木から落ちて?
「う、-……ん」
おねえちゃーん!
とうるさい妹の声がする。気持ちよく眠ってる姉を起こすとは不躾な妹様だ。うわ、ベッドに入ってきたなこいつ……。やめて!まだあのゲームクリアしてないの!っていうかゲームするほど余裕ないの!ゲームするより溜まってる漫画を読みたいの!許して!
薄く目を開くと、太陽の木漏れ日が眩しい。ほら、こんな気持ちの良い朝に騒がしくするもんじゃ……。
するもんじゃ……。
「あ、おはよう泉さん」
誰だっけ、この人……。私のベッドに片膝をついて、なおかつ私の頭の横に手をついて私を見下ろす橙の瞳。
「うーん……まだ寝ぼけてるかなあ…?」
「…コスプレをしてるの?妹よ……」
「…面白い事を言うんだねえ、泉さん」
「……」
――――あ。あ、あ、ああああああ……。
「アアアアアアスティンさん!?ぎゃ――――――ッ!!」
「きゃ―――――!?」
二人揃えて朝から叫び合った。
**
「すみません…ほんとごめんなさい…」
「同じ過ちを二度……わたしとしたことが……」
「……朝食は、お取りになりますか?お嬢様」
正座した足が痛い。けれど、顔を上げることが出来ない。 上から降り注ぐブリザード視線が、私の首を固定していた。……あぁ怖い泣きそう!
私が悲鳴を上げた後、何処かで見たような感じにフライアさんが飛び込んできた。同じようにアスティンさんを蹴り飛ばすと、実花が遅れてやってきて私を抱きしめた。「このケダモノ!!泉に何しようとしてたの!!」と罵声をアスティンさんに飛ばして。…因みに誤解だ、と力説し終えるまで…アスティンさんは床に転がされてた。
「……ご飯…食べます……」
「わたしも――」
「アスティン様は、」
アスティンさんが顔を上げる音がする。横目で彼を見ると、ちょうど彼の動きが止まった。
「…これからこのフライアと御話で御座います」
嗚呼、きっと今すごく恐ろしい思いをしているに違いない!
「泉さぁん…!」
「あ、あ、えと、あの、湊は」
「湊様ならお部屋でお休みになっておられます。まだ動けませんので」
「…何かあったんですか?」
「えっとねぇー」
横の机で果物を食べていた実花が、笑いながら私に教えてくれた。
「湊くん、木登りしてて落ちちゃったんだよ」
「へ?」
その通りです、とフライアさんが頷く。
「…木登り?なんでまた?」
「うーん…俺に登れない木はない!とか言ってた」
「…湊って馬鹿なんだ…」
くすくすと、少し大人っぽい笑い方をした実花が私を見下ろしながら笑う。
「そうだね」
「でも心配だなあ…。動けないって、大丈夫なの?」
「切り傷と打撲かなあ」
「お見舞い……――してきます!」
怪我してる湊を口実に使ってしまうのは申し訳ないけど、そろそろ足も死ぬしここは逃げさせて頂こう!
あっ、と声をあげた二人に心の中であばよしながらドアへダッシュしたけど……随分と私の足は限界だったらしく。そのまま床をスライディングした。
……痛い。
「――ぶははははは!それで!こけたと!馬鹿だな泉!」
「しょーがないでしょ!?正座何てここ数年してないっての!」
「ぶひゃはははははははッ!!ひぃーっ」
こいつは本当にけが人なのだろうか。
確かに、顔やら腕やら色々処置が施されていてベッドに寝かされている。そこで本当に寝ていれば私も気遣う気にはなれただろう…でもいま湊は!身体は動かないけどお前を馬鹿にする心はウッキウッキです状態じゃん!!
「笑うなあほ湊ーっ!」
「うわおま、おれ怪我人!?」
体重を乗せない様に膝をずらして湊に襲い掛かった。体重を上手くずらせたから、痛くはないと思う。その証拠に、湊の顔色は変わらなかった。でもベッドに乗っかる時に何かを落としたみたいだ。軽めの金属音が一度鳴る。
「…何だこの鍵束は?」
「あ、これはスワードがくれたんだ」
「スワードが?」
「うん。暇だろうから、探検でもどうですかって」
「へえ…。いいじゃん、ソロプレイしてこいよ」
「ええ一人!?うー…ん…」
「嫌なら実花でも連れて行けばいいだろ?…あー、成程!そうか俺と一緒にいきたかっ」
「実花といってきまーす!」
「そうですか…」
私は逃げるようにベッドから降りて出口のドアへ向かう。…湊が急に変なこと言うから、顔を見られたくない。……あいつは昔から人の心を読むのが上手いから。
「んだよ、もう俺を捨てちゃうの?」
「元気な奴の心配はしない」
「酷いよぉ泉ちゃあん!」
私は唾を吐く動作をして部屋を出た。…出る間際にちらりと湊を見ると笑ってくれていた。それだけで安心する私がいるんだね。
アスティンとアレウスの名前をよく間違えます。あ、ちなみにアレウスさんも部屋でぐっどすりーぴー中です。すやあ




