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推理

「リアラ様――!!…りあ、ら…様…?アスティン殿……?」


 息を切らせながら庵へと入ってきたのは数人の兵だった。全ての人の目は緑――。


「話す手間が惜しい、アルピリ様へと面会をお願いしたいんだ」

「はい。フライア様より速達が届いておりますので滞りなく。…どうぞ」

「あの!」


 実花が声をあげた。


「…すみません、急いでもらってもいいでしょうか…!」

「……畏まりました」


 一人の兵が頷くと皆、一斉に駆け出した。

 庵と言われる地下を抜けて地上へ。そこから屋敷へとみな駆け抜けていった。屋敷へ入ると導く兵士は独りになり、三人はその一人の後ろをひたすらについていった。


「――こちらです!」


 兵士が扉を開けるより先に、湊が見覚えのある扉を蹴破った。そこはある人物の個室。目覚めている間は、そこを私室としていた――。


「おやおや、随分はやいじゃないの」


 思慮深い眼差しに、深緑の瞳。見た目は若くはないものの快活に笑うその表情。リアラを対としたもう一頭の尊き王の竜。


「アルピリ……ほんとに起きて……」

「…あー、その話はあとな。俺っちに用があるってその嬢ちゃんか?…おやまあ……これはこれは」


 アルピリは興味深そうに湊に抱かれている泉を見ると、その瞳を和らげた。


「まだ赤子じゃアないか」

「今はそういうこと話してる場合じゃねぇんだよ!」

「まあまあそんなに急ぎなさんな、貸しな」


 湊から事も容易く泉を取り上げると、泉の頭がアルピリの胸に寄りかかるような抱き方へと変えた。すると、泉の苦悶の表情が僅かに和らいだように湊には見えた。


「嗚呼、本当だ。久しぶりだなあ、エリーシア嬢。ははは、懐かしいねェ、ちゃんと生きてるじゃアないか…」

「どれくらいかかる…」

「…三日もあれば十分だなア。お前さんの呪術が効いてるおかげだ、よくやったなァ…リアラ」

「そうか……泉は助かるんだな――よかった」


 湊は小さく息を吐くとそのまま近くにあった椅子へと座り込んだ。


「二度も…繰り返してたまるか…」

「……。部屋を用意する、俺達が出てくるまで若造共は休んで為さいよ。じゃ、俺は嬢ちゃんとすやすや寝てくるから」

「頼むアルピリ……!」

「へいへい。こっちの相棒は素直だねー」


 アルピリは去り際にそう言葉を残すと湊が蹴破ったままの扉から外へ出た。静かな…そして這うような魔力の揺らぎを壁際に感じ、す、と目で追う。


「…そういえば、お前さんは中に入ってこなかったなア?」

「…湊くんだけの方が、何かといいでしょ…」

「くく…顔は可愛く成ってんのに中身はそのまんまなのねおじさん萌えそう」

「……」

「え、そういう目でみちゃうの悲しいなァ」

「――泉を、よろしくお願いします」


 壁際から背を離し、実花は深く頭を下げた。その行為にアルピリは真摯に向き合うと「名に懸けて」と頷きその場を去った。


「…もう出てきていいよ、アスティンさん」

「はは、ありがとう…」


 物陰からアスティンが姿を現すと二人とも湊の元へ行くために扉を潜った。


「失礼します、お三方。お疲れの所まことに恐れ入りますが、お部屋の準備が整って御座います。……宜しいでしょうか?」

「はい。お願いします」

「それでは此方へ」




「じゃあ……わたしの推測で申し訳ないけれど、話してもいいかな」


 こくり、と二人は頷いた。

 細長い談話室を共有して、三人の個室は繋がっていた。だからこそ三人には都合が良い。


「事が始まったのはあの日……エリーシア様が亡くなったあの忌日の数日後だったよ。シリウス陛下の即位式が終わった真夜中…だったかなあ。スワードが急に下界へ降りたんだ。そして…何年も、何百年もスワードは此方へ帰ってこなかった」


「わたし達は下界を見放した身だから、容易くは降りれなくてね…ここに一つ目のわたしの推測…いいやこれは真実だろうね。スワードは下に堕ちたエリーシア様の魂を探しに行っていたに違いない。でも…」

「スワードは見つけることが出来なかったのか」

「そう。帰ってきたスワードの焦燥しきった顔は今でも思い出せるよ。いない…いない…と青い顔で何度もつぶやいて…そして地下に籠ってしまった。――嗚呼、そういえばその時だ。二人の愚者ナールの死体が水鏡に捨てられたのは」

「水鏡?」

「…そうか、湊くんと実花さんは知らなかったね。…エリーシア様の時にはなかったものだからね」

「水鏡って何なんですか?」

「うん。それはね……簡単に言うと、陛下の負担を減らす魔術だよ」

「浄化の負担ってことだよな?何でそこに愚者ナールの死体を入れたんだ?」

「水鏡は其れ単体ではただの水鏡だ。しかし…魔力を身に持つ者が中に入れば、水鏡はそれを喰らう獄塞に変わる。そして水は――シリウス、実花さんの支配下だよね」

「……はい」

「うん。…今の地球へ流れ込む負素、この世界の崩れ始めた理…見てわかる様に陛下の浄化が全く追いついてない。そして、陛下はもう浄化に身が絶える事ができない。そろそろ還る時期だろうね」

「何でシリウスは眠らない?」

「眠れないんだよ。…まあここは割愛させて。だから、陛下の浄化を補助する機能が必要になった。そして…わたし達グリームニルに下された命令があれを作る事だったんだ。わたしはその時ぶらぶらしてたから作るチームには加わってないんだけどね」


「…スワードが愚者ナールを水鏡へ投げ入れたあの日。陛下からスワードは城に呼ばれていたなあ。ま、あの日から始まった愚者の城送りから察するに……陛下の補助に役に立ったからこれからは愚者を水鏡に投げ入れろとでも言われたんだろうね。第一、こちら側に迷い込む愚者たちは皆魔力を持っているから」

「そしてね、同時に…愚者の二人が水鏡へ投げ込まれた同時にスワードが二人の子供を養子にした。想像がつくだろうね、それが彼女たちだ」

「きもちわりー位幼い頃のエリーシアに似てたな」

「…へえ、髪色と瞳の色、そして面影から何となくエリーシア様を連想したけど、やはりそうだったんだね」

「…あれは何だったの?」

「バレン。わたし達は彼女たちを総してバレンと呼んでいた――。わたし達の前に現れたのはミズナという個体名を何故か持っているバレンに、お姉さまと呼ばれていた"バレン"が主だよ。あの光景から察するに、他のバレン達は傀儡だろうな。"バレン”の魔術が揺らいだ瞬間に幻夢の術が解けて唯の人形に戻っていたし」

「ここからが本題だな」

「そうだね。前置きが長くなりすぎたかな…。"バレン"は、外見の他にエリーシア様によくにた魔力元素を持っていた。…君たちも感じなかったかな?…やはりそうだよね、わたしも奇妙に思ったよ。似すぎている、と。


 数多くのバレン達。そして…あのバレンから感じられたエリーシアに酷似した魔力…恐らくスワードは――エリーシア様を造ろうとしていたんじゃないかな?」


刀語を見てみようと思います

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