魔石入手と造魔体験 3
手の中のそれは、体長15センチくらいの女の子だった。
髪色は青で腰くらいまで長く、瞳も青い。
白い耳と白い尻尾が生え、白いシャツとショートパンツを着て、緑の上着を羽織っている。
その上着の胸元には白い四つ葉のクローバーの模様がワンポイントでついていた。
そして、手には体長と同じくらいの長さの四つ葉のクローバーを持っていて、とても可愛いらしい姿をしている。
うん、外見はOKだね!
イメージした通りの姿になってるよ!
となると、あとは能力かな。
手の中の造魔を上から下まで確認すると、私は満足げにひとつ頷いてソーマ様に視線を移した。
「あの、ソーマ様。造魔の能力って、どうやって確認したらいいんですか?」
「造魔に向かって、"ステータス閲覧"と言えばいい。自分が生成した造魔なら、それで見える」
「へぇ、造魔にもステータスがあるんですね。わかりました。ステータス、閲覧 !」
私は再び造魔へと視線を戻すと、ソーマ様に教わった言葉を口にした。
すると造魔の前に透明な板が出現し、そこに造魔のステータスが文字となって浮かび上がった。
「ええと……?」
属種 造魔
名前
レベル 1
体力 並
魔力 並
頭脳 並
運動 並
運気 やや優
特殊能力 お願いクローバー
幸運のクローバーの力で宝箱の中身を極稀に好きなアイテムに変えられる
「……え? ご、極稀に……?」
私は確実に好きなアイテムに変えられるようにって思って生成したのに……失敗って事?
じゃあ、この子魔石に戻して造り直さなきゃいけないの!?
「そんなぁ……!!」
「ん? どうした、シズル嬢?」
「あ……あの……能力、失敗しちゃったみたいで……」
「失敗? ……しかし、きちんと望みのアイテムに変えられる能力のようだが?」
「あ、いえ……私は、確実に好きなアイテムに変えられるようにって思って生成したので……」
「確実に? ……ああ……なるほど。それで、失敗だ、というわけか。……だがシズル嬢、それは違う。きちんと成功している。どんな能力であれ、最初から完璧なものをと望んでも無理というものだ。確実に変えられるようにと生成したなら、造魔のレベルが上がるにつれ、能力も強くなっていくだろう」
「え、レベルが、ですか……?」
そういえば、この造魔のステータス、レベル1って書いてある。
1って事は、当然、上がっていくんだよね……。
「そうだ。実際、私のエヅチも、今でこそ二分の一の確率で変えられるようになったが、最初は十分の一の確率だった。だから、シズル嬢。能力の傾向さえ合っていれば、それは失敗ではないんだ。あとは、じっくり造魔を育てる事だな」
「そ、そうなんですか……! ならこの子、このままでいいんですね! 良かったぁ……!」
「ふ。1度での成功おめでとう、シズル嬢。さあ、その造魔に名前をつけてやるといい。それによって造魔に正しく主人だと認識されるからな」
「えっ、名前……っ、ああ、はい、えっと……」
ど、どうしようかな……全然考えていなかったよ。
名前って大切だよね……えっと、えっと。
青い髪と瞳の、白い猫耳の女の子…………う~ん…………。
……運気が"やや優"だし、能力が"お願いクローバー"なら……幸運の四つ葉って事で、やっぱりヨツハかな!
ちょっと安易かもだけど、その分わかりやすいし、名は体を表すっていうし、いいかもね!
「うん、決めた! 貴女の名前は、ヨツハだよ!」
造魔に向かってそう言うと、ステータスの名前の欄に"ヨツハ"という文字が追加される。
そして次の瞬間、造魔ーーヨツハの体が金色の光を発した。
けれどそれは一瞬でおさまって、私が数度目を瞬いていると、ヨツハがふわりと舞い上がり、私の目の前に来た。
「初めまして、マスター! 私を生成して下さって、ありがとうございます! 私、マスターのお役に立てるよう頑張りますから、可愛がって下さいね!」
「えっ、あ、うん、初めまして! 私はシズル。よろしくね、ヨツハ!」
「はいっ、よろしくお願いします!」
にっこり笑って元気に挨拶するヨツハに、私も挨拶を返す。
ヨツハは声も可愛い。
どうやら私の初めての造魔生成は大成功みたいだ。
「よし、これで造魔生成の一連の流れは終了だ。シズル嬢、まだもう少し魔動宮を探索する時間がある。早速その造魔の能力を使ってみるといい。レベルを上げるには、とにかく経験だからな。運よく魔石がもうひとつ見つかれば、もう1体、造魔を生成しよう」
「あ、はい、わかりました! ヨツハ、魔石を探したいの。宝箱の中身を魔石に変えてみてくれる?」
「はいマスター! 私にお任せ下さい! 魔石になるよう、頑張りますね!」
私の言葉に元気よく頷くと、ヨツハは空中を駆けて行った。




