7章
◆○◆
「うぉぉおお。さみぃぃ。」
どうもどうも。諸行雫です。
まさか、こっちの話で語り部するとは思ってなかったぜ。ぼくの話は暁人ちゃんの方だってーのに。こっちで語ったら抄夜とキャラ被ってるのばれるじゃん。
「それにしてもさぁ…。」
扉の方をみる。
「いつまでかくれてるんだよ……ばーか。さむいっつーの。」
空ちゃんだっけ?はずっと屋上を行き来してるから凄い。
ぼくはそれなりにトレーニングしてる(させられてるともいう。)からそれぐらいできると思うけど空ちゃんだっけは普通の女の子なんでしょ?
無理をしないで普通でいれば良かったのに。
ぼくは普通がうらやまだ。
「くくっ。ここは天界。お前たち悪魔に勝ち目はないんだよ。」
一歩間違えたらガンガンに問い合わせなければいけない台詞(てか、死神って呼ばれてるぼくに言われたくないだろう。)を吐いて偶然手元にあった銃を構えた。
ジェリコオートマチック。
「ばあん。」
「うわぉ!?」
死角になってるムカつく何かを撃ち抜いたら二人人が出てきた。
「あれ、歌乾……封磨君じゃん。生徒会のお仕事?」
「ひっひた隠しにしてた秘密情報を……!かな!」
「えっと……話すのははじめて。だっけ。妹は元気ぃ?」
「性格悪いかなっ!」
「封磨君は元気ぃ?」
「まっまて!その流れだとぼくが何者か分かってるみたいかな!」
「なんでもは知らないわよ。知ってることだけ。」
「……何かなそれ。」
「ちっ」
「どぇえ!かな!」
誰か漫画とか読んでる人いないかな。やっぱ会話するなら暁人だなぁ。
そろそろ妹(零)にも教えまくるか。
「ねぇあんたら、っていうか誰。お前。目の色違ってていい感じにキモいよ。」
とちっちゃい、メロンパンを食べてるやつが話しかけてきた。
ぼくは心に傷をおった。
「んー。ぼくは」偽るべきか偽らないべきか不明朗って頭いいんだよな。確か。「倶楽部の死神。だね。」
「倶楽部ぅ?はぁん。倶楽部ねぇ……もぐ。」不明朗はメロンパンを頬張る。「で、雇い主はあんた?」
「うん。」
「へぇ。あっそ。」
不明朗は飽きたと言わんばかりにメロンパンを食べ始める。
飽きたと言えばぼくはもうかなり飽きてるんだけど。
そろそろかえっていいかな。
「うーん、帰って暁人と遊ぼうかなぁ。」
「誰かな。どなたかな。」
「彼女。」
「ええぇえ!?彼女ぉ!?」
「え、傷を負った。」
心が抉られた。
ぼくだって付き合った人二人ぐらいいるよ。えっと………暁人ちゃんと暁人。あれ、同一人物。
でも、一人いるも!も?
「彼女………って倶楽部の人かな?」
「捜索不願いだね。そういうのきらーい。」
「かな?」
「ん?封磨君って読心術使えんじゃないの?あぁ、忘れてた。スノウだか雪だかか。」
抑えてるのか。
ぼくが超、脳ミソ使う力(笑)つまり、超能力使えたら解いてあげないこともないんだけど。
使えないものは仕方ないなぁ。残念。
別に探られていたい腹はないんだけど。
「ねー、封磨。封磨君。どうなの?いつも読めてるものが読めない気持ちは。」
「え……?読めないのはいいんじゃないかな。ぼくだって読みたくて読んでる訳じゃないかな。」
「そーゆーのじゃなくてさぁ、いつも読めてるのが読めない気分。いつも読めてる漢字が読めないムカつく。とかそんな感じなの?っていうかぼく、先輩。」
忘れてた。
「かな!?けっけけ敬語かな!?ですかな!?」
とんでもなく戸惑う封磨君だった。まぁ、かなにですをつけるのは難しいよな。かなを止めればいいんじゃね?
「よし、おもしろい。採用。で、封磨君。どうなの?」
「どうって言われてもですかなですかなで……かな。あれ、かな。気持ちが分からないと訳がわからないですかなですかなです……かな。いつも見えてるものが見えないっていうか、目の前が狭くかんじるですかなですか……。」
ですとかなが合わさってですか。になった。
「よくわからないなぁ。そういうの。」
「ですか……。」
「誰だよてめぇ。」
「かっかな!?ですかなですか?」
「……。ですかなですかってきかれても…。」
「きいてないかなですか!」
「……。」
もうワケわかんないぜ。
「ところで宝物どこだよ。かーんわきゅーだい。きょーみねー。漫画読みてぇー。」一拍おいて不明朗が叫んだ。「この魂の共鳴を!」
「さぁ!不明朗!魂の共鳴をしよう!」
「無理。」
「ぐぁっ。」
折角乗ってやったのに向こうにノリを放棄されたらきつい。精神に毀傷をきたす。
あー、もうどうでもよくなってきた。もー家に帰って暁人とキスでもしよう。
もしくは死のう。
「いやいや、困るかな。」
「タカラモノはね、食べちった。えへ。」
「きっ………も。」
「言うのをやめると思ったら溜めて言うのやめて!?」
「きも!」
「よし、ぼくは死んでくる。」
「ガンバレー。」
「いやいや、いやいやいやいや待つかなですかなですか!」
「歌乾封磨君!君だけがぼくの味方だ!一緒に死のう!」
ぼくは封磨君の手を引く。よし、飛び降りよう。
「む……無理かなですかなですか!のー!のーのー!のーまーくいえー!」
「は?何いってるの?突然どうしたの?くるったの?っていうかぼくに触らないでくれない?」
「掴んでるのは君かな!」
「流石に飽きたなぁ。」
ぼくは封磨君の手を離して考えるふりをする。
気分屋も堂にきた。
そして、封磨君敬語は?
「君たちそろそろ何をしにきたか教えてぐるない?」
「ぐるない?かなですかなです………かな?」
あぁあ、これではとある番組になってしまう。
「君たちそろそろ何をしにきたか教えてくれない?」
「いや、タカラモノ。かなでー。」
かなでってなんだよ。口癖で遊ぶなよ封磨君。
「うん。タカラモノ。」
「だから食べたって。」
「嘘はいいかなで!」
「何語だよ。タカラモノはマジでだよ。」
「え……?本当かな?」
「嘘ぴょん。」
いやぁ、人をからかうのがこんなに楽しいとは思ってなかったよ。暁人と出会ってよかった。
「……………。」
「タカラモノは、ここにあるよん。」
ぼくは、タカラモノを取り出す。
さっきから手にもってるんだけどさぁ。
「え?」
「この、オートマチック。タカラモノなんだ。」
「え………でも、かな。です。」
「タカラモノを使うと呪われる?理性を失う?だっけ?……こーんなの簡単だよ。使わなきゃいいんだ。」
「はぁあ?意味わかんねぇ。」
「最初っから狂っちまえばいいし、使わなきゃいい。意味わかんないだろーね。」
ぼくは手から銃を落とす。
ぼくの手から離れた瞬間銃はただの玉になる。そして、ごっと鈍い音をたててタカラモノは床に落ちる。
「まー、失敗するのは知ってたし。どうでもいいんだけどー。」
タカラモノを拾い上げるとタカラモノはまた形が変化する。
今度は対戦車用ライフル。
さーて、戦車は何処にあるんだろう。
「たーげっとおーん。抄夜。はっけーん。」
「えぇ?どこ?」
「向こう。」
「えーどこだよ。」
不明朗はそういってぼくからライフルを奪おうとする。
「どさくさに紛れてパクるなよ。使えるわけないだろーが犯罪者。」
「心はほっかりしてるぜ!」
「なに!?それ!」
「愚民の癖に!」
「愚民!?」
「ぼくに勝てるとおもっているのきゃ!」
「きゃ?」
「………もぐもぐ。」
「誤魔化した……。」
もし、あの文が勝てると思っているのか。だとしても、基本的な能力っていうか力はぼくとそんなに変わらないと思うぜ。
いこーるぼくが勝つ。
戦う未来はなかったからよくわかんないけど。
「んにゃ、で、どーすんの?別にぼくはれーくん?れーから奪い取ってもいいんだけど。」
「そうかなです。仲良くする必要はないかな。」
「何て言いつつ戦わない君たちはス・テ・キ。」
「かな?」
「そんな未来はないよ。そうだね、今から君達と抄夜んとこに行くかなぁ。ね、愁ちゃんも。」
そういって、フェンスの下を見る。(解放されてないからフェンスは低かったり。)
否、下にあるはずの教室の窓を見る。
「はぃい!?」
「やっほー愁ちゃーん。」
「かな?」
封磨君はぼくの横に立って下を見下ろす。
ひとつ言いたい。突き落としちゃダメかな?
「しょーちゃん、いちいち私を頼るのやめてくださいよ。いくら尺が伸びて困ってたりしてもワープとかしませんよ?」
「尺!?」
そんなもんあったの?
「それにですねースノウとのやつでかっこよく消えたんですから引っ張り出さないでくださいよ。便利屋じゃないんですから。ばーか。あ、間違えました。えへ、馬鹿ですね。はいはい……あーはいはいはいはい。今から行きますのでお待ちください。」
「はーい。」
そんなこんなで愁ちゃんを待つこと五分(何をしてたんだろうね。薔薇でも摘みに行ったのかな?)。
愁ちゃんがきたら取りあえず封磨君と不明朗を笑顔で放置して、飛んだ。
さっき、不明朗に場所示したしあの二人はぼくから多少遅れて到着するだろう。っていうかする。
「諸行さんがなにがしたいのかわかりませんね。解せません。」
「ん?」
「抄夜って言う人をどうしたいんですか。」
「あー、えーと、あれ、そうだ。」
「乗りませんよ。」
「なん……だと!」
「だから乗りませんって。で、なんでですか。」
「えーと、未来来があんまり嬉しくないんだ。」
「断片的にいうと?」
「死ぬ。」
「そうですかー。珍しいですね、未来未来を変えようとするなんて。気持ち悪いです。」
「そーだねぇ、気持ち悪いなぁ。全く気持ち悪い。未来なんてどーせ変わんないのに。」
「回復の見込みは?」
「なし。」
「じゃーご愁傷さまです。」
「まだはやいよん。」
「愁だけにご愁傷さまー。愁が傷を負ったです。」
「………。そうかい。」
んー、もーすぐ会うなぁ。
「愁ちゃん、ぼく行くね。」
「はい、でーす。」
ぼくは愁ちゃんに手を振って、抄夜達がいるとこに向かう。
「あれ、ゆっきーじゃん。」
無駄にとんで大変だなぁ。
そーだ、スノウを追えばいいのか。
スノウはぼくが後ろにいることに気づいているのかなぁ。うーん、愁ちゃんがなんかしたらしいけど。
気づいてたとしてもなにもしてこないなら気づいてないと同じだぬんってね。
のらりくらる。ん。
雪が地面に降りたって歩き始める。
「やぁっほーぉ。」
なんつー台詞だよ。ちょっと失望したぞぼく。
「えっ雪さん?」
「まだ死んでなかったか。よかったよかった。」
えっと、名莉海君だっけとゆきぃと抄夜かね。うーん。いつ声をかければいいんだろう。
雪めぼくの出番を奪いやがって。
名莉海君はなんか無駄にゆっせーを警戒してる。無駄に。
戦わねぇのになぁ。
「おい、雪。もし俺の邪魔をするつもりなら……。」
そう、名莉海君が言いかけた言葉をスノーは遮った。
「違うよ、僕は抄夜君を助けに来ただけ。名莉海君の邪魔をするつもりはない。」
「……どういうことだ?」
「それは―――」
ん、ぼくの出番だ。
「それはこういうことだよ。」
んー、こんなんかな。
別になにも考えてないわけじゃないよ。
「こんにちは。名莉海君、スノウ、そして……粗蕋抄夜。」
ひゅぅう!ぼく、かっけー!
◆◇◆
そう、満面の笑みで言ったのは雫君だった。
よくわからない銃を片手に持った雫君。銃刀法とかなかったけか………。レプリカならいいのかな。
「え?雫君?」
「やぁーほぉ、抄夜ちゃん。」
軽く手を雫がふる。
と、名莉海君は顔をひきつらせる。
えっと、雫君と名莉海君はあったことあったような気がするけど、仲悪かったっけ。
いや、それなりに良かったような。普通?
あれ以降にあったりしたのかな。もしくは名莉海君の情報をなにか得たか。
「偶然……じゃないよね。」
「うん。」
「じゃあ、なに?」
「やぁだなぁ!そんなに警戒しないでよぉ!れーくんれーくん!友達のれーくんだよ!」
「そう、だけど……。」
偶然じゃない出逢いってどういうこと。って言われたらつまり何かあってここにいる。
今の状況で考えると。
どうしても、雫君が紅咲に頼んだ人にしか思えない。
「んー、そろそろたどり着いて、えっと、この会話はしたくないね。じゃあこう言おう、ご名答。」
「へ?」
どゆこと?
「ぼくが依頼した。ぼくがタカラモノを持ってる。って事。」
「………。」
「やあやあ、なかなかリーダーがたどり着かないから来てみたんだよ。怪盗リーダー抄夜君。」
と、雫君が言うと雪さんは不思議そうな顔をした。
「あれ、そうだったんだ。」
「えっ。」
いや、そういうの元からきにしてなさそうだけど。というよりルール覚えてたんだ。
そんなルールまだあるのか知らないけど。
「それで、名莉海君だっけ?ルール違反だよ、多分。よくわかんないけど。」
「うるせーよ。」
「はっはー、元気がいいね。何か楽し………で、抄夜。タカラモノ欲しい?」
「……。」
タカラモノ。
呪われた球だっけ、宝玉みたいなやつなのかな。名莉海君は危ないものっていってたけど。
呪われるんだか。
知らないけど。
呪われてるならば僕はもう呪われてる。タロットカードに。
「いや、いらないよ。僕は。」
あげるなら僕以外の人にあげてくれ。
っていうか紅咲のところに持っていけ。
「そっかぁ。でもね、それじゃ駄目なんだよ。抄夜。未来はそう簡単に変わってくれない。」
「未来………?」
「そ。秘密、だけどね。どうなるかは。」
僕の未来とか言うものに何かあるのか?
「ねぇ、抄夜。タカラモノ。いる?」
「い………いらないって。」
「いる?」
「いらない。」
「いります?」
「いらないって。」
「いりませんか?」
「いりません。」
「いろうよ。」
「訳がわかんないよ……。」
「べー。だ。」
そんなことされても。困っちゃうなぁ。
「抄夜。ってね。」
「ん?」
「帰ろうぜ。」
「あー、そうだね。死色いるし。」
それでいいよ。
別に誰かが死ぬって訳じゃないし。僕が帰ったあとに好き勝手に奪い合ってくれれば。
その辺は殺し屋とかがね、やってくれれば。
「じゃ、僕はリタイアするよ。」
「ん。ダメだ。ダメダメ。全然だめ。」
僕はポケットからハンカチを取り出す。
紋章が入ったハンカチ。
「なにが。」
「未来が。」
「未来?」
「うん。」
にっこにこの笑顔の雫君。
僕は、雫君の笑顔が嫌い。
いや、笑顔じゃない雫君を見たことがないんだけど。ということは、きっと雫君の事が苦手なんだろうな。いや、嫌いなのかも知れない。
「……とにかく、僕はリタイアする。参加する意味もない。」
僕は、雫君にハンカチを渡そうと手を伸ばす。
どうして、僕は雫君にハンカチを渡そうとしたんだろう。全く、バカだなぁ。
「ん。」
と、雫君はハンカチをうけとるために手を伸ばしたのかと思ったら。
僕の手に銃を押し付けてきた。
「あ。」
と名莉海君だかがいった。
「これ、なに?」
そう、僕が言うと雫君は笑った。
「タ・カ・ラ・モ・ノ」
「え?」
雫君は銃から手を離す。
すると、銃は形状を変えて―――タロットカードに、なる。
成った。
僕のまわりは一瞬で火に包まれる。不思議と熱くない。
「えっと………。」
カードの名前はanger。
………いったい僕は何に憤怒の気持ちをいだいているんだろうか。両親?雫君?雪さん?それとも名莉海君?
んなわけないじゃんか。
言うならば、僕だよ。
自分がムカつく。嫌い大嫌い。
「………なるほど、でも僕がこのカード使えるわけないね。」
よくわかんないけど理解した。
炎は段々小さくなっていって、炎がなくなった頃には僕は倒れていた。
「…………。」
……なーんかい倒れるんだろ。
◇◇◇
「抄夜!」
倒れた抄夜を俺は受け止める。
「あーあ。もうちょっと上手く自然にやればいいのに。」
「えへ。ごめーんね、スノウくーん。」
何だ、雪のその反応……。まさか協力して抄夜を嵌めたなんてことは、ないよな?
抄夜を道に寝かしながら考える。
「じゃ、タカラモノは渡した。ぼくの仕事はこれで終わりぃ。ばーいばいっ。」
俺は矢を放った。それは諸行雫の腕を掠り、地面に落ちる。
「待てよ。そう簡単に帰らせるかっつーの。」
「………………。」
諸行雫は一瞬背筋が凍りつくような顔をした後、くすっと笑った。
「……何だよ。」
「す、とーっぷ。」
雪が俺と諸行雫の間に入って止める。
「雪……」
「僕は別に、あいつの味方ではないけど。かといって目の前で僕以外の人に殺されるっての、納得いかないんだ。」
「……は?」
「いや、まあ僕と名莉海君であいつを倒すってのもラストを飾るにはいいとは思うんだけど。僕、今愁たんのおかげで満足に超能力が使えないんだよ。」
「意味がわからないんだけど……。」
愁?誰だそれ。新手の敵か?
「それは私です、白陽陰名莉海さん。」
突然後ろから声がし、はっとして振り向くと、そこには見た目的に幼い少女が立っていた。
「諸行さんに怪我をさせたことは……見逃します。しかし次はありません。」
「…………。」
俺は矢を握る。
「名莉海君、愁は君じゃ無理だ。」
そんな俺を雪が止めた。愁は静かに諸行雫の方へ歩く。
「無理だって言われても……やらなきゃいけない時だってあるだろ……。」
「僕でも愁には勝てないのに名莉海君が敵うわけない。君が一番わかってると思うよ。」
わかってる。雪の言うとおりだ。だけど、勝てなくても、戦わないと駄目だ。
抄夜が起きた時にもし狂ってたら―――こいつのせい。でも、その時にはきっとこいつらは俺には見つけられない。
だったら今。
「名莉海君、何考えてるのか知らないけど、そういうの無駄死にって言うんだよ。命は間違っても……投げ捨てるものじゃあ、ないんだ。僕にこんなこと言われてもって感じだけど。言わせてるのは……君だよ。」
「そうです。スノウさんの言うとおりです。あなたが私達に勝てなくて死んで、抄夜さんが狂っていなかったら無駄死に。狂っていても無駄死にです。要するに無駄死にです。」
「…………。」
「じゃあ、名莉海君。友達になろうか。」
唐突に諸行雫は言った。
「なるわけねーだろ、お前なんかと。」
俺は答える。
諸行雫はそれに満足したように頷いた。
「じゃ、ばいばい。皆さん。」
俺は動かなかった。動こうとすれば動けたけれど、それをしなかった。
一瞬で諸行雫と愁はその場からいなくなった。超能力という奴だろう。
「……名莉海君、あのさ。」
雪が言いかけた時、電話の音が遮った。
「…………うわ。」
携帯電話の画面を見て雪は顔をしかめた。
「出れば。」
「出たくねえんだが……。」
そんなことを言いつつ電話に出る雪。
「……あーはいはい、帰る帰る。すいませんね。え?何もしてないよ。……気のせいだよ、じゃあね。」
どうやら電話は終わったようだ。雪は携帯電話をポケットにしまい、ため息をついた。
「僕がいる組織のさー、同僚?いや、仲間か。仲間に『早く帰ってこい、お前絶対誰か殺したよな?さっき情報が入ってきたぞ。』とか言われた」
「声音変えるなよ……ってね…。」
第一俺、その人知らないし。
「で?」
「うん、僕帰る。最後までいても良かったんだけどさ。」
そうか、とだけ俺は言った。
とりあえず、抄夜を家まで運ばないと。死色はたぶん、ひっぱたけば起きるだろうし。
「じゃあ、またね、名莉海君。」
「もう会いたくねえけどな……。」
ひらひらと手を振って、雪は歩いて何処かに行った。そういえば愁のせいで自由に使えないとか言っていたっけ。
俺は意識のない抄夜と死色と、その場に取り残される。
結局、今回の件は何だったのか。タカラモノを抄夜に渡して、何がしたかったのか。
抄夜を狂わせるためじゃないんだとは思う。
諸行雫は、抄夜に何かを自覚させたかった。目覚めさせたかった―――とか?
何にせよ、すっきりとしない、はっきりとしない終わり方なのは言わずもがなであって、俺はひとつ、ため息をつく。
「……帰るか……。」
封磨を待つ必要もない。きっとそのうち、下らないゲームが終わったことにも気づくだろう。
俺は抄夜を背負い、死色を起こしてから、抄夜の家へ向かった。




