魔石入手と造魔体験 2
28階には結局、残念ながら魔石は見つからなかった。
宝箱の中身はほとんどが初めて見るアイテムで、ソーマ様に名称と使い方を説明して貰ったけれど、なんだか物騒な物ばかりで、『必要なければ冒険者ギルドに売却する』と言ったソーマ様にお渡しする事にした。
売却して得たお金は、ソーマ様にそのまま受け取って貰いたいと言うと首を横に振られたけど、『今日の護衛と実地講習代として是非』と更に言い募ると、渋々ながらも頷いてくれて、ホッとした。
ラシャさんとこの魔動宮に来た時も、宝箱の中身はラシャさん達が持って行っていたし、公爵家子息なんて偉い人に無償で協力して貰うなんて、気が引けるもんね。
もしかしたらお城の人から謝礼のようなものが出るのかもしれないけど、実際つき合って貰うのは私なんだから、私からも何かお礼がしたいし。
そうして宝箱を全て確認した28階を後にし、私達は29階へ降りた。
ソーマ様は直ぐ様エヅチさんを再び呼び出し、宝箱の中身の変更をお願いして、飛び去って行くエヅチさんを見送る。
そして私を振り返って『行くぞ』と言うと、歩き出した。
私もその後をついていく。
今度こそ魔石がありますように、と、願いながら。
★ ☆ ★ ☆ ★
ひとつめの宝箱は、"マジカルバッグ"という便利なアイテムだった。
見た目は肩から斜めにかけるタイプの茶色い布の鞄だが、ソーマ様の説明によると、これは魔法のアイテムで、この中にはなんと500個ものアイテムが入れられるらしい。
『旅をする上で重宝するから』とそう言って、ソーマ様はこのマジカルバッグを私にくれた。
1度は受け取れないと断ったけれど、『シズル嬢が持つべきだ』と言って譲らないソーマ様に根負けして、ありがたく貰う事にした。
確かにあれば凄く助かるし、正直、ちょっと……欲しかったし……ね。
「シズル嬢、あったぞ。宝箱だ。さあ、開けてみるといい。今度こそ、魔石だといいな」
「あ、はい……そうですね。……じゃあ、開けます!」
その後も魔動宮を進みつつ宝箱を探していると曲がり角があり、曲がって伸びる通路の反対側に小部屋があった。
入ってみると、小部屋の入り口からは死角となる隅っこに宝箱があって、私は『魔石……魔石……』と念じながら蓋を開けた。
すると。
「よし……やったぞシズル嬢! 魔石だ!」
「えっ……こ、これが、魔石……!」
ソーマ様の弾んだ声に、私はまじまじと宝箱の中を見つめる。
中には、底にポツンと、けれどキラキラと輝きその存在を主張する、楕円形をした透明な魔石があった。
それは形は違えど、まるでダイヤモンドのようだ。
「シズル嬢。魔石が手に入ったなら、次は造魔の生成だ。今ここで、やってみるといい。結界を張るから魔物の事は気にするな。何も心配せず、生成に集中するといい。最初の造魔は、魔石探索に役立つ能力を持つものにするといい。私も、エヅチを最初に造ったのだ」
「あ、はい。そうですね」
造魔の生成は魔石がなきゃできない。
この魔石を使って造魔を造ったら、次に造魔を造るにはまた魔石を探さなきゃならない。
それなら、最初に魔石探索の助けになる造魔を造るのが、賢いやり方だろう。
でも……う~ん、どういう能力にしよう?
今後、魔石以外のアイテムが欲しくなって魔動宮に行く事になる可能性もあるし、そう考えると、エヅチさんのような能力が望ましいよね……。
けどどうせなら、"二分の一の確率で"とかより、確実に欲しいアイテムにできたほうが、いいよね?
あと、見た目。
これもどうしよう……。
宝箱の中身を好きなアイテムに変えられる造魔の容姿……宝箱の中身を好きなアイテムに変えられる造魔の容姿……う~~~~ん……。
幸運の青い鳥……招き猫……四つ葉のクローバー……。
……ん、んん?
な、なんか、いいイメージ、湧いたかも……!
青い髪で、白い猫耳と尻尾生やした人形の妖精とか、可愛いよね?
手には四つ葉のクローバー持ってて、宝箱に向かってそれを振る事で中身を変えるとか、いいかも……?
……よし、これにしよう!
「いきます……! 造魔、生成!」
私は両手で魔石を握りしめ、頭にイメージを思い描きながら強く念じ、生成の為の言葉を発した。
すると魔石が眩い光を発し、私は思わず目を閉じる。
けれど閉じても尚明るく感じるその光の中、手の中にある魔石が次第に形を変えていくのが感触でわかる。
そして、やがて光がおさまると私は目を明け、手の中の存在を確認した。