2章
「……出来れば会いたくなかったかな。しょうやん。」
僕らが全員座ったところで封磨君は言った。
「………あれ……うん。久しぶり。」
「知り合い?」
と隣に座ってた名莉海君がきいてきた。
「知り合い……っていうか、湖ちゃんのお兄さん。」
「湖?………歌乾湖だっけ?」
「うん……。」
ぐさってさして、ぼぉおって燃やしていえーいって殺したんだけどなぁ。
あれで、死なないとかありえるのかな………。
「まー、込み合う話もあるでしょうけど、一日は短いですのでちゃちゃっと進めちゃいましょう。」
「………。」
「えっと、右から抄夜さん、名莉海さん、死色さん、雪さん、諏訪さん、封磨さん、真下さん、胡蝶さんです。今から4、4のチームにわかれていただきます。えっとですね警察チームが名莉海さん、死色さん、諏訪さん、胡蝶さんでして、怪盗チームが、抄夜さん、ゆっきーさん、封磨さん、真下さんです。」
「ちょっと待って。怪盗とか警察ってなに?」
「鬼ごっこです。」
「へ?」
鬼ごっこ?
子供たちが遊ぶやつ?
「それも、殺しあいです。怪盗チームの皆さんには海神中学校に向かってもらいます。そこにあるタカラモノをとって私の所へ持ってきてください。警察チームはそれを阻止して下さい。」
「怪盗ゲームみたいなもの?」
「はい。皆さんにハンカチを配るので、怪盗ゲームは青いハンカチ、警察チームは白いハンカチをとってください。」
そういって紅咲は鞄からハンカチを取り出して、左へ回す。
だれも文句を言わないのはなんでだろう。鬼ごっこなんてふざけた真似を。
金か?
なにかあるのか?紅咲のバックに大きな組織が。
「ハンカチをとられたら負けです。ハンカチを自主的に出すとリタイアになります。つまり、ハンカチを出さなければ殺されるまで有効です。怪盗チームはリーダーを決めておいて下さい。怪盗チームはリーダーが負けたら負けです。警察チームは怪盗チームのリーダーが私にタカラモノ渡されたら負けです。」
タカラモノってなんだろうか。
大切なものなのか。
そして、このゲームをやる意味がわからない。全くもって理解が出来ない。
紅咲は続けてしゃべる。
「それに、狩人という人を一人雇いました。先に見つけたかたがお好きにお使いください。戦闘能力は低いですが、それなりに使えます。それにゲームマスターが存在します。ルール違反等をされた場合は殺しにいきますのでご注意あれ。―――やめたいかたはいらっしゃいませんか?途中で抜けるのもルール違反です。いかがですか。」
誰も何も言わなかった。
皆、そっち側のひとなのか?
クライアントは―――だれ?
何を目的に。
「では、ゲームを始めさせていただきたいと思います。知っていると思いますが今日は平日ですので学校はやっております。学校に侵入する際はご注意あれ。では、ゆっきーさん。」
「………ん?あれ?ごめん寝てた。」
「………。抄夜さんと、封磨さん、真下さん、それにご自分を江津中学校の屋上にとばしてください。」
「んー。よくわかんないけどおっけー。」
問答無用で、僕はゲームに巻き込まれたみたいだな。
「では、出発は両チーム10分後というわけで。楽しみにしていますよ。ふふっ。」
◇◇◇
雪や抄夜達がどういう原理か知らないがいなくなった後、空も席を外し、俺と死色、それと諏訪と胡蝶という人はマックに残された。
何とも言えない空気が流れる中、死色は気にせずにアイスを食べている。
やっぱり抄夜とは敵になったか……雪とも。
予想はしてた。いや、俺の能力的には、どこかで分かっていたのかもしれない。
ただ、どうも腑に落ちない。
誰が仕組んだことなのか。何故俺達と抄夜達を別々にしたのか。知らない奴とチームを組まされるなんて、全く信用できない。
まず抄夜は人を殺せるのか?殺したことはあると聞いた。でも、俺や死色を……殺せるのか?
諏訪や胡蝶は何者なのかさっぱりだけど、俺達はプロの殺し屋だ。
死色なんか手加減しそうにないぞ?
降りたいのは山々。だけどさっきは何も言わなかった。
それはこの任務を受けたのが俺自身じゃないからなんだけど。
「……ところではじめまして、名莉海君。」
沈黙を破り、諏訪という奴が口を開いた。
「……はじめまして。」
「僕は諏訪……。なんて言えばいいのかな?斧使いとでも、言っておこうか。」
斧使い……ね。
「そんな警戒しないで欲しい。同じチームなんだ。君達を攻撃したりなんてしない。」
「警戒しないってのは無理な話だな。俺は職業柄、初対面の奴は警戒しちまうんだよ。しかも今回は相手との殺し合いと来てる。」
前回は違った。死色が抄夜を助けろって言ったから、それなりに悪い奴じゃあないってわかっているから行った。
「そう……。まあ、仕方がないね。君はどんな職業なんだい?」
「……殺し屋とだけ言おう。」
そうかい、と諏訪は頷いた。
「こっちのちっちゃい子も?」
今度は胡蝶が話す。俺は頷いた。
「ふうん。あたしは胡蝶。操蝶士。」
「操蝶士?」
聞いたことないな……。
「名前の通り、蝶を操るの。」
胡蝶が手を握り、そして開くと羽が鮮やかな青の蝶が現れ、店内を羽ばたいた。
「今の蝶はモルフォ蝶。綺麗でしょう?」
「……どうも、嘘じゃないらしいな。」
嘘じゃない、が。
「そんな蝶なんてので戦えんの?ってね。」
「馬鹿にしないで。戦えないなら参加しないわ。」
「あっそ。ならいいけどな。」
俺は死色を一瞥し、視線を二人に戻した。
「一応言っておくと俺は弓使い。こっちの……死色は剣で戦う。」
「でし?」
死色はアイスを食べ終わり、不思議そうに首を傾げた。これは後で説明し直さないとならないだろうな……。
「ところで、諏訪と……胡蝶は自分から参加したのか?このゲーム……鬼ごっこに。」
「そうだよ。」
「あたしもそう。……名莉海、あなたは違うの?」
「まあな。じゃあタカラモノってのが何か、知ってたり?」
二人は頷く。
ということはこいつらの目的は……タカラモノか。なるほどな。
「タカラモノってのは何だ?」
それによっては、参加の仕方ってのが変わる。
真面目にやるのか、やらないのか。
「それは―――」
諏訪の言葉に、俺は。
「…………抄夜、悪い。」
全力で、お前に敵対しよう。
小さく呟いた。
◇◆◇
雪さんが、ワープらしきものをして、とんでいったのは確かに江津中学の屋上だった。
たまに、侵入するからわかる。
雪さんはやっぱり超能力の分類なんだろうなぁ。
「で、リーダーどうするのかな?」
「リーダーねぇ…。」
封磨君が口を開いたので返事を返してみたらすごく冷たい目で見られた。
そりゃそうだ。いっかい殺してるんだから。
「自己紹介したほうがいいのかな……こういうのって。」
「真下とかいうのにはしたほうがいいんじゃないかな。」
どこみてるんだかわからない真下ちゃんを指差して封磨君は言う。
ついでに容姿は、黒くて波うってる髪に赤い目。ゴスロリとかいう服を着ている。そして、黒い剣。
「そーだね。はじめましてだし。封磨くん雪さんしらないでしょ?」
「いや、噂なら聞いたことあるかな。」
「へぇ、有名なんだやっぱ。」
「有名って言うか……。」
うん。と曖昧にぼかす封磨君。
「まぁ、10分しかないし、自己紹介済ませるべきかな。」
「そうだね。」
軽く声をかけるとすぐに集まった。
チームワークはまずまず。悪くはない。
「まず、僕。粗蕋抄夜。タロットカード遣い。」
「……タロットぉ?」
と真下が突っ込んでくる。
「タロットカードを使ってえっと……色々する。挟まってるものをとったり……?」
我ながら訳がわからない。
「ぼくは、歌乾封磨。召喚士。」
召喚士?
色々出せるやつか?ドラゴンとか、えっとモンスターとか?
「……んっとー…ましたはぁー剣士かなぁ?でもぉ…………刃物ならなんでもおっけぇ!」
「フルネームは?」
「えぇ……!?そぉんなこときいちゃうのぉー?のらりくらり、中心真下でぇーすぅ。」
もう、しゃべりたくないって思った。基本は無視しよう。こいつとは絶対に行動しない。
「ええっと、僕は、ゆっきーとかセツとか雪とかスノウとかおのぼりさんとか好きに呼んでいいよー!多分、超能力使える。多分。」
「……はぁ。」
おのぼりさんって田舎から来たのかよ。
「ましたさぁ…………珍しくぅ思うんだけど……のらりくらり、チームバランス悪悪だよねぇ、子供多っ!?みたいな感じだしぃ………向こうは大人ばっかじゃんー。ねぇ……。」
「それはわかるかな。」
たしかに、胡蝶さんとか諏訪さんとか僕よりあきらか年上か。
封磨君は背が低いし、(中2かな?)、真下は死色に負けないぐらい小さい。いや、死色のほうが小さいけど。僕は、それなり。
まともな身長してるのは雪さんだけだもんな。雪さんって女?男?あれ?
「こっちは頭脳戦でいこう。」
「まってぇ、今、神だすぅ、ん?」
と真下がいって小さいめのメモ帳を取り出して、眼鏡をかける。
「眼鏡なんだ。」
「んー?ん。」
肯定らしい。
「まず、狩人を捕まえよう。僕たちは。向こうはきっとそんなこと考えてない。戦闘力がない?だから?役立つなら見つける。」
「まぁ、いいんじゃないかな。異論はない。」
「向こうの能力は知っておいた方がいい……のらりくらり。ね。」
「そうだね。名莉海君と死色……えっと僕らときた小さいのとかっこいい人。死色は剣士っていうか狂剣士。鎌もつかうかもしれない。名莉海君は、弓。接近戦も得意だったと思う。他は?」
「まってねぇ、」真下はペンでひたすら書いていた手を止めて、メモ帳を数ページめくる。「名莉海ーあーいうえおー特に役に立たなそうな能力持ってるぅ、自衛にしかならないくだらないやつぅ。くすくす…。」
「なにそれ?」
「知らなくてもぉいいかなーなんて関係ないもーのらりくらり。」
「ふうん?」
初耳だな。
名莉海君からそんなものきいたことない。し、見たこともない。なんだろう。
「胡蝶は噂にきいたことがあるかな。蝶つかい。風の噂によればかな。」
「あってるよんー。のらくらーのらりくらりー、蝶遣い、毒やらなんやらつかってくるいやぁああなやつだよーん。ついでに諏訪は、斧、斧斧斧おのぅ。こいつばかりは情報がふ――のらりくらりだからねぇ、しらないよーん。」
「ふうん……。」
僕がどうにかできそうな相手がいないな。全然。
やることなさそー。
「チームでいくか、2、2で。それで、どっちかが討伐隊、どっちかがタカラモノ隊。」
「悪くないねぇ…………いいよいいよぉ。」
「じゃあ、チームは、僕と雪さん?と封磨君と真下?」
「ん。」
と今まで興味無さそうにしていた雪さんが口を挟んだ。
「悪くないけど、僕やるきないから自衛できる人がいいよ。守る気ないし。」
「じゃあん、ましたとゆっきーで君たちでいい?よねぇ?」
「……え。」
「…………。」
僕と封磨君……。
ちょっとチームワークが。
「リーダーはハンカチに紋章がついてる人ねぇ、きゃはははははっ!ゆっきーいこーねぇ。ワープよろしくぅのらりくらり。」
封磨君が僕と自分のハンカチを見比べて絶句したような顔をする。
「かな。まさかかな。ありえないかな。かなかなかなかなかなかなかなかなかなかな。」
「……。」
まぁ、それぐらいは覚悟していた。
僕らがタカラモノ隊。
しょうがない、タカラモノとやらをとりにいくかぁ。
「………。」
「あん……それとぉ、抄夜……くすくすっ友達ならぁ……情報は無闇に教えない方が……いいよ?じゃあばいばーい!」
振り向いたときには雪さんと真下はいなかった。
◇◆◆
「んーとぉまずどぉしよっか?のらりくらり。」
中心真下とかいうやつがのらりくらりと言った。
「そうだな、討伐隊ってことは何か討伐しなきゃいけないんでしょ?」
「うんうん。討伐するよ、のらりくらり。」
「じゃあまず君を討伐する?」
はぁ?と真下は言った。そりゃそうだ。
「冗談だよ。」
「だよねぇ。」
のらりくらり。
半分冗談、半分本当。ま、仲間を減らしてもね。
僕もこの暇つぶしを楽しまなくちゃ。
「んんー、ゆっきーはさぁ。」
「ん?」
「人殺したことあるぅ?」
何だそりゃ。
「ご想像にお任せするよ。」
ないとは言わない。あるとも言わないでおこう。
「んじゃあ殺したってことでぇ。何歳?」
質問コーナーですか?
「23歳だけど。」
これは真実。大真面目。年偽っても意味ないし。
「えっ。」
「え?」
驚かれた?
「大人なの!!?」
「子供だと思われてたの!?」
「18歳くらいだと思ってたぁ!のらりくらりぃ!!」
「若ぇなおい!」
何年前だよ!五年前!うわーお懐かしい!
じゃねえよ。
僕童顔なのかな……。ちょっと傷つく。
抄夜君にもそれくらいに思われてるのだろうか。
「いやぁ、見た目じゃわからないもんですねぇのらり。」
「くらり。」
意外にいいコンビ?
いや、ごめんだな。僕はまだ狂ってない(棒読み)。
「ねえねえ、さっき封磨が言ってた……というかぁ誤魔化してたことってなぁに?」
「誤魔化してた?」
「有名っていうかぁ……もごもご。みたいな?のらりくらりぃ。」
「ああ、それの話ね。さあ、何のことだろう。」
物情騒然だった(らしい)セツ=僕なんだけど、そこまで有名かなあ。僕自身必死だったというかね。世間のことなんてさっぱりだったな。
「ん?だから僕怪盗チームなのかな。」
「はい?」
「いや、何でもない。」
そりゃまあ、何というか、ご苦労様ですだな。いちいち僕なんかの情報も調べてるのかな、空ちゃん。
時間の無駄遣いというやつだね。まじうけるぅー。
……ちょっとふざけすぎか。
「てゆーか、海神中学ってどこかなぁ、のらりくらり。」
「……確かにどこだろうね。」
よく考えたら僕、ここら辺の地理を全く知らない。瞬間移動でしか移動してなかったからなぁ……。
やっぱり狩人とかいうやつ、探すか。
「ん?」
また電話かよ。多いな今日。大人気ゆっきーだな。
「電話ぁ?のらり。」
「くらり。」
言って電話に出る。
『もしもし、こちら諸行愁です。そちらはスノウさんですね?』
「…………。」
切っていいかな?いいかなあ。
「えいっ。」
ぶちっ。
切った。真下が不思議そうに首を傾げる。
僕、諸行愁は世界で二番目に大っ嫌いなんだ。ちなみに一番は諸行雫。嫌いなやつからしか電話が来ないなんて。
『もしもし。』
「繋いでねぇのに……。」
無理やり繋ぎやがったな。そもそも本当は繋がっていないために、こちらは切ることもできない。
『用件はひとつ。超能力を無闇に使うな。浮かれてるんじゃねえ、です。』
「…………。」
無闇じゃなきゃいいんですね。わかりましたよ。
一方通行な電話は切れ、僕は携帯をポケットにしまう。
「なんだったのぉ?らりくらり。」
「間違い電話。」
「ふぅーん。」
嘘だけどね。
さてと。超能力を無闇に使うなと言われましたので自己制御をしましょう。俗にいうコントールってやつだ。
制限するやつ、瞬間移動。
終わり。
「瞬間移動さえなければ大分難易度上がると思うんだよね。」
「えー?なぁに?」
「真下ちゃん、僕瞬間移動使わないから。」
「ええっ。」
「疲れたんだよ。」
「……わかったぁ。のらりくらり。」
まあ疲れてないけど。こうでも言わないと納得してくれないだろうなと思った。
「海神への道がわからない以上、無闇に動きたくないね。」
「そぉだねぇ、うん。」
「だから、相手が来るのを待とうか。さっきの移動で、敵陣付近に飛んだわけで。」
「そぉなの?」
「うん。」
敵陣というか、名莉海君に座標を合わせたというか。名莉海君のいる近くってことだ。
名莉海君が来なくても、たぶん誰か来るだろう。
「じゃあ待ち伏せだね。のらりくらりぃ。」
「うん。」
狩人探しは抄夜君がなんとかできるよ。
がんばれ僕以外の皆。
この遊びには飽きるまで参加しよう。
僕らは近くの木陰に隠れた。
◆◇◆
「諸行愁……勝手に動きやがって…だから嫌いなんです。才能にみちあふれてて、自惚れてるのは諸行愁。あなた自信じゃないですか。」
いつか、殺してあげます。
もう一度。
「昔はもっと…もっともっともっとよかったのに……。」
人は変わる。
才能があっても無くても。
「ゆるぅく掻き乱しましょう。私の仕事はあくまでもそれだけです。」
そういえば、樹朽蜜柑はどうしてるんだろう。自分の才能に劣等感を抱いていたやつ。
山にでも籠ってるか、死んだか。関係は一切ないが。
「蝶操士……あれ、操蝶士でしたっけ?懐かしい響きですねぇ、あの人の師匠はやはりあいつでしょうか。」
名前も持たない、スタイルも持たない。操蝶士として、確かに失格の人を殺せないやつ。
操蝶士はなめちゃいけませんよぉ?皆さん?綺麗さはタロット遣いに並ぶが、えげつなさはやばやはでーす。ふぅぅう。
「誰とやりあうんでしょうねぇ……ふふふ……。楽しみです……。」
◇◆◇
「まず、僕らは敵に会わないように心掛けよう。」
「まぁ、リーダーが負けたら終わりだからいいんじゃないかな。」
開始何分たったんだか知らないけど、未だに僕らは屋上にいる。
時間は売るほどある。
五分…五分ずらして出ようと言う考えに落ちた。
「で、狩人どうする?」
僕が探してもいいんだけど、これぐらいの広範囲になったら再び死にかけるんだよねぇ。
こりゃ難点。
「……うーんかな。人殺したことあるのかな。」
「……まー紅咲が雇うぐらいだからあり得ないことはないな。」
姿とか何も教えられてない。
商店街にどれだけ人がいると思ってるんだくそ紅咲。
「じゃあ、血の匂いを追ってみるかな。知らないやつの血の匂い。それでいいかな?しょーやん。」
「ま、暗中模索にやるよりはいいかもね。どうやって追うの?」
「円ちゃんがいる。」
「まる?ちゃん?」
誰。
「円ー。」
と、封磨君が空に声をかけると何もない場所から白い狼……らしきものが出てきた。
「大神みたいだけど、円は犬かな。わんわんかな。」
「召喚士か。」
「そうかな。円ちゃんなら速いし、匂いも追えるかな。」
「なるほど。」
「大きいし乗れるかな。」
「乗るの!?」
「勿論。」
動物虐待……ん?召喚獣虐待?
わからぬ。
「行くかな。そろそろ五分かな。」
「突き落とさないでね。」
「それはどうかな。」
そういって、封磨君は円ちゃん……犬……いいや、円に乗った。
僕も恐る恐る、後ろに座る、いえ座らせて頂いた。
すげぇ、もふもふしてる。
もふもふもふもふもふもふ。
「じゃ、落ちるかな。」
そう封磨君がいったら、円が即座に反応して屋上から飛び降りた。
えぇぇえぇ。
「こわいって!こわいです!やばいって!」
「煩いかな。突き落とすよ?」
「むぐっ!」
円はストンと着地して走り出す。
思ったんだけど、円って初心者に優しくないね。
円がもうスピードで走っていったのは商店街。一歩間違えればマクから出てきた警察さんに出会ってしまう。
知らない人の血の匂いって円が追ってるんだからいるんだよね。こわい社会だ。
完全犯罪おかした人とかみつけたらどうするのさ。
ネコバスみたいにみえてないのかな。ステルスぐらいなら僕がやるけど、大丈夫かな。
「んー。」
わからない。
まぁいいや、今のところは封磨君に任せる。
「止まれ。かな。」
と、封磨君にいうと、円が止まる。
急停止。
「おぉぉう!」
「この辺かな。円、止まれって言うまで永遠に止まらないかな。」
「それは……。」
おそろしい。
この辺ってわかるってことは円が感じたこともダイレクトに伝わるのかな。
便利だなぁ。
「うーん。こっちかなぁ。」
封磨君が歩き出すと大人しく円がついていく。
おぉう。可愛い。
「人が多いのかなかな。」
「多いね。人混みはすきじゃ、ない。」
「ぼくもかな。」
挙動不審にしかみえないほどきょろきょろして歩く。
見てもわからないと思うんだけどねぇ。
ほら、そこでメロンパン食べてるこが案外そうかもしれないじゃん。人は見かけによらないからね。
「あ……いたかな。」
「狩人?」
「いや、ただの人殺し探しだけどかな。」
「そうか、そうだったね。」
忘れてた。
「で、どれ?」
「それ。」
と、封磨君が指差したのはメロンパンを食べている少年だった。
目が合う。
「はじめまして。」




