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盲目の夜曲(セレナーデ)

「…リアラ様、過ぎた事を申し上げます。あまりこの空間を続けているのはまずいかと」

「いえ、そうは思いません…が、忠告ありがとう。頭に入れておきますアレウス。ところで……」


 急に顎を上げられ、私は強制的に上を見ることとなった。緑色の瞳が、私の内部を探ろうと細められている。


「あなた、シリウスではありませんね?」


 ぽっかりと開いた眼が、淡々と真実を囁いた。


「あ、あの――」

「リアラ!何をしているんだ全く!」


 喧騒が時を取り戻した。それは、近づいてくる波に飲み込まれる直前まで気づかなかったように突然だった。瞳を閉じることを忘れ、笑みを消すことを忘れた彼らが再び動くことを迫られる。


「……嗚呼、スワード……ですか」

「何故いたずらに時を止めた?その力によるズレは最終的には陛下の負担になる、忘れたのか」

「……いいえ」

「……チッ、」


 私は目の前に現れたスワードに呆気を取られるも、すぐに俯いた。目を合わせることが怖かったのだ。


「それに仲良く手を繋いで――相変わらずの怖がり様だな、シリウス」

「――えっ、ちが」

「逃げないように拘束しているだけ。何か文句でもおありでしたら、どうぞ?幾らでも受けて立ちます……負ける要素は皆無」


 ちらりとスワードを見ると、その視線は既に私ではなく横に立つリアラに向けられていた。静かに目を細めて、鼻で笑い飛ばす。不毛だ、そう言わんばかりに「…竜は、争いを好まないんじゃなかったのか」と言い残した。

 そんなスワードに、嫌な奴……とそう僅かでも思ってしまった私に、私は驚いた。


「大丈夫ですか」


 向けられた慈悲深い瞳に、私も目を向ける。嗚呼、疲れた。どくどくと波打つ血液が頭にまで響く。嗚呼、……。アレウスさんは、こんな目を私に向けてくれるだろうか?

 ふらりと揺れた私の足元に素早く反応したアレウスさんが、声をつまらせながら私を支えた。「…!?シリウス様、まさか…」その後に続く言葉はもうわかっていた。違います、そう言おうとしたところで――。


  " 何度、幾度、誰に、誰かに……


 あなたは、違うと あなたは誰かを…


 シリウスではない そう、シリウスではない


 あなたは――エリーシアでもない


 そうでしょう? "


「エリーシア様!?」


 そうだ。私はシリウスなんて男じゃない。第一性別が違う。それにエリーシアでもない。


" それでも…お父様…スワードは無意識に…あなたにエリーシアを求めている "


 本当に…ああ、本当にそうなんだ。言葉の端に濁された意味は、無意識に孕んだ意味は…意図的に濁された回路に染みていく。そう振る舞うべきだと、そう考えるべきだと――。


" わたしたちは…お父様のために…あの子を…再び作り出す "


「シリウスを部屋に運びましょう。恐らく…近いのね」

「エリーシア様もそう思われますか……」

「ええ。ミズナ」

「は、はい!」


" 可愛いわたしの末妹……さあさ、お父様の為に…… "


 スワードの為に……。


" エリーシアに、なりましょう "




この章長いですね でもそろそろおわりますよ!

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