、君のその夢に、全力で協力する為に、必ず受かってみせるよ。


「そうだね、ルーイン。受かろう、必ず、二人とも」

「ああ、必ず」


 僕は改めて決意を固め、真っ直ぐに文官の青年へと視線を戻した。

 それにはきっと、ルーインと同じ光が宿っていただろう。

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