終章
◆◇◆
「…………ぷんすか。」
屋上から地面を見下ろして、呟いてみた。
「私、なにもしてないじゃないですか。いじめですか、仲間はずれですか?」
白陽陰名莉海が黒闇陽死色を揺すり起こして、粗蕋抄夜を背負って何処かに歩いていった。
きっと粗蕋抄夜の家に送っていくか自分の家に連れていくのだろう。
まあ、当然の処置だ。
「それにしてもですね、私の扱いが乱雑すぎます。」
ゲームは破綻、終わった。
つまり、私はなにもしないで終わった。
タカラモノも粗蕋抄夜が所持している。
「ちっくわです、舌打ちです。何をしてるんですか諸行雫は………。…………その未来も見えていたんだとしたらイラつきしか覚えませんが……。」
そうだとしたら、私は完全に駒として扱われた。
何か、仕返しをしたい気分。
「あっと………連絡をいれなくてはいけませんね……歌乾封磨と不明朗さんに。」
右側に置いてあったパソコンを操作して、歌乾封磨の番号にかける。
電話番号はずいぶん昔に貰った。
まだ、雅と敵対していた頃に本人を通じて貰った。
電話番号を変えていなきゃ繋がるはず………だが、繋がらない。
………………………あいつ。電話番号変えたくせして報告しなかったな。
「あー!もう!いかなくちゃいけないじゃないですか!」
私はパソコンをばたんと思い切り閉じて、仕舞い、立ち上がる。
「いらいらいらしますねぇ、今回は。皆、不幸になればいいのに!死んじまえばいいのにですっ!」
なんか、とても不愉快だ。
もうやだ、もうこんなことしばらくしない。
誰かに頼まれても断る。……金を積まれたら考える。
「…………それにしても、嫌な空気が充満しているのは確かですね……。なにかないといいですけど。桑原桑原。」
いや、剣呑剣呑か?
まあ、いいや、そんなこと。
◇◆◇
そういえば、あのあとどうなったのか詳しく聞いていないな、僕。
名莉海君がなにかしてくれたのかな……?何かしら平和な処置を施したのかな?
起きたときに名莉海君が近くにいてビックリしたけど。
きっと、心配していてくれたんだと思う。ありがとう。うん、ありがとう。
「で、なんで封磨君がいるの?」
「いまさら!かな!?」
「いや、何で今ごろ学校にいるはずの封磨君が僕の部屋いるのかとても摩訶不思議でさぁ」
そう、何故か僕は僕の部屋で封磨君とお茶を飲んでいる。(烏龍茶、おやつはぷりん。)
「来た瞬間にきいてほしいかな!?」
そんなこと言われても………家にせっかくわざわざ来てくれたのに、何でいるの?とかきいたら失礼じゃないか……?
「んで、何でいるの?」
「久しぶりと言いたいかな!」
「あ、挨拶してないね、久しぶり。でも、なんで僕が殺したはずの封磨君が生きているのか不思議だなぁ」
「いまさら!かな!それも今聞くかな!?」
「じゃあ、謎を解決しよう。うんうん、謎、いーちっ、何でいるの?」
「えっと、かな。黒が……」
「黒?」
えっと………兎だっけ?
名莉海君に無惨にも殺された兎ちゃん。
「黒が、しょーやんの所に行きたいと五月蝿いのかな。五月蝿いから引き取ってほしき、封磨。かな?」
「ほしき…………?」
なぜ、そんな口調。
黒は、生きていたのか……うん、良かった。動物(召喚獣?)だとしても死ぬのは嫌だから。良かった。
「って、え?引き取る?」
「ですか………」
「? そんなに簡単なことなの?それ……?」
「かな。ぼくがちょっと疲れるだけかな。兎位ならそんなにって感じかなかなかな。まぁ、頭にでも乗せておけばいいき。適当に扱っていいじゃき。かな。」
「土佐が流行ってるの?」
「かな?」
「………いいけど、僕が大切にするとか考えないで欲しいな。とだけ言っておく。」
「別にいいかな。死んだら帰ってくるかな。」
「やっぱ、そうなんだ。」
ということは死んでも行きかえる………ってことは?あれ?
……まあ、いいや。
今の僕には関係ないし。
「ねぇ、封磨君、あのあとどうなったの?」
「あのあと?かな?」
「僕が倒れたあと。」
「倒れたのかな!?だだだだだだだだだだだ――」
「大丈夫だよ。元気元気。」
封磨君、僕が倒れたの知らなかったんだ。まあ、あの場にはいなかったから知らなくても不思議ではないけど。
ということは僕が起きた次の日に来たのは偶然って事か?何かしらの情報で来たのかなって思ったけど気のせいか。
「ゲームの後かな?ぼくらはあのあと、空が来て「終わりました、帰れ、です」とかってイラつきぎみに言われたかな。それで不明朗君は誰かかで電話もらって帰っていって、ぼくは空と雅さんの所に帰ったかな。」
「そうなんだ。」
じゃあ名莉海君の方はどうなったか分からないってことだ。
カード使えば分からないこともないんだけど……今は使いたくない。どうなるか分からないから。
なんとなく、僕がタカラモノ持っているけど名莉海君が欲しいならくれてやってもいいんだよね………あると使い方がわからなくて迷惑って言うか何て言うか…。
ああ、渡そうとしたんだっけ?
なんか知らないけどカードのまま、丸い形にいつまでたっても戻らないし。
「ぼくが思うには、しょーやんが倒れたあと何かしらな会話があって名莉海んが連れて帰ったんじゃないかな?」
「なにかしらが知りたいんだけどねぇ」
「何!?お頭!?っていう会話かな?」
「吃驚だよ、それ。」
「何!?かしら!?って誰かが振り向いたのかもしれないかな。」
「いやいや、やるとしたら名莉海君ぐらいだよ。」
封磨君にきいても情報は得られないな。
それにしても殺したはずの封磨君となんか仲良くなってるけどいいのかな。封磨君、まさか暗殺とか考えてないだろうな?
「考えてないかな。」
「……おう………のう。」
「仕返しは好きじゃないかな。やり返すならもうやってるかな。」封磨君はプリンを一口食べてから続ける。「めった切りにして…特に心臓部、それで―――」
「いいです。いいです!仲直りしたいな!」
「え……無理。」
「かながないっ。」
「かな」
「いま!?」
「仲直りってぼくしたことないからわかんなっーい!かな。」
「女子高生……?……まあいいや。」
「そんな程度だったのかな?」
「うん。」
「…………かな……。」
「そーいえばさぁ」
「なになにかなかななにかなな」
「名莉海君ってなにか好きなものあったりする?」
「プリン。」
目の前にプリンがあるよっていうのを伝えようとしてるの?そうなの?封磨君。
「ん?」
「絶対プリンかな。あの人暇があればプリン食べたいなー、ナキ、プリン作ってくれないかなー、この時期に外でプリン作ったら凍るのかなー、プリンシャーベット……プリンプリン、て。」
「だれ、それ……。」
「白陽陰名莉海かな。」
「えぇ………。」
プリンシャーベット、プリンプリンって……なんか、こわい。
じゃあ、封磨君なんかに食べさせないで名莉海君にあげれば良かったな……。
作るか。
実は僕、プリンがあまり好きではなかったりする。カラメル?が嫌い。苦いし。
作るのは好きだけど甘いものは好きじゃない。あんまり食べなかったりする。
「じゃあ、今度作るか。」
「かなかな。」
「封磨君も食べる?」
「かなかな。」
「返答になってない………。」
「そうかな!」と封磨君は突然机を叩く。「雅さんにこれをきけと言われてたかな!」
「?」
「あれはなんのためにあったのか?」
「あれ…?」
「ゲームかな。」
「ああ…………。」
雫君が紅咲に依頼して、雪さんと名莉海君、死色、それに不明朗、諏訪さんに胡蝶さん、真下が巻き込まれた。
黙祷。
「あれは……僕のためだったんじゃないかな……。」
「かな?」
「色々と、迷惑かけちゃったな……名莉海君に。」
「名莉海君だけかな?」
「うん、名莉海君以外はどうでもいい。」
「かな………。」
封磨君は項垂れる。
そのまま机に顔面を打つ。
「帰るかな。」
「ばいばーい!」
「嬉しそうかなっ!?」
「気をつけてねー!」
「帰る!」
「頑張ってねー!」
「何をかな!?」
封磨君は立ち上がってお皿とコップを台所に持っていく。
地味にいいこだよな、封磨君って。
誰かにしつけられてるのかな?
「洗うかな?」
「いいです、いいです。」
「かな?」
封磨君はなぜか不思議そうな顔をしてから台所から帰ってきた。
「じゃあ、黒は後で郵メールで郵送するかな。」
「えぇ………。」
そんな、箱に包まれた兎なんて見たくない……。
「嘘かな。」
「てへぺろっていったら許してあげる。」
「てへぺろ☆かな!」
「☆がついた…………!」
「黒ー、黒、しょーやんが引き取るらしいかなーかなかななー。」
と、封磨君が訳がわからない呪文を唱えるとなにもいないところから黒い兎が表れた。
表れたって言うより、天井から降ってきた。
そう落ちてきたら僕の顔面に……落ち……た。
「ぼふっ………もふもふもふ?」
わー、もふもふしてるなぁー!……じゃなくて。
僕は黒をつかんで持ち上げ、地面におろす。すると、黒は僕の体をよじ登って肩に乗ってきた。
ピンク色の鼻がすんすんと動く。
「………僕の家ってペットいいのかな、そういえば。」
あー、でも兎って静かだし、それに見つかりそうになったら殺せばいいや。
「とんでもないことをすんなりと考えるのやめるかな!」
「じょーだんだよ(笑)」
「嘘つきかな!」
封磨君はふうっと息を吐いてからにやりと笑った。
封磨君がそんな笑い方をする日が来るとは思ってなかった。
「ぼくが出したやつらと、ぼくの脳が直結していることを忘れないでほしいかな」
「なっ……」
つまりそれは、監視されているのと同義では……?
早めに殺すしかないな。
「生物の命を無駄にするのかな?しょーやんはそんな酷いことするのかな?そんな人だと思ってなかったかな。」
「う……。」
「命を大切にかな。」
「う…。」
そりゃ、命は大切ですよ?しかしですね、それは少し種類が違うと言うかなんというか…。
「じゃあ、おじゃましたかな。」
封磨君が振り向いて、玄関へ向かおうとしたとき、ぴんぽーんとチャイムが鳴った。
「はいはーい!今出るかなー!」
「いや、僕の家………。」
封磨君が自分の家のように普通に扉をあける。(内開き)
「かな!」
扉は一気にあき、封磨君は倒れかける。
「あら?」
「…………え?」
「ここって聞いたんだけど、あなた抄夜じゃないわよね?夜の解説をしてくれそうな名前?」
扉から入ってきた人は封磨君を見ながらずかずかと玄関に上がり込んでくる。
僕には……気づいていない。
「えーと、抄夜の友達かしら?んー、でもあの子、友達出来るような子じゃないんだけどなぁ。」
「か、かな?」
「あ。」
目があった。
ぱっちりと、それはもう目は反らせないぐらいに。
「抄夜…?」
「……え?ああ、まあ。」
「なによ、他人礼儀もいいところねぇ、ムカつくわ。ほらほら、いつも通り呼びなさいよ。いつも通りに。」
「……ママ?」
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ねきつ
ねきつ×あまひらには実は深いふかーい訳がありますが、その辺は御自分でお考えください。
さて、こんな所までお読み頂きありがとうございました。文章やらなんやらで不快な思いをさせてしまった方、いらっしゃるかもしれません。私の勝手なひらめきで無理矢理あまひら。に書かせたのがjokerのはじまりです。ふたりともの小説紹介になっているといいです。
joker3でたぶん完結いたします。なにとぞよろしくおねがいします。。
あまひら。もよろしく。
あまひら。
ここまで読んでいただきありがとうございました。主に名莉海パートを担当させていただきましたあまひら。です。
名莉海くんと死色は(特に死色)はテンションのアップダウンが激しいうえに今回は雪という気まぐれで自由奔放なチートキャラがいたので好き勝手やらせました。
好き勝手やらせた結果があれです。許してくださいませ。
joker3には名莉海はもちろん、死色も出てきます(予定)。ぜひ読んでみてくださいませ。
コラボしていただいたねきつさん、次もどうぞよろしく。