プロローグ
当時まだ若かった私は本当の恋愛を知らずにいた。
好きな人と付き合っても長くは続かず、遊びのような恋を何度も繰り返していた。
今回は違う!何度言ったことか。
長く続かない理由は当時のあたしにはわからなかった。
私の包容は大きな二重に小さい顔。
長い髪の毛は明るい茶色でパーマがかかっている。
化粧は濃いめで、スタイルもいい。
とちらかと言うとモテていた。
そのせいか恋愛の掛け引きは上手かった。
大学1年の春。
私は栄養士要請家庭の大学に進学した。
その頃の彼氏といえば、友達の紹介で出会った同じ大学の涼太。
私のことを大事にしてくれてたが私は涼太に飽きていた。
飽きた理由はたくさんあるが、涼太は私の芯の部分まで見てはくれなかった。
「あたし涼太と別れようかなー。」
「別れちゃいなよ。」
そう言ったのは小学校の時からの幼馴染の龍だった。
龍とは中学校の時に両想いだったが、付き合うことはなかった人。
金髪の髪に煙草を吹かせてポッケに手を突っ込んで歩く龍。
龍とは家が近くよく遊ぶ。
今回は地元中学の呑み会の帰りで家が近いから夜の街を一緒に歩いていた。
龍といろんな話しをした。
自然と話しが弾む。
中学校の時の話しや大学の話しからいろいろ。
龍の見た目は俗に言うヤンキーだ。
当時の私はそんな男が好きだった。
春の夜風がサァーっと吹いた。
すると龍が「凛めっちゃいい匂いする。」
龍は私の少し後ろを歩いている時だった。
「そお?煙草の匂いで消されてると思ってたけどなぁ。」と言うと、
「うんん、俺この匂い好き。いい匂いする女っていいよな。」
そう言って私を見つめた。
私は龍の事が中学の時から気になっていたから、恥ずかしくなって下を向いてしまった。
龍が何か言いたそうにしていた。
「凛、夜桜見ないか?」
「夜桜?龍が夜桜?なんか合わなーい。笑」
私が笑って龍の肩を叩いた。
「俺、夜桜好きなんだ。だから一緒に観よう!あそこのハチミツ公園の夜桜がライトアップされてて綺麗なんだ!」
そう言って龍は目をキラキラさせて言った。
「ラストアップされてるんだ…いいよ!」
私は始めて見る龍のキラキラした目に驚きをかくせなかった。
ふたりはしばらく歩いてハチミツ公園のベンチに並んで座った。
なぜだか距離が近く感じた。
ハチミツ公園の桜は綺麗にラストアップされてて、桜のピンクが夜では白に見えた。
夜空がバックになって白い桜が一際白く輝いて観えた。
ふたりは他愛もない話しをした。
少しして何気無く龍が今の彼氏、涼太の話しを振ってきた。
「今の彼氏と別れる気はないの?」
私は不意に振られた話しに驚いた。
「別れたいんだよねー。別にもう好きじゃないし。」
そう言うと龍が、「じゃあ俺と付き合お。」
急に言われたことに私は頭がついていかず、「ふぇ??」っと変な声が漏れてしまった。
すると龍が付け加えるように「俺、凛が好きなんだ。今の彼氏と別れて俺と付き合おう
。」
私は中学の時龍のことが好きだったから不意に今言われた言葉がうれしかった。
始めは理解できず、龍が言った言葉が後から後から私の胸を焼き締めた。
私は胸の熱さに思わず「…うん。」と言ってしまった。
すると龍のおっきな目が見開いて「マジで!?本当に俺と付き合ってくれるの?」
「うん。」
すると龍はいきなり立ち上がって、拳を握って万歳のポーズをして「しゃー!!!!」
と大声で叫んだ。
私は思わず「ぷぷぷっ。」と笑ってしまった。
龍は次の瞬間、私抱きしめた。
その反動で私は声にならない息が漏れた。
抱かれた龍の肩はがっちりしていて広かった。
龍は中学からずっと大学に入った今でも剣道をやっているから肩幅が広かった。
「凛、うんって言ってくれてありがと。俺、超うれしい。でも大学一緒の彼氏はどーするの?」
するとなぜだか自然に言葉が出てきた。
「龍のために別れるよ。」
龍は嬉しそうに、
「そっか。ゆっくりでいいからね。ありがとー♪」
龍は私を強く抱きしめた。
龍は私を放すと優しく唇を重ねてきた。
龍の柔らかい唇の熱が私の唇に伝わってきて胸がキュッとなった。
不意に舌が入ってきて舌から顔まで熱が伝わって顔が火照った。
幸せだった。
中学の時の想いが蘇ってきて中学以降の空白だったふたりの時間を埋めるように、ふたりは何度も何度も舌を絡めあった。
…もしこの時龍と付き合わなかったら、あんなにも私の心は傷つかなかったのかもしれない。
あんなにも泣くことはなかったかもしれない…
でも龍とつきあわなかったら今の幸せは知らなかったかもしれない。
今の幸せは無かったかもしれない…。