風の都
「みぃ~~~なぁ~~~~とぉ~~~~~~!!!ひゃあああああ寒い寒いさむーーーい!!!!」
「飛べそう…今なら飛べそうだよね…ああああああ…何故だろうバレンが見える……」
「トトトトトルーカってこここんなにかかか風つよかかかかったっけ湊くっん!!」
泉、アスティン、実花、湊は今城下町へ降りる為に城の扉を出た所だった。突如四人を襲い来る冷気を含んだ突風――暴風に三人は身を固めガタガタと震えだすことに逆らえなかった。
「……良い風だな……」
「ど……」
ん?と湊が振り返る。
「どこがじゃ―――――っ!!!!!」
泉の叫びは、思いのほかよく通った。
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「何だ、寒いのはあそこだけなんじゃん……」
驚きの賑わいを見せている城下町の中心部。そこで有難く光合成をしている私達。嗚呼、神よ!温かいって素晴らしい!太陽って素晴らしい!
「晴れてるって素晴らしい!!」
「何だ?そんなに寒かったのか?」
「当たり前でしょ馬鹿湊!どうやったらあの風の中あちーぜ!とか言える訳!?」
「あちーぜとか言ってませーん」
「はああ……!?」
ぎりぎりと歯を噛み締める私をアスティンさんが宥めた。
「まあまあ泉さん。折角動けるようになったんだし、というか今日は遊びに来たんでしょう?楽しもう、ね?」
「……わかりました。湊!今日だけは見逃してあげる!」
「ははー、くわばらくわばら……」
「な、何なの…!?今日の湊なんかいつもよりうざいんですけど……!?」
「泉泉」
実花がちょいちょい、と耳を貸すよう手を招く。私はそれに大人しく従った。
「湊くんね、嬉しんだよ」
「嬉しい?」
「泉が元気で、嬉しいの」
にこりと実花が微笑んだ。私はそれに眉を寄せて湊を一瞥した――噛み合った視線に、湊が僅かに微笑んだ。「っ、」咄嗟に逸らした目と、高鳴った胸が苦しい。あ、あれ……?
ちっくしょう!今日は暑い!
「…うん、唐突だけど説明をしようかな。ここは西の都、名をトルーカと言うんだ。治める諸侯はリアラ=サルース…と前教えて貰ったと思うんだけど…」
「ああ、はい。そういえば前にそう教えて貰いましたね」
「ごめん…こちらの常識だと言う必要もなかったものだから言い忘れていたことが一つあってね…。城に、アルピリと言う男が居ただろう?」
「嗚呼……あの裸男」
「あれも実はここの諸侯」
「え!?」
「…驚いただろう?」
「いやいや。フライアさんは…はっきりと…いやいや…」
「…リアラ=サルース及びアルピリ=サルースは同一人物とされるんだよ」
「は!?」
「…無理もないよね。彼らは王の竜と呼ばれる尊き一人なんだ。…そんな顔で見ないでほしいな、本当に一人なんだよ……」
「…馬鹿にしてますか」
「えっ、いやいや!違うに決まってるよ!…わかった、わかった。きちんと説明するよ」
湊は実花をつれその場を離れた。アスティンさんと二人きりとなった私は目に入ったカフェのようなお店で話すことを提案した。
「泉さんの世界で竜、と言ったら何を思い浮かべるのかな」
「竜…ドラゴン。七つの玉を集めると願いを叶えてくれる」
「ああー……日本人だね」
「日本人だもん」
「愚問だったよ。回りくどいことは善そう。…素直に話すよ」
「初めからそうしてください」
「…承知しました。リアラ様とアルピリ様はどちらが眠ってる時にどちらかが活動するんだよ。逆を言えば、…そうだね、リアラ様が目覚めていらして…活動していたのならアルピリ様は姿はおろか目覚めさえしない。だから、一人」
「へえ、一日おきに仕事するんですね。効率がいいのか悪いのか」
「え?」
「はい?」
「ええと、そうじゃなくて…。大体500年くらいじゃなかったかな…」
「人は500年も起きていられません。死にます」
「わたしを含めてあの方達は人間じゃないよ!」
「……そうでした」
「…どうしたの?そんな思いつめた顔をして…」
「私、夢だと…思い逃げることを諦めたんです。痛いし、きついし、重いし、難しいし」
「……そうか」
アスティンさんは私の髪を撫でた。甘んじて受けることとする。
「はい!続き!」
「あ、ああ。……ふ、ふふ」
「何ですか」
「顔つきが……随分、戻ったな、って」
「何時に?」
「昔に」
「はあ?」
「ふふ、ふふふ…。――嬉しいなあ、あ、いや怒らないで下さいね?」
「……はァ?」
「ごほ、ごっほん!500年ごとにリアラ様とアルピリ様は活動を繰り返す、だから西の諸侯は一人。王の傍に侍る竜も一人…というわけなんだ。まあ、今はそれが狂ってしまって双方目覚めているんだけどね」
「それが…ここの常識、と?」
「うん」
私は足を組んで手を顎に当てた。
「それにしては――…みんな、随分落ち着いていますね?」
「それはそうだよ。お二人が同時に活動するようになってから既に時は経ちすぎているから」
「それってどのくらい――」
「はァァいお客さんお待ちどうっ!取れたての林檎のジュースだよ、お嬢ちゃんには丁度いいだろう。そこの優男の兄ちゃんにはこれかな?」
「わたしは頼んでは…」
「まけとくよ!」
「…ありがとうございます」
「いいーってもんよ!…嗚呼、それとお嬢ちゃんは最近生まれた子かい?なら知らなくたって罪じゃあないんだけどさ…この世界で、それを口にするのはよろしくないよ」
罪、それ?
「じゃあ、ごゆっくり~」
「……これお酒だ…」
「…ずず、…うま…」
「…竜は王のモノ、ここの民は竜の民。…デリケートな話題にはどこの領民よりも敏感なんだよ」
「ふうん…」
それから軽く小話をして私達は湊達を探しに外へ出た。なんという偶然だろうか?私達が外に出るとまるで鉢合わせの様に実花が名を読んで駆け寄ってきた。めでたく合流した私達は兼ねてからの目的――繁華街へ降った。
き、きいてくれ……バイトから帰って、ご飯食べて、実況見てたら・・・こんな時間だった・・・・・




