金の糸
人物紹介を追加しています。キーキャラクターのイラストも載っていますので是非是非ご観覧下さい~‼
「宮殿、その中で」におきましては、挿絵を追加しております。
ですので、携帯からだとイラストが見難くなるかもしれませんがご了承ください。
"嗚呼、だから言ったのに"
頭の片隅で、スワードが苦笑した。
――怖い怖い怖い!
髪を口に巻き込んでは吐き出して、息を吸って、目側で走って、そして躓いて、また走った。僅かでもスピードを落とせば、この腕を背後から取られる気がした。
「お待ちくださいませ、グリームニル」
動悸が一気に激しくなった。しかしそれとは裏腹、あの男が追ってきていない事に安堵した。けれど、その安堵さへ一瞬に奪い取られる。……そう、目の前で佇み、微笑んだメイドさんによって。
逃げ口を断たれた私はメイドさんを僅かに睨んでしまった。それに対して、メイドさんは「あら」と笑みを深くするばかり。
「お待ちくださいませ」
誰が待つか。
私はくるりと振り返り踵を返そうと――。
「ええ、そうですわ。……ふふっ、グリームニルの門地である者がまさか陛下の御前にして逃げ出すなんて」
……もう一人が、私の背後でころころと笑った。
頭から血の気が引いて、ふらりと視界が揺れた。――限界だったのか、諦めたのか。私の足は気力を失い、その場に座り込んでしまった。それを見下ろす彼女たちは穏やかに笑う。
徐々に詰められる距離を見つめながら私は何度も自分に問いかけた。
もう走れないの?もう立てないの?
震える身体に鞭を打てるなら、誰か打って欲しい。
「あらあら……」
「陛下が御呼びで御座いますわ、グリームニル」
……アンス。そうだ、私には武器があるじゃないか。問題なのは一つ。私とメイドさん達の何方が速いか――――。
「あ、」
結局私が選んだのは、アンスではなく私自身。
いいや……、決して最後に信じられるのは自分というわけではない。
「うわああああああああああ―――――っ‼」
叫んだ。力一杯叫んで目を瞑って私は足に鞭を打ってメイドさんを突き飛ばして駆け出した!不意を突かれたメイドさんの片割れは可愛らしい悲鳴を上げて道を開けてしまう。
チャンス!次こそ止まれば倒れる、人形のように。なら早く走り抜けてしまおう!
「あら、あらあら……」
しかし、私の猛進は止められた。あっけない、うそでしょ。そんな言葉を並べる暇もなく私はその場に転げた。倒れる直前、私の瞳はしっかり金の髪を捉えていた。
倒れた私が見上げた先にいた少女。あどけない顔立ちが私の視線と織り交ざった時、少女は冷淡さを湛えた目を私に投げかけた。そして微笑んでしゃがみ込み、私と顔の距離を詰める少女は――つい先ほど、あの男に惨殺されたはずのあの少女……?
「駄目だよ」
「は……?」
「あなただけ逃げるなんて、そんなの許さない」
近くで止まった足音を合図に、少女は立ち上がった。
うゎ、メイドさんっょぃ