異 共闘Ⅱ
其は大罪が一つ、嫉妬 にて挿絵を追加しておりますー!そう、これを伝えたくて4/1を避けたのだ…………!
円卓の騎士が円に沿う。甲冑の紅の煌きと、各々の剣のぶれの無さ。シリウスを入れた12人に囲まれ、湊達は互いに背を預け合っていた。
「嗚呼……そうか。アンタが、スワードの人形だ」
シリウスは目を細めて口角を上げた。その事に神経を撫でられた間隔を味わったエリスは奥歯を強く噛み締めた。
「そんなこと――、」
円卓の騎士が息を殺す。走る戦慄に湊達も覚悟を決めた。
「―――――どうでもいい!!お前を玉座から引きずり降ろしてやるッ!!!!!!!」
エリスは一直線にシリウスの元へ飛び込んだ。
合図だ。円卓の騎士は一斉に円の中央へ飛び込んでいく。エリスはそれとすれ違うが、誰もエリスを阻まない。そう、シリウスとエリスだけが互いに刃を交え合わせ、エリスの衝撃で円の外へと弾かれる。
「―――うっ」
鏡子は心底で怯えてしまった。迫りくる刃の恐ろしさを実感させられた。一本だけならまだしも、確実な殺意と洗練された強さが何本も迫ってくる。勝てない……そう思った瞬間、負ける。
一つ一つの太刀筋が、重い。何とか防いでも、次の一手が早すぎる。身を固くしたとして、受ける痛みは軽減出来ない。受ける痛みに慣れてるといったとて、次へ次へ打ち込まれる度強さが桁違いに増していく。
実は、全員の騎士が動いている訳ではない。12人中、闘っているのは6人だけだ。どういう意図か、残りの6人は構えた位置から動いていない。それでも打ち込んでくるのは半数人。それも全て、最高位の騎士達。
「お久しぶりです、と言えてぼくは嬉しいのですが。――ねえ?」
「俺も嬉しいぜ、騎士ヨハネ……!」
円卓の騎士、序列二位のヨハネと湊が対峙する。
「女と非戦闘員に複数で畳みかけるのは騎士の矜持に半するんじゃねぇのか、円卓さんよォ!」
薙ぎ払う。――正義は、円卓の騎士に劣らない力を持つ女神だ。その力の気配に、アスティンを庇う鏡子達へ向けていた剣を二人が湊へ向けた。
「やっと死ねますね?嬉しいでしょう」
ヨハネは微笑む。招集される前に付けてきたと思われる血に濡れた顔で。
「残念だが俺は――ドラゴンだ」
湊がその言葉を放った直後、足元に緑色の稲妻が走った。それは湊、鏡子、アスティン、エリスを包み――全てのダメージを無に帰す。
鏡子は内心驚いたが、目を目の前の騎士から逸らすわけにもいかなかった。
「安倍さん、右だ!」
後ろにはアスティン様がいる。鏡子がここで、負けるわけにはいかない!
「――はい!」
光が右下で反射している。身体が先程より軽い。動く――動ける!
鏡子はくるりと舞い上がり空打った剣の軌道に降り立った。甲冑の騎士は、足を替えてまだ追撃を緩めない。
「天空!」
鏡子は敢えて騎士の懐に入り込んだ。騎士はそれに一瞬躊躇し、仰け反る。その一瞬こそ、最大の一手になりうる。鏡子は騎士が持つ剣の柄を掴むと、身体を捻じり背を向け、顎を蹴り込んだ。
アスティンはあまりの大胆な技に動けずにいた。蹴りを喰らった騎士も、まさかと思い剣を手放し後方へ倒れ込んでいく。
「円卓の騎士を……愚者が蹴り飛ばすだって……?」
無意識に呟いた言葉に、返す人は誰も――、否。
「小柄な良い剣ですわね。生憎……丸腰な少女を甚振るのは騎士の矜持に反するでしょうから、これは鏡子が貰ってあげます」
一人はその表情に自身を満たせ、立っていた。
対して、倒れ込んだ騎士が起き上がる。その頭の甲冑は、先程の蹴りにより吹き飛んだらしい。桃色の緩やかな曲線を描き柔らかく揺れる二つの髪が、露わに成った。
「――――やられちゃった。強いね、君」
アスティンは眼差しを険しくさせる。その一瞬の変化に鏡子は剣を構え、護符を頭上に投げた。
「女性……とは。驚きました」
「そうかな?性別なんてボクらには何の関係性も持たない。些細なことだよ」
女性騎士は立ち上がり、にこにこと笑っている。手にはもう獲物はない。だが女性騎士は生きている。泉は実花と戦っている。湊は騎士を引き連れてくれた――この女、どう出る?
「君は……愚者なのに強いね、ちょっとはボクを楽しませてくれるのかな……?――期待、してるね!」
消えた。
……消え、
「安倍さん‼」
鏡子は気づいたら地面を転がっていた。幸運にもこの場は広すぎるから、壁に当たる前に身を起き上がらせ、足で後ろに働いていた力を相殺する。先程騎士は――いない!?アスティンは捕捉出来た、けどさっきの女性騎士は一体どこに!?
「後ろだよ?――おねえ、さん」
甘い囁きと共に、背中に熱い一閃が迸る。白く反射した視界に、あの世界に残してきたある男の顔が浮かんだ。
鏡子は声も出せず、床に倒れ込み転がった。背後に立っていた女性騎士は、血濡れた槍の柄を地面に立たせ鏡子を見下ろすとその表情を曇らせる。
「あーあ。君も駄目かぁ……」
そして、
「グリームニル卿!顔、怖いよ?」
強張らせた表情の男、アスティンへ笑いながら駆け寄るのだ。
エリスとシリウスの戦況は、どちらかと言えばエリスが優勢と見える。しかし、エリスは未だシリウスに一太刀を浴びせることが出来ずにいた。シリウスは剣を弾くだけで、攻撃の姿勢を見せない。ただ無表情の瞳の奥に何を考えているのか……エリスはこの状況の打開策を模索していた。
「――ッ!アンス!もっと速く!もっと強く!」
シリウスが視線を定めた。首を執拗に狙う愚者を弾こうとそのまま引き寄せ後方へ押し出した。しかし愚者は人間の反応能力を超える動きで此方に何度も飛びかかってくるではないか。シリウスは愚者の魔力が欲しい。だから、此処に幸運にも集まった愚者たちを一人残らず捕獲したい。命さえ繋いでいるのなら、魔力の抽出に問題はない。……この女の動きを止めるか。
"――させない。そんなこと絶対にさせない!"
シリウスはやはり剣を弾くだけだ。何度も斬り込もうとするけれど、それを阻害する何かが居る以上、鮮血の報復に血を吸わせることが出来ない。
これでは唯の剣の稽古をなぞるだけだ。面白くもなんともない。シリウスにはやるべきことがある。これ以上、この城を壊されるのも汚されるのも困るだけなのだ。風の民が攻めて来た。しかし、この場にリアラもアルピリの姿も無い。――やはり愚かだ。こんな愚か者たちだらけなのだから、あんな結末も仕方がない。お前達がこんなにも愚かだから……俺は……手を下さなければならなくなる。
急に剣が止んだ。だからシリウスも構えを解いて、相手の出を伺うことにした。目の前の愚者は、何故か鋭い怨を此方にぶつけるかのような目をしている。やはり、愚者は愚者だ。目の前に立つ者が、お前達人間を造り、守り、育む者と知らない。知らないくせに全てを自分たちの所為にして、不幸から逃げようとする。何と愚かか。お前達を清らかに保つ為にこの身体は朽ちていくというのに。
「この剣では駄目ね。お前のその顔にさえ傷をつけることが出来ない。それもそうだわ」
愚者は何がおかしいのか、笑ってみせる。シリウスは理解できない会話に眉を顰める。
「だってわたしの型はスワードとシリウスに習ったのよ。アンスがスワード、わたしがシリウスに。剣はやめましょう」
「……何を言っている?」
エリスは剣を投げ捨てた。床に転がるアンスはその動きが制止する前に粒子の如く消え、エリスの首にかかる。戦闘の端で、二人の騎士が視線を投げた。
「わたしは、お前の剣でこの心臓を穿たれ死に絶えた」
シリウスは目を細めた。何度も繰り返された言葉だ。スワードが造る人形はその言葉を放てばまるで自分は本物だ、と錯覚するようにでも作られているのだろう。笑わせる。記憶は記録だ、植え付けるのは容易い。だが――記録と経験は違う。
「身体はあまりにも丈夫すぎて、一回や二回で止まりはしない。わたしが痛みに慣れていたから良かったものの、結構エグいことをしてくれたものよね」
エリスは己の心臓の位置に手を当て、服を握りつぶした。俯いているせいで隠れた目は、下を向いていない。ただ殺す――己を絶望という地獄に落とした目の前の彼を。
エリスにはもう、当初の目的は消えかけていた。
「だから……同じようにその心臓を、貫いてあげたかった。だけど無理ね!やっぱりお前はわたしの剣、強いわ」
「貴様の剣ではない」
定型文をなぞり、シリウスは剣を持ち直して上段に構える。
「いいえわたしの剣よ。――だからきちんと責任を取って、わたしが殺してやるッ!!我が身に湛えた穢れに精々喘ぐがいいわ、傲慢!」
エリスの周りに禍々しい黒い帯の様で、手の様で、触手の様な霧が、靄が、魔法陣が展開された。それら全てはこの城に漂う穢れを喰らい、一つに収束していく。穢れたちは何本も何本も手を伸ばし、エリスへ救いを求めた。その様を見た女性騎士は目を細め、アスティンは立ち上がり駆け寄ろうとする。しかしそれは女性騎士によって阻まれた。湊も気づき、叫びながら蹴散らしながら何が何でも駆け寄ろうとしていた。――しかし、騎士ヨハネが。
鏡子は動かない。
「……ヘレル、だと?」
あまりにも過剰な負にシリウスは鼻を塞ぐように片腕を眼前に持ち上げていた。目の前で交じり合い一つに成って行く負の塊に己の浄化能力の余りを探る。……この量を一気に持っていくのは少々……。全員を水鏡に落とせば……いけるか。
エリスがまるで悪人の様な笑みを浮かべた。その笑みを確かにシリウスは捉えた。――そして、その"鎌"は振り落された。
「――――っ!逃げるな!わたしを見ろ!わたしと戦え!お前は、わたしを殺したんだろう!」
今、この咎人に触れたくはない。シリウスの合図で二人の騎士がエリスに飛び込んだ。
「邪魔よ!」
エリスが放つ瘴気に騎士二人は身を震わせて、倒れた。濃すぎるのだ、負が、怨嗟が、想いが、全て。あの日から胸に溜めていた。一度は仕方ないと笑った結末だが、もう目を逸らせそうもない。悲しかったのだ、痛かったのだ、認めたくなかったのだ……――わたしは、あの日々を否定したくなかった。優しい雨粒の様な微笑みも、暖かい春風の様な微笑みも、白んだ明け方の清々しい笑みも……全て――大好きだったから……。
「――――もはや化け物だな。天の主の名の元に、葬ってやろう」
「――――面白い!女王の名は、お前に相応しくないのよ!」
"――――シリウス。お前に、支配者の名をあげる"
"お前が一番相応しいわ。……嗚呼、泣かないで。喜んでくれないの?シリウス――"
「お前に、相応しくなんか、ないッ!!」
一線一線が死線を引いている。間合いに入れば殺す。殺すまで永遠に線を引き続ける――必ず、必ず殺すために!
胸が痛い。既に心は波に呑まれたと言うのに、零す言葉が全て流れを逆らってわたしを刺す。違うのよ、シリウスを刺すために言っているのに、どうしてわたしを刺すの?痛くなんてない、辛くなんてない、わたしは――わたしは――。
「浄化する。――いい加減エリーシアを騙るのはやめろ、耳障りだ」
シリウスの刃が目前に入り込んだ。エリスは歯を食いしばり、後方へ跳ねようとする、が――その背後に、
「あははーっ!隙ありー!」
「なんっ…………あぁぁああああああぁあああああ!?」
赤い炎が、エリスの身を囲み炎上した。苦しい、熱い、痛い、痛い――!
湊はあまりの凄惨な状況に、騎士ヨハネを突き飛ばした。片足を付きながら、軽快なステップを刻むヨハネの顔は愉快にも吊り上がる。
「エリーシア!」
「違う。その女は、エリーシアを愚弄する人形だ!」
エリスの背後の女騎士と、目前のシリウスが同じ構えを取る。エリスには見えている。けれど、穢れを焼く炎の凄まじさに呼吸さえ儘ならない。穢れが、負が、その苦しみ故にエリスにしがみ付く。そしてそれはエリスを焼くに等しい効果をもたらしていた。
「湊くん!彼女の後方へ回ってくれないか!」
身を震わす絶叫の中で、湊は二度頷いた。こちらへ走ってくるヨハネを傍目に湊はアスティンが言った様に後方に陣取った。
アスティンは、騎士とシリウスが踏み込む瞬間に、その手を空に掲げ――叫んだ。
「――今門を開く!このままで終わらせない!」
一瞬の閃光と突風。だが、そんなもの目を眩ますことさえ出来ない。彼らは確実にエリスを射止めようとした足を止めなかった。だが湊の目には確かに見えていた。閃光と突風の中に躍り出た――、一人の女の姿を。
その姿は生まれた時から知っていた。その声は、生まれた時から耳にこびりついた。その意志は、幼い湊を揺さぶった。
竜はね、誰かを傷つける為に存在してるんじゃないの。癒すために、全ての傷を癒すために。
その言葉が、聞こえた。
そしてその姿は、エリスの唯一の活路へと昇華した。
風がエリスを攫い、二人は互いの剣をぶつけあうことになる。呑まれた息の一致に、女騎士の目が動いた。その動きはシリウスに察知されたが――、時間が掛りすぎた。
背後から貫かれた刃は、女騎士の首元で止まる。女騎士がシリウスの背後の……下を見ると、黒い瞳をどろどろしく滾らせた愚者と目があった。愚者は剣を深く押しこむと、にたりと笑みを刻んだ。
「さあ――浄化しなさい!穢れを全て流し込んであげるわ!」
「ぐあああああああああああああああ、あああああああああああああああああ!」
貫かれた刃を経由して、エリーシアは食べ肥やした負素を全てシリウスへ流し込もうとした。膨大な負素の搬入に、シリウスの身体が悲鳴をあげる。剣を抜こうとする思考さえ働かず、ただ王の役目のままに負素を浄化しようと勝手に体が反応していた。漏れ出た負素は女騎士に取りつき、女騎士も喉を詰まらせ倒れていく。シリウスは逃れようと剣をやっと掴めた、しかし、愚者は――。
「貴様ぁぁぁあああああ愚者の分際でぇぇええええぇえええええ!」
確かな怒りが、空気を揺らした。その狭間に突き刺したアンスが消える。
「あ、アンス!?何故!?―――うっ」
風と風がぶつかった。エリスは――リアラに抱えられ、後方へ飛び退く。対するシリウスを抱えていたのは――、
「……アルピリ」
「いやあ、すまないネ」
エリスの声にバツの悪そうにシリウスを抱きなおす男は、同じく王の竜であるアルピリだった。打ち込んだ風刃は確実にエリーシアを狙っていた。だからリアラが咄嗟に弾き返し、守りに入ったのだ。
「困るんだよ。……王様を、殺されるのはねェ……」
リアラは動いたエリーシアを強く抱きしめた。エリーシアは其れに構わず逃げ出そうとする。
「違う、違う違う!お前は、お前は――わたしの」
「俺っちは、シリウス=ミストレスの竜。エリーシア。竜は王の死に耐えられねェんだ」
「――湊!」
「……っ」
湊は苦しみを顕にして、エリーシアから視線を外した。そしてそのままエリーシアに歩み寄り、その暴走を抑えようと手を出した。
「落ち着けエリーシア!シリウスは気絶した、実花を――実花を取り戻さねぇと……」
言う言葉があの時を意味を湊に要約運び、鏡子を湊は振り返る。そしてすぐさまシリウスを見て、
「実花、実花……実花!アルピリ、その身体は、その体は、実花は無事なのか!?」
湊の動揺ぶりの背後に見えた人の姿。エリスはそれが誰だかわかった瞬間――、正気を取り戻した。そして己の手を見て、鏡子を見て、自分の身体を抱きしめ……リアラが抱きしめた。
「リアラ……リアラ……」
「……陛下、リアラは、ここに――」
抑揚の無い声にエリーシアは顔を上げた。同じように見つめるリアラの心の欠落に、エリーシアは黒い瞳に涙を浮かべる。その様子を見てリアラは首を緩やかに傾げながら笑った。
「……ありがとう。リアラ、鏡子を見てもらえるかしら」
「はい。承知致しました」
「アルピリ、今は一度剣を引きます。……実花を連れ戻すわ」
「そう、してくれるのかィ」
「――ええ。死人の怨讐に、あの子を道ずれにしたくはないの」
そして、一息吐いてエリーシアは周りを見渡した。膝を付くアスティンは、柔らかく笑い、剣を投げ捨てたヨハネは投降の意を示す。
「ヨハネ。倒れてる騎士を一か所に集めなさい」
「…………わかりましたよ」
疑惑を抱いたヨハネに四人の騎士を連れてこさせ、一人一人の傍に膝をついた。
彼らは全員息がある。ただ負素を身に潜らせたせいで、身体の支配権がずれているのだ。自分の負素は徐々に己の思考を黒く染めるが、他人の……しかも交じり合った穢れを身に入れるなど自殺行為にも等しいのだ。
「ごめんね……」
床に手をついたエリーシアは、目を閉じた。鏡子を治療していたリアラと、気を失ったシリウスを診ていた湊が一斉に振り返る。
「エリーシア!」
声だけでは彼女を止めることは出来ない――知っている。
負素は……穢れは少しずつ四人の身体から這い出て来た。次の救いを求めて周りを見渡し、彼女の存在に気付く。そして楽園を求める死者の様にその手を伸ばし、取りついた。エリーシアは目を瞑る。天界の騎士――それを人は神と呼ぶが、神でさえも倒れる負素を人の身体であるエリーシアが取り込むことは、即死を意味しても可笑しくはないのに混ざり合った加護と魂がその身体を瀬戸際で生かし続けている。先程までの執念で押さえていた穢れより少ない量なのに、激しい痛みに襲われることの可笑しさにエリーシアは手を離して笑った。
「少し休憩しませんか?……シリウスは奥へ隔離して、皆を出来れば休ませてあげたいのです」
「ふふふっ……ええ、そうね、そうしましょう。謁見間は無理だから……食堂の大広間に生きている人を集めて。――湊、お前は……」
「わかっている。見回って死んだ奴らを流れに還すぜ」
「お願いね」
エリーシアは立ち上がり、鏡子の下へと歩き出す。
シリウスは王権さえ手放してはいないが、敵の刃に倒れてしまった。その知らせは風の民に瞬く間に広がり、勝利の声を轟かせる。歓声は雨雲を呼び――、世界全土に雨粒を降らせた。
「雨は……恵みであり、悲劇の前兆であり、美しさの……」
鏡子を眠らせた一室の窓際で、空を見上げたエリーシアはリアラに手を取られ溜息を吐いた。血に濡れた身体をリアラが心配そうに触れる。束の間の静寂に微笑んだエリーシアは、その手を取って立ち上がった。
黒い髪も、黒い目も、傷付いた身体も、――血濡れた服も。
リアラは頭を下げて、奥へと誘う。
竜は、慈愛に満ちた生き物だ。
やっとここまでこれました。七章は後一つを投稿して終了です。ふひー……長かった……。湊くんはこの後、事切れた死体を輪廻の輪に乗せるお仕事をします。ユースティティアの能力ですね、一度バレン達にも使いました。通常、天界にいる神様達は眠ることで死を回避します。一度生まれたら基本は死にはしませんが、死んだ場合生まれ変わる為に一度、ある所に還るのです。
まー、エリーシア死んでるし、どうなることやら。ではでは、また次の回でお会いしましょう。
リベカ→バレン 普通に間違えた……。




