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陰陽の娘

 無理だ、もうムリ。――鍵をあけて走れば逃げられるのでは?


 無理だよ、むりむりむりむり。身体が固まって動けない、身体が震えすぎてきっと相手も既に見つけてるはず。


 顔は伏せれど、目は閉じず。


 ぶれる視界がいやにクリアで、その鮮明すぎる画面に両の足がきれいに揃った。校内で外靴を履く人間は限られた人だけであるのは何も考えずともわかる。


「……あは」


 笑い声と涙が落ちる手前、「――玄武!」という女性なのに雄々しい声が背後から聞こえた――と思えば、私が背を預けるドアの左側が吹き飛んだ。顔を上げればフードの男と目が合った。思わず固まる私の左耳は、確かに素足で歩くような音を聞き取る。すると刹那の瞬きの内に、目の前からフードの男が消えた――いや。


 右後方へ、机椅子を巻き込みながら半ば先程のドアと同じように吹き飛んだ。男の代わりに、何処か古い中華服の様な衣装を身に纏った、三つ編みの男の子が立っていた。その子は私を一瞥すると、誰もいない方向へ視線を投げた。それにつられるように私も恐怖に固まる首を動かした。


「……鏡子、ちゃ――」


「……随分と演技派ですのね」


 その言葉は冷たい響きを伴って私の胸なかで響いた。僅かな安堵はその冷たさに死んだ。鏡子ちゃんの疑惑の念は隠そうともせずに私を見下ろしていたからだ。


「違う!!違うの!!!」


 鏡子ちゃんの目が、始りの日の目と重なった。あの時も同じことを言われた、槍を構えた男に。


 私が何者であるか、どういう風に扱うべき者であるか――それが決定される前に、私は私でただ巻き込まれただけの、何も知らないただの人間であると示したい気持ちが勝る。


 非日常を受け入れながら、非日常を手に持ちながら私はそれでもただの人間であると叫んで、肯定してもらいたかった。そこに矛盾があることに目を瞑り続けながら。


「私じゃない!!」


 目の前の少女に縋り付くように手を伸ばした。鏡子ちゃんはその行為に目を細めると――、


「こんなに瘴気を溢れさせて、どの口が無実を証明するのでしょう?」


 嘲笑いと、失望を滲ませた声色で私の手を拒絶した。


「玄武、そいつを捕まえて下さいまし」


「あい承知ー」


 ついその言葉に反応した私の身体は一瞬震えた。しかし、男の子が向かったのは後方へ吹っ飛んだフードの男の事で、鏡子ちゃんが言ったそいつは、あの男なのだと頭の隅で思う。


「アァ……?邪魔ハ、許サ……コート、青、青青青青」


「うっ……、瘴気の量……。ん……?此れは――のお、童」


「何ですの」


「こやつは……つ”う”っ」


 肉体が机に当たって跳ね返って壁に追突する音と、肺から空気が無理やり出された痛ましい音が連続した。「玄武っ!!」「くはは―――ッ!久しいなあ久しいぞ!!」鏡子ちゃんは反撃の狂喜に足を止めた。埃か硝煙か、どちらともわからない視界の煙の中から飛び出て来た男の子は一度も足を床に付けずに男へ突進していく。そのあまりにも異質な死闘に、私は唾を呑んだ。


 不意に、顔面に一枚の札を突き付けられた。


「きょ、鏡子ちゃん…何…?」


「わかりません?……同時討伐、です」


 瞳の奥に、はっきりとした意志の炎を見た。それは憎しみに揺らぐ炎にも似た揺らぎを持って、私を燃やしたいと告げている。


「上山さんは……貴様は――……異常すぎるのですわ。己の異常性を理解していないことが一つ。そして、陰と陽の気を漂わすことが一つ。…わかっていないのでしょう?今の、自分の姿が」


 応えない私に鏡子ちゃんは続けた。


「学校を覆い尽くした瘴気……これ全部、上山さんが生んだのですよ?わかってます?」


「――は?」


 大きく見開いた視界に、綺麗に全てが映る。教室の全景と、傍で暴れる二人と、客観的に見下ろす私と鏡子ちゃんと姿と――闇に霞んだこの学校の全景を一瞬で把握し得た。流石に――…その瞬間は、自分が恐ろしくなって私は私の身を無意識に抱いた。抱いた時に痛んだ掌を見れば、赤く煤切れて……――。


「あ、ああ……!」


 見下ろした掌から、傷口から黒い靄が浮き上がってくる。風に流される煙の様に、ふらふらと周りに漂っていく。思わず後ずさった私を受け止めた机が音を立てて整列を乱して耐えたお陰で倒れずに済んだけれど。


 汚れた両手が、やけに心を傷つけた。


「くっ…濃い。これは危ないですわね……ええいもう仕方がありません!成敗っ!上山さん、せめてもの報いです――一瞬にして祓って差し上げますわ」


「私じゃない…違う……違う……こんなの違う!!」


「あああ激昂しないで下さいまし瘴気が濃くなる……!――カラリンチョウ、カラリンソワカ、応えよ天后っ!」


 上空と下空にぐにゃりとした光の線が浮き上がって、それがくるくる回りながら五芒星へと変化した。五芒星の間を這うように回る円が筒の様に上下へ伸びる。


 一瞬の閃光。


 その後に、現れた――天女にも見える慈愛の瞳に讃えた女性が私を見据えた。女性は私を僅かな首の動作で見下ろすと繋ぎ合わせていた両の手を口元へ引き寄せて、着ていた布で驚きを隠しているようだった。


 負素に侵されていく視界が、視力を奪っていくような感覚があった。


 教室右手にはフードの男と私。左手には玄武と呼ばれた少年と天后と呼ばれた女性と――鏡子が対峙する。


「なぬうっ――!あな、口惜し!此奴(こいつ)、力が増したぞ如何なっておるのだ!」


「恐らく上山さんの瘴気の所為ですわ。一気にカタをつけます、合わせて下さいませ!」


「応ッ!!」


 息が……息が……苦しい……――。


「古からの定め、我が曾祖父の誇りに掛けて――貴様を調伏します!」


「え"っ、式神へ下すというのか!?」


「ええ勿論――!!死なない程度に鬼魔駆逐――急急如律令!!」


 床に足を付けず私を見下ろし続けている女性が瞳を静かに伏せた。そして、小さく唇を動かしている。「鏡子ちゃん……助けて……」なんて言ってみても、彼女には届かなかった。女性の前に作り上げられて行く陣は、あの世界でみた魔法陣とは異質な術式が刻まされていたけれども恐らく攻撃性のあるものだと感じた。其処に一切の迷いも感じられなかった。空間を漂う元素が組み合わさって形を変えていく。奪い取られれば奪い取られる程、私の視界と呼吸は失せて行った。


 徐々に黒く成り行く視界で、ふと私はフードの男を仰いだ。その視線を感じた様にフードの男も此方を見たけれど、見事に顔に少年の蹴りを喰らって視界外へ吹き飛ばされる。それと同じように左目は、迫りくる眩い光に塗りつぶされた。












「――アンス!止めるんだ!攻撃をやめろっ!!」


 急に耳元で叫び放った言葉に眉を顰めて、目を開けた。すると――私は誰かに身体を抱かれていた。もはや8割がた失せた視界では、何が如何起こったのか見えない。


「安倍さんも式神への命令を止めて!冗談じゃない、スワードの対人術式を喰らいたいのか!?」


「まさか……何故……何故この領域に居るのですか――アスティン様……」


「アスティン……先生……?」


 闇雲に手を伸ばした手を、優しく掴む手があった。殆ど黒く塗りつぶされた視界だけれど、その分だけ光が見える。……貴方の光が、傍にある。


「泉さ――アンスっ!!落ち着いて!!アンスやめろ!」


「鏡子っ!ぬう……小賢しいわ!妖の分際で……っ!」


「きゃああああっ!」


 重量のある物が壁に追突する音が立て続けに響き渡っている。思わず身を起こそうとした私を遮って、目に手が宛がわれた。徐々に暖かみを増す他人の掌が闇を吸い取っていく。はっきりと見えていた光が。違う光に塗りつぶされて――視界が、明けた。


 先程まで光柱が立っていた場所に人が立つ。私のみを抱いていたアスティン先生は、私と共に銀色の膜の中にいた。その外側には頬が切れ、やけにボロボロになった鏡子を身に庇う天后、未だフードの男といがみ合う玄武の姿があった。


 赤い光が目に入る。咄嗟に胸を、掌を見た……無い。次に周りを探した――ない。目当てのモノが見つからない。止まらない現状に冷や汗を流しながら、私は赤い光を放ちながらくるくると回る物体に目を向けた。


「アンス――……」


「目は見えるようになったかな」


 視界を遮る様にアスティン先生が私を覗き込んだ。驚きに胸が鳴って、頷く。よかった、と一息吐いた彼をよく見て見ると彼も随分ボロボロだった。


「先生、いつから此処に…?それに何が起こって……?」


「あはは、まあ……間一髪十二神将の攻撃から泉さんを守ったとこ…より先かな。今はアンスが暴走しちゃっててちょっと大変なんだけど……どうしたら止まるかな。前回、どうやって止まったんだっけ……!」


 焦る彼を余所に、私はただアンスを見上げた。爛々と輝く紅の私の石は明らかな怒気を含んだ声で呪いを吐いている。聞こえないはずの声が、私に届いた。少し視界を外せば一人の少女を庇いたてる守護者達が見える。嗚呼、これは――この光景は――。


 少し前の、私だ。


 私はアスティン先生の手をやんわりと押しのけた。その行為に疑問の眼差しを向けてくる彼に、私は笑った。立ち上がればまだ身が黒い煤を吐き続けているのがはっきりとわかった。そして、立ち上がる私を鏡子は、はっきりとした敵意を持って糾弾した。


「この鬼が!!やはり、やはり貴様は鬼神にも匹敵する邪悪――っ!!このような力を、……っよくも隠して、のうのうと人間のふりをしていたものですわ……っ!!こんなの、こんなの人間じゃない――っ!!」


「アンス、アンス……聞こえる?」


 石は次に小さな陣を吐いた。それは複雑に文字を走らせ、一つの丸い鏡へと変わる。神社の御殿に祭られている神の鏡に似たそれは鏡子の頭上で彼女を映しながら彼女の目前で止まる。天后が鏡子の前に出て、鏡全面には天后の姿のみ映った。


 鏡の端に浸食した錆が、同じように天后の頬に走った瞬間私はその鏡を胸に抱いた。


「え――――」


 つい声を洩らした天后を一瞥して、私は鏡を抱いたままアンスへと語り掛ける。私側へ鏡面を向けたせいで、私に錆が移る。止まらない腐敗は、煤で身を焦がす痛みより随分優しいものだった。


「私……本当、人間じゃないみたい……」


 鏡に映る自分の醜さについと涙が落ちた。涙は鏡面を伝い、錆びれていく方へ流れていく。


「アンス!!アンス、止めるんだ!!」


 私の肩を抱いたアスティン先生が鏡に映らないように少し傾ける。それが流れを助長させて、涙は錆へ触れた――そしたら、錆びはみるみる内に消えていく。鏡越しに映る石に私は懇願した。


「お願いアンス……助けて……」


 ぽつりと――涙が伝っていく鼓動に応えるように、鏡の奥に白い炎が揺らめいた。それが何かを無意識の内に理解すると、私はアスティン先生を振り返る。心配しながら首を傾げる彼を見て、胸板を勢いよく押して――私から引き剥した。


「泉さ――――うっ!」


 爆炎。


 炎の風圧に圧し飛ばされた先生を見届けて、私は周りを見渡した。「馬鹿な!?」と天后越しに私を見ている鏡子を僅かに視界の端に捉えて、身を浄化する白い炎に任せた。不思議と炎は熱くなく、落ち着いた温もりをもって私を癒していく。傷は消えないが、穢れは消える。鏡が一人でに私の元を離れて、遥か頭上に浮いた。溢れ出した白銀の光を教室中に満たして――鏡は消え失せる。そのタイミングを同じくして、私を包む炎も消え失せた。


「ウウゥゥウウウ……」


 白銀の光は瘴気を呑み込んだ。辺り一面に蔓延していた瘴気の糧を得られなくなったフードの男は、反撃の手さえ失っていく。玄武は勝機を見出したと言わんばかりに追撃の手を速めて行った。そこで一つ、玄武は気づいたのだろう。そのフードの男が向かう先を変えたことに。


 私は、男の視線を受け止めていたから気づいていた。


「やはり……何ですの……この神気は――!何で、何で気質が変化するのです!?」


「……鏡子」


「何ですの、天后。……ふふ、鏡子断然上山さんに興味が湧きました。もはやこの光景を突き付けられて好奇心が疼かない陰陽師がいましょうか――いいえいませんわ!だって、私出会ったことがありません!相反する属性を備えた鬼を!調伏したことがありません!己が穢れを消す者を!さあ、天后命じますわ。上山泉を今すぐ――」


「鏡子。――目の前の敵を見間違えてはなりません。厠から始終を見ていたのなら、真実はわかるはず。鏡子、……妾はそのような非道な陰陽師に仕えてるのではありません」


 ……厠……トイレ。嗚呼、ええ…?あの時、鏡子ちゃんは居たってこと……?可笑しい、私は入る時に確かに――。


「ほうほう、おぬし――この陰の娘が白銀に包まれるは否や随分と焦っておるのう?何故であるか、何故じゃ…!うはははは!」


「くどいですわ天后。その答えはつい先ほどきちんと示したはずですわ。……随分演技が得意だ、と。ねえ、上山さん!」


 投げかけられた声に視線を寄越せば、立ち上がったのは先生だった。え、と驚いた私をよそに眉間に皺を寄せたアスティン先生は何処が荒々しい動作で私と鏡子との間に割り行った。


「…これ以上泉さんを愚弄するなら、わたしが黙っていると思わないで……」


 揺らいだ美しい程の浄蓮の気が、霞んだのを感じて私はとっさに先生の手を取った。しかし、彼は私を顧みず逆に手で背へと推し込んだ。


「あ、アスティン様……。美しいほどの情の気、惜しい……嗚呼美味しい――」


 ぎょ、と二人して鏡子ちゃんを凝視した。睨みつけられているというのに、当の本人は頬を赤く染めて身をくねらせていた……。うへえ。


「わかりました、ええわかりましたとも!その熱い思いで鏡子に懇願してくださるなら、答えない義理はないというもの!さあさ、上山さん!上山さん!」


「な、何……?」


「先程の無礼は水に流して差し上げますわ、さあさ――お手を」


 おい。――色々、おい!


「その白銀の力と、鏡子の陰陽の力をもって、敵を打破します。……これでいいのでしょう?天后」


 ぷい、と背けられた顔の背後で、にこやかな顔をした天后が深く頭を下げた。差し出された手に溜息を吐きながら近づこうとすれば、右側にアンスが近づいてくる。右手でアンスを握り、左手を鏡子ちゃんに重ねれば――心臓の音が、共鳴した。驚いてしまいとっさに退いた私の反応を見て、アスティン先生が声を上げる。その声をなだめるように心配ない、と発した鏡子ちゃんに手を掴まれた。


「随分虫がいいと、思っているのでしょう?上山さん」


「……まあ、さっきまでされたことを考えると、ね」


「……謝りますわ、上山さんを試した事。ですから――その一つ目の贖罪に……安倍家の現最強の力で助けて差し上げます」


 左手から、ぐい、と気が抜かれていく感覚がする。うえ、気持ち悪いと思って鏡子ちゃんを見れば鏡子ちゃんの身を白銀の光が包んでいくのが見えた。それは地面に伝わり、ふわりと私達の前に立ち塞がった天后へと移っていく。


「――帰命し奉る、地を抱く者よ。産みし生きし産子に、加護をもたらす者よ。広く清めたまえ、広く清めたまえ、破砕したまえ――我が名、安倍鏡子に名を連ねし者の力を以て、縁ある悪を断ち切り給え――成就(ウン・シッチ)せよ」


「――承知」


 ――暁に満ちた屋内の一室に、白銀が蛍の灯のように舞う。一つ一つの粒子が照り輝きながらふわりふわりと宙を舞う――刹那、玄武が跳躍し私達を後ろへ下がらせた。引かれるまま後ろへ下がり、玄武が天后に合図を送れば――、


「……青いコート、妾からの餞別」


 一面が凍て付いた。


 寒さは感じない。恐らく玄武だ。先程から玄武の気がピリピリと張り詰めているのを感じる――揺らいではいけない、という緊張感でもある。その緊張感は恐らく鏡子を主とした私達を天后の術から護る事……邪魔にならないようにしよう。というか、握られた手に拘束されて場所を動けない。


「玄武の結界内に居れば天后からの攻撃は受けませんわ、ご安心を。後少しで全て片付きます」


「うん……ねえ、あれ、凍ってるの……?」


 ごくりと生唾を呑んだ視線の先には、動かないフードの男がいる。青白く肌を、服を、髪先を凍らせて文字通り青いコートを身に包んだ男は、抵抗する間もなく凍て付いた。


 天后は当たりに浮遊する浄化の白銀に己が力を捻じ込んで、性質を一変させた。爆発的に魔術式から異質な式を書き込まれた光たちは、一種の抵抗として生から負に転じようと働いてしまう。その一瞬のうちに、天后は私の身を焼いた炎の温度の無さからヒントを得て、白銀に温度を与えることに成功した――雪原を、作り出したのだ。瞬間の創造、いや、これは雪女に通じる現象?



「終わり、ですわね」


「――滅」


 大きな、そして丁寧に発音されたその言葉と共に、心地よい音を転がしながら、凍った男は真上から足で踏み潰された小さな玩具の様に粉々に砕け散った。


天后はその残骸を覗き込んで、此方へ頷きを以て終了を表した。「あ"~」という深い息を吐きながら床に座り込む玄武は、ようやく解ける結界に相当疲れたらしい。鏡子が先に行ってあの残骸を確認していたので、私もそちらへ続こうとした。けれど、腕をつかむ手がその行為を制してしまう。見上げた目線を合わせて語らない先生は、ただひたすら残骸を睨んでて。その険しい表情に生唾を飲んだそのとき――、


 私を叫ぶ声が鼓膜を揺らした。


「――上山さんっ!!」


「えっ、うぶっ」


 体を抱え込まれて地面に背中を打ち付けた。胸元に押し付けられて潰される頬の所為で言葉が発せれない。しかし、首筋を撫でる異様な感覚と、そのから這って体中を絡めとられた感覚に私は言葉に出ない悲鳴を上げた。


「――――――――――――――――――――――――!?」


 奥で聞こえる声に、もう返事もできない。





**






 残骸は、確かに残骸と化したのを確認しましたわ。そこに瘴気の漂いがあれど、生命を擬して肉体を形成する力は残っていませんでした。


 天后は確かにあやつの体を諸共に粉砕したのです。ですから、ですから鏡子は安心しました。


「泉さんの意識がないッ!!陰陽師、この負素を取り除いて!!」


「……あ、は、はい!直ちに!」


 瘴気の漂いは陽炎に同じ。移動するはずありません。まして、標的を定めて飛び移るなど――――。


 意識を完全に手放した上山さんを見下ろしながら鏡子は悪寒を感じえずにはいられませんでした。瘴気のどす黒い熱気に抱かれて、苦悶の表情を浮かべる上山さんは、


 一体、何者なのかと。

あ、危なかったぜ……。更新できない所だったぜ……。


ばいざうぇい 当方は夏休みに入りました。高校の時よりは遅い入りですが、高校の時より長い……わけじゃない!長いけど!他大学よりは短いんだよ!ちくせう!

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