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異 ごめんな

湊くんはアレウスさんを睨み、アレウスさんは湊くんを視界に入れず、巫はアレウスさんを見張っていた。……とても可笑しな構図だと思ったのはあたしだけじゃなかったらしく、女性が――……巫女がそっと溜息を吐いたのをあたしは聞き逃さなかった。

 じっとりと巫女が巫を見つめていることに気付いたのか、巫は顔を三度変化させると声を張り上げた。


「っっごっほん!お前と湊殿!何の為に此方へいらっしゃったのか、忘れたのか!」


 巫は腰に手を当て言い放つと、湊くんはくるりと振り返り……にやりと笑った。


「おーおーおー、巫ィ、身長はどれくらい伸びたのかな?」

「はあ……!?」


 下品な顔のまま巫に近づき、その頭に手を降ろす。すぐに弾かれたけれど、湊くんは表情を変えずに唯巫だけが狼狽えていた。

 ぎりりりり、と効果音が出そうな程歯を噛み締めていた巫を見かねてか、そっと近寄った巫女が巫の肩に手を添えた。


「申し訳ない、あまり巫を苛めてくださるな」

「はは、そんなつもりじゃねーよ?ただ俺はー、懐かしの巫くんがどれ程成長したのか楽しみでして」

「……随分とお変わりになられましたな」

「懐かしの?」


 あたしが漏らした疑問に湊くんは動作を止めた。少しの沈黙の後、湊くんはあたしを見て笑った。


「……実花だって、懐かしいだろ?」

「……何がなの?」

「何がって……そうだな、全てが」


 湊くんは俯いて頭を掻くと、勢いよく顔を上げた。その目つきは真剣そのものであり、それは湊がふざける気は一切ない、と宣言する代わりのモノでもあった。

 思わず手を握り締めてしまう。……「泉は俺達で守ろう」と幼い頃の湊くんが言った、あの目つきに。


 ――突然。あたしは肩を押された。

 どん、と押されよろけて数歩前に出る。そしてあたしを中心に、残りの四人が円を作った。


「ごめんな、本当はこんな荒療治……やっちゃ駄目なんだけど」

「げに。されど、致し方あるまいよ」

「罰は、終わった後にお受けいたします」

「……頑張れ!」

「え?何?何なの?……湊くん?」


 あたしはあまりの展開の速さに頭が追い付いていなかった。

 四人の足元から青い蛇の様な光が這ってくる。それは徐々に連なり円を為した。


「なに、いや、やだ怖い!」

 

 余りの恐怖にあたしはその場から逃げだそうとしたけれど……無理だった。突然金属の音が鳴った。――それは鎖だった。鈍色の鎖あたしの足を床に縫い付けて、離れることを封じた。

 ついバランスを崩してその場に倒れてしまう。


「実花様……!今、しばしの我慢を!」

「怖い怖い怖い怖い――!やめてよぉ!やだやだ!!」


 ぼろぼろと瞳から涙が零れる。それが、……最後の仕掛けだとも知らずにあたしは哭いた。

 既に完成していたその陣は最後の合図を待っていた。


「ほんと、ごめんな実花……。でも、俺達がしっかりしてないと駄目なんだ。俺だけじゃ、駄目なんだ」


 一段と強く発光した陣の全てがあたしの身体を這いずり始めた!


「い、いやあああああああっ!やだやだ取って!とっっ!」


 あまりの衝撃に、内側から込み上げる痛みにあたしは身を捩った。既に鎖は消え、あたしの身体をアレウスさんが抱いていた。


「このツケは高いぞサルース……!」

「はは、そんなこえー声で呪わないでくれよ、それに俺は湊だっつーの」

「同じだろう……!!この俺にこの様な真似をよくもさせてくれたな…!」

「しょうがないだろ、泉の為だし。それに、アンタも承諾したじゃねえの」

「――殺すぞ」

「わー、おっかない」


 引きづられていく意識の先に、誰かの声が響いている。


「……実花。お願いだ、早く戻ってきてくれ。泉を助けるには……やっぱりお前の……」


 

湊お前!!!!!!

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