魔石入手と造魔体験 1
翌朝。
魔動宮に行くということで、またお城の門の前で今日の付き添い兼護衛の人を待ちながら、通りがかる魔術師さんっぽい人に声をかけ、お願いして魔法をストックさせて貰った。
これで魔物と戦闘になった時、ほんの少しだけど、私もサポートする事ができる。
その事にホッとしながら辺りを見回すと、1人の青年が私を見ながら近づいて来た。
癖のないまっすぐな金髪に、ややつり目の深い青の瞳をしたその青年は、整った顔つきをしていて、やたらキラキラしている。
あの青年が、造魔師さんかな、と思いながら、相手の反応を待つ。
「失礼、貴女が造魔師になりたいという少女かな? 初めまして、私はソーマ・シンメルク。シンメルク公爵家の次男だ」
「へっ…………」
私の前に立って口を開いた青年は、思いがけない言葉を口にした。
……公爵……今公爵って言ったよ、この人?
公爵ってあれだよね、王族の次に偉い人だよね?
なっ、何でそんな人がここに来るの?
私は貴族には関わらないと思ってたのにどうして……って、そういえば昨日文官さん『頑張る』って言ってた!?
あ、あれってこういう事!?
が、頑張り過ぎじゃないですか、文官さん~!?
「……お嬢さん? どうか、したのかな?」
「えっ……あっ、す、すみませんっ! わ、私、シズル・ホウジョウといいます! よ、よろしくお願いしますっ!」
怪訝な表情で顔を覗き込まれた事で我に返った私は、慌てて謝って自己紹介をした。
「ああ、よろしく、シズル嬢。では早速魔動宮へ行くとしよう。君のレベルは3と聞いたが、間違いないかな?」
「はっ、はい、間違いありません!」
「そうか。では、行くのは小魔動宮のほうがいいな。……とすると、魔石があるのは28階からだ。まずはそこに行こう」
「はっ、はい……よろしくお願いします!」
青年、ソーマ様の言葉に緊張で固まりながらも返事を返し、私達は小魔動宮へ向けて歩き出した。
★ ☆ ★ ☆ ★
小魔動宮に着くと、私達はすぐに28階へ跳んだ。
ワープの魔法陣のある部屋から出ると、ソーマさんは後ろを歩く私を振り返る。
「さて、造魔師について教えておこう。既に知っての通り、造魔は魔石を使って行う。魔石に自分の魔力を注ぎながら、造りたい造魔の姿形や能力などを思い浮かべて、そのイメージが定まったら一言、"造魔生成"と言えばいい。きちんとイメージできていたかどうかで、成功する確率が変わる」
「え? せ、成功する確率って……し、失敗もするんですかっ?」
「無論だ。まあ、失敗といっても、何かしらの能力を持つ造魔は生まれる。ただ、それが自分の思い描いた能力ではないだけだ。その場合、"還元"と言えばただの魔石に戻して、再チャレンジできる。とはいえ、あまり何度もやると魔石が壊れてしまうがな。チャレンジ回数は1個の魔石につき、2回~5回くらいだ。だから失敗する事はあまり気にせず、とにかくチャレンジあるのみだな」
「え、ま、待って下さい! あの、せっかく生まれたのに、自分が思ったのと違うからって、魔石に戻しちゃうんですか……?」
「……ほう。優しいな、と言いたいところだが……魔石は基本入手困難な品だし、自身の魔力とて無限ではないだろう? 可哀想だからと失敗してもそのままにし、思い通りの造魔ができるまで根気よく生成し増やし続けていたら、エサとして与える魔力が不足し、結果、造魔は消滅するぞ? その場合は魔石も壊れる」
「へっ、しょ、消滅……!?」
「そうだ。下手な情けは自身にも、造魔にも良くないのさ。レベルが上がれば魔力も増えていくが、くれぐれも余分な造魔は造らない事だ」
「う……わ、わかりました……」
……で、でも、逆に言えばイメージさえしっかり定まっていたら、失敗はしないんだよ、ね……?
よ、よし、造る時はイメージ、頑張ろう……!!
「よし。では次に、造魔だが……あったほうがいい能力をひとつ見せよう。エヅチ!」
ソーマ様が宙を見つめそう言うと、小さく丸い白い光が出現し、その中から30センチ大の……ハエのような魔物が、金色の小槌を持って現れた。
「え……あの、ソーマ様? これは……?」
「私の造魔だ。動きが素早く、宝箱の探索をしてくれる。そして持っている小槌で宝箱を叩くと、二分の一の確率で、宝箱の中身が望みの物に変わる」
「へ……へぇ、そうなんですか……それは、いい能力を持った造魔さんですね……」
「ああ。さてエヅチ、早速だが、この階の宝箱の中身を変えてきてくれ。今回欲しいのは魔石だ。頼んだぞ」
ソーマ様がそう告げると、ハエ……コホン、エヅチさんは、まるで承諾の返事をするようにパタパタと羽を動かしてソーマ様の周りを一周すると、風のように素早く何処かへ飛んでいった。
「さあ、これでいい。運良く宝箱の中身が魔石に変わっている事を願いつつ、探しに行くとしよう」
「あ、はい!」
こうして私達は、時に魔物を倒しながら、宝箱を探して魔動宮の中を探索したのだった。
……それにしても、エヅチさん、能力は確かに良いものを持っているけど……。
私が造魔を生成する時は、もう少し、見た目にもこだわりたいなぁ。
これは本当にイメージが大切だね……!
頑張ろう!