1章
粗蕋抄夜。
十五歳。
中学生。不登校ぎみ。
成績、オール4ぐらい。
両親死亡。
一人暮らし。
――――殺人者。
タロットカード遣い。
身長、160センチ。
体重、忘れた。
嫌いなもの、愛と友情と勇気。
「ねぇ、紅咲………なんで。」
僕はいつも通り、家から出ようとして……いや、した。学校にいこうとか思ったんだよ。多分。
そうしたら、紅咲空が外で待ち受けていた。
この前会った以来、全く会っていなかったんだけど。突然。
「なんで、ときかれましても私がここにいる理由なんて至極簡単です。」
「………至極簡単?」
「掻き乱しにきました。……といいましても、今回に限ってはきちんとした依頼です。私自身貴方にもう一度あうなんて考えたくもなかったです。」
「…………そう。」
「歩きましょう。」
といって紅咲は先頭をきって歩き出す。
それに僕は大人しくついていく。
そんな風に歩いていって少しばかり嫌な目をあったことがあるようなきがするけど、そのおかげで友達に会えたんだな。
偶然だろうけど。
僕が通う江津中学校とは反対の方向つまり、海神中学の方へ向かってあるく。
「とある方からの依頼でして。クライアントの方の名前は都合上教えられないのですが。貴方がずいぶんつまらない人間になられて怒っている方が若干名いるんです。」
「つまらない人間て………。」
「噂をききますと、クリスマス、お正月。しかも、学校に通うようになったとか。」
「悪いかよ……。」
「悪いですね。大いにムカつきます。なので、隠居しようと思ってた紅咲の空がやって来たと言うことです!死んでください!」
「…………。」
たしかに。
僕が楽しく過ごすには人を殺しすぎた。ような気がする。
僕は、名莉海君や死色に出会ってからそれなりに楽しく幸せに過ごしている。
だけど、たまに、たまに考える。僕がしてきたことが許されるのか。いや、許されなくてもこんなことしていていいのか。
………答えなんて出るわけないけど。
「それで、なに?」
「はい?」
「なにをするの?」
「私が、なにをするの。の質問に答えるわけないじゃないですか。わけがわからないままに。やってもらいます。」
「へぇ…………。」
「そっちのほうが、貴方は有利に動くでしょうし。」
「……?」
有利に動く?
紅咲は加担はしないんじゃなかったっけ。
「メールアドレスと電話番号変えましたか?」
「いや、変えてない。」
「ならいいです。ではでは、まずですね、貴方は、駅に向かってください。」
「海神駅?江津駅?」
「海神しかありません。」
「あ。そうだっけ?」
「そうしたら、誰かに会えますよ。ヒント、ヒントはですねふふっ意外なお方です。ふふふっ。」
「意外なお方……?」
「えぇ。では、さようなら抄夜さん。貴方に最高の快楽と苦しみを。」
◇◆◇
駅前に立っていると、なんとびっくり。
死色が降ってきた。
「えぇ!」
黒闇陽死色。
殺し屋。
「でしぃいいいい!」
「ちょっと、まっ……」
えっと、抱き抱える感じで掴めばいいのかな?
どっとのってきた死色の体はとても軽………いわけないだろ。
普通に重いわ。
「うわっと。」
「あるぇ?抄夜君でしかぁ?」
「抄夜君だねぇ……。なんで、死色がいるのかな。しかも、武器……。」
「任務、任務任務任務ぅできたんでしけど何事おままごとでし?」
「任務……?」
死色を下に下ろす。
「お仕事でし。といっても、白陽陰のお仕事なんでしけどぉ?」
白陽陰…名莉海君のほうか。
「もしかしたら敵になるかもでしね。」
「………。」
ないことはない。な。
紅咲がやることなんだから。
「そおしたら、どーなるんでしよねぇ?」
「殺さないでくれるとありがたいね。」
「ふひひっ!さぁぁ?どうでしかねぇ。」
「…………。」
まぁ仕事だから仕方ないか。
紅咲がいってた意外な方って死色か?いや、死色だったら別に意外じゃないんだけど。
死色か?
で、何をするんだろう?
「………うーん。死色はどこに行くの?」
「名莉海君とお出会いをしてぇ、えっとでしねぇ。わからないでしぃぃい!」
「……そう。」
………。わからないなぁ。
駅前で待っててって言われた訳じゃないから駅のホームっていう可能性がないこともないのか。
金を払えと?
まさか?
「でも、待ち合わせとかでホームで待ち続ける奴がいるとはおもえないんだけどなぁ…。いや、いるか。それぐらい。」
「はひぃ?へぇぇ?なにか言ったでしかぁ?」
「ん……いや、なんでもない。ちょっとホーム行くね。僕。」
「さよぉーならでし!」
死色に軽く手を振って、駅に向かう。
入場料らしきものを払って切符を手に入れ駅のホームへ向かう。
「僕、相手の顔知らないんだよなぁ。死色なのかな…意外な人物って。」
改札を通って、ホームを歩きながら見渡す。
金を払ったからにはすぐに出たくないような気がする。気がする。
中学生独り暮らしのお金だよ?
わかる?貧しさ。
「…………。」
電車が走ってくる。
あー、いっそ今日一日電車に乗って外でも眺めてようかな。
悪くない。
………と。
「――――――!?」
ぎょっとした。
電車が入ってきたホーム真下、まさか、まさかまさかまさか、線路にたってる人間がいるなんて。
たしか、人身事故は四散――死惨といっても過言ではないぐらいの死に方をする。
五体は四散…否、五散し、五臓六腑は吹き飛ぶ。
その人は電車を見つめ、平然とした顔をしている。
………狂ってるのか?
それにしても、少し―――
「楽しみ。」
かな。
線路にたっている人間は右手を電車の方につきだし、静止する。
あちらこちらで悲鳴が上がってる中。
平然と。
立っている。
「……。」
何を考えてるんだろう?
どうせ死ぬなら右手から?まさか。
そして、電車は止まる。
「は……え?」
車体が大破した状態で。
人を轢いて、大破した訳ではない。
そのヒトはいまだに右手を電車に向けて止まっている。
「………………電車が破壊された…?」
あー。駄目だ。ついていけない。
帰ろう。
駄目だ。僕の空間じゃない。
電車を破壊したであろうヒトは、振り向いてホームを見渡す。
そして、僕を見て止まる。
「あれ、あさりべしょーやくん?」
「…………。」
紅咲……まさか、この人じゃないだろうな?意外なお方って。
誰だよぉ知らないよぉ。誰だよ……いや、まじで。
なに?電車を破壊した意外性ってやつですか?
「人違い?」
「いや、僕の名前は確かに粗蕋抄夜ですけど……。」
どうしよう。
激しく関わりたくない。
「あー、良かった。うっかり向こうのホームにいるかと思って、向こうに横断しようとしたんだけど、こっちにいたか。んー、ま、いいや。」
「……よ、よくあるうっかりですよね。」
「うんうん。よくあるよね。」
ないよ。
あきらかに頭がおかしそうな人は、ホームに上がってきて僕の前に立つ。
「どーも。はじめまして。しょーやくん。うろいちゃんだかうれいちゃんだかうといちゃんだか知らないけれど、そんな感じの人に声をかけられて来たんだ…うーん、名前はスノウか雪かゆっきーかセツって呼んでね!よろしく!」
「…………。」
人が集まる集まる。
「誠に恐縮なのですが、僕からものすごく離れるって言うか、駅から出てくれませんか。」
「え?」
「ちょっとした、裏技使いたいんで……あの、いいですか?」
「んー。めんどくさいから嫌だなぁ。」
「…………。」
知らん。もう、いい。
会ったことまで、なかったことにしてやる。
死色に会って家に帰りましたとさ。
ポケットからタロットカードが入っているケースを取り出す。
「Emperor(権力と支配)―――joker」
願うと叶えてくれる世にも珍しいカード、否、カードを扱える能力。
タロットカード遣い。
jokerは全てをなかったことにし、Emperorはそれを制御する。(この間判明した。)
jokerはちょっと厄介物で、僕もろともなかったことにしやがるのが困り物。だがしかし、Emperor様様のお陰で僕は防げる。僕は。
「駅中……全部、時間戻すかんじでいいのかな……。」
それで、帰ろう。
うん。最高だ。
………電車ターミナルの時間を戻すって言うか、なかったことにする。
「…………………。」
僕と雪さん?を囲んでる人たちは、次々と戻っていき、電車は戻る。
死んだものはいなかったことに。
生きているものは数分前へ。
「………はあ………はぁ」
「へー、凄いね。しょーやくん。」
「あー、ありがとうございま…………ってあれ?」
雪さんの時間が戻ってない?否、僕と雪さんの出会いがなかったことになっていない?
「…………。」
「ん?」
「………いえ、なんでも、ないです。」
なんか、ミスったのかな。
そんなことより、どっかで休まなくちゃ死ぬ……。
◆◇◆
「とんでもないことを仕出かしますねぇ。雪さん、いえ、セツさんとお呼びいたしましょうか。」
雪の予告状と共に殺人を犯す、一時期騒がれた怪盗。
犯人は捕まっておらず、不明とされている。ある事件をきっかけに、ピタリと止んだ。
そして―――RCS2。
倶楽部にならぶ、いやそれ以上の勢いをもっているかもしれない超能力者………つまり、頭のおかしな人がたくさんいる、義賊。
あれ以来、一歩下がってみていたセツをよんでみた。
私も一歩下がっていたのだから無理矢理呼び出したクライアントへの軽い仕返しのようなもの。
「電車を破壊するレベルって少し気持ち悪いです。即効即刻即座に殺していただきたいですねぇ……。」
無理だろうけど。
いい勝負になるのは、諸行愁ぐらいかな。勝負されたら軽く日本は無くなるか。
会ったことはあるのかな?
「粗蕋抄夜………抄夜さん。人間としてつまらなくなってもタロット遣いの能力は一切下がっていない、それどころか伸びている。制御が明確になりつつありますね。ふふ………。」
タロット遣いの能力は大好きだ。綺麗だから。
「アレになら殺されてみたいですね……ふふふ。」
「あれに殺されたやつへのいじめなのかな?それとも、嫌味ってやつなのかな?」
「あら、いたんですか。封磨君。」
振り向くと、竜らしきものに乗っている少年がいた。
コートを着ている。
「ぼくを呼んだのは君じゃないのかな。それに、ぼくは…。」
「言わなくていいですよ。封磨君。いえ、召喚師、歌乾封磨君。」
「嫌味にしかきこえないのかな。」
「私はそう言うものについては嫌味しか言いませんよ。大嫌いですからね。才能ってやつが。」
才能なんて死んじまえばいい。
「そう。ぼくには関係ないかな。」
「そうですね。才能がある人、あれ、人じゃないんでしたっけ?」
そういうと、歌乾封磨は心底嫌そうな顔をする。
「殺すよ?」
「やめてくださいよ。そういう冗談は。」
「………そうかな。冗談かな。冗談。そんな殺すよ。なんてぼくがいうわけないかな。あーぁ、湖に会いたいなぁ。」
「召喚すればいいんじゃないですか?」
「ニセモノだよ。そんなの。」
「ですよね。」
ホームをもう一度見下ろす。
黒闇陽死色と、白陽陰名莉海は出会ったようだ。
「ふむ………。」
前の話の生き残り(キャスト)は集まった。
あとは、新しい人達を待つだけ。
「粗蕋抄夜に連絡を入れてあの人達との待ち合わせ場所にいってもらいましょうか。」
パソコンの電源をいれ、ヘッドホンをつけて、粗蕋抄夜の電話番号にかける。
「やっほぉ!しょぅやくん!ゆっきーさんに会ったぁ!?」
◇◇◇
「死色と合流するはずなんだけどな……。」
白陽陰名莉海。白陽陰殺陣のひとり。といっても、もう白陽陰は四人しか残っていないので、おおっぴらな活動はしていないのだけれど。
駅の前で待ち合わせてたはずの死色は見当たらない。色々支度があったので先に行かせていたけど、まだ単独行動はさせるべきじゃないみたいだ。
俺としたことが大失敗だぜ。
「じっとできねーからな、あいつ……。」
待て、と言っても三秒持たない。
ため息混じりに駅の周りを一周しても、見当たらない。
こうなりゃ中かと、ホームへ足を踏み入れようとした時。
「あ。」
「あれ。」
「でしぃぃいっ!名莉海くぅぅううん!」
ちょうどホームから出てきたのは、友人の粗蕋抄夜と死色と、知らないお兄さん。
「おわっ!」
死色が俺に飛びついてくる。危うく後ろに倒れるところだったが、なんとか堪えた。
「でしー、でしー!えへへへぇ。」
何故だか嬉しそうだ。
「えっと……。」
死色はとりあえずほっといて、知らないお兄さんの方をちらりと見る。
「はじめまして。」
「……はじめまして。」
どうも初対面の人には警戒心が強くなっちまうなあ。抄夜と一緒にいるんだから敵ではなさそうだけど。
「僕は抄夜君の友達です。」
「えっ!?」
抄夜、何で驚いた。
「嘘です、雪でもゆっきーでもスノウでもセツでもSさんでも呼んでくれれば返事はする。極力。」
「極力かよ……。」
絶対じゃないんだ。
「俺は……白陽陰名莉海。あんたのことはまあ、そうだな……雪って呼ぶよ。」
一瞬偽名の白渚名莉海を使おうと思ったけど、やめておいた。
「うん、わかった。名莉海君。」
「でし、しーちゃんでし!」
「しーちゃんって呼べばいいのかな、これ。」
雪は首を傾げた。
「あー……しーちゃんか、死色って呼んであげて」
「じゃあしーちゃんでいいや。」
言って、雪は伸びをする。
「名莉海くん!名莉海くん!!今日のお仕事なんでしかぁ!?殺人でしか!」
おい、ここ一般人もたくさんいるから!
雪も「ん?」って不思議そうにしてるし!
「殺人?」
聞かれた!
こういう時の対処の仕方わかんねえ。
迷っていると、雪は淡々と言った。
「殺人かー。僕、今ある人に禁止されてるんだよね。いいな、自由に殺せて。」
「「えっ。」」
俺と抄夜がハモった。
え、何?雪も殺人者?お仲間ですか?
色殺ではないだろうけど、苗字知らないし……どうなんだろう。
色殺だったら関わりたくねえな。
「ん、名莉海君。心配には及ばない。僕、色殺とかいうのじゃないから。」
「お、おう……。」
あれ?考えてることバレてね?
「あ、名莉海君。」
と、抄夜が俺に話しかける。
「どうした?」
「どうでした?」
死色、それじゃあ何だか違う意味だぞ。
しかし抄夜、最近は死色の扱いに慣れてきたようで無視した。
「その……紅咲空に、マクドナルドに行けって言われてるんだけど。」
「あ、まじで?じゃあ行った方がいいな。」
死色を引き剥がし、歩こうとしたところで。
「あ、電話。」
雪の方から電話の音がした。
「ちょっとごめんね。先行ってていいよ。」
「ん、わかった。」
「でしー!!名莉海くん、おんぶぅ!」
「恥ずかしいから嫌だ。」
「ぷぇぇぇぇええええっ!!」
死色の手を引いて、俺と抄夜と死色は近くのマックに向かった。
先ほどの死色の、今日のお仕事については、どこであろうと(例え俺達の家の中であろうと)答えることはできなかった。
何故なら俺も、詳しくは知らないから。
もしかしたら抄夜と敵対するかもしれないなて思いながら、俺達はマックに到着したのだった。
◇◆◆
「もしもし。」
突然かかってきた電話。ひとりになった僕、雪は、電話に出た。
『もしもし。諸行雫です。』
「おかけになった電話番号は、現在使われておりません。」
『いや、もしもしって言いましたよね?』
諸行雫といえば僕が嫌いな奴だ。
一度だけ会ったような、ないような。
僕が所属しているRCS2という組織、一言で言えば超能力者集団の組織。反政府っぽいことをしている僕らの組織には、日本子供倶楽部とかいうふざけた名前の組織は敵のようなものだ。
あそこの組織、政府のものだし?
関わりたくない、正直。
「言ってません。」
『いや、繋がってますし……。』
バレちゃったかー。仕方ないなー。
「何?僕らの組織潰す?いやー、お断りだね。」
『何も言ってません。』
「そうだね。僕に何の用?あいにく、僕は忙しいんだよね、暇つぶしに。」
粗蕋抄夜のことは空ちゃんに声をかけられて、暇つぶしで参加しただけ。あくまでも暇つぶし以外ではない。
『暇つぶしですか……。二十歳を過ぎてなお、仕事も探さないから暇なんですよ。』
「僕はRCS2が仕事場なの。それに、僕なんかが一般の仕事してたら爆笑ものだろ。」
『それもそうですね。爆笑ものです。』
「で?」
そろそろ本題に入ってほしいものだけど。
まあ、瞬間移動でマックに行けば、時間は関係ないか。
『今回のこと、RCS2抜きで考えて下さいません?』
「……どういう意味?」
『ですから、僕はこうして日本子供倶楽部の一員ですけれども。今回の暇つぶしはスノウさん、いえ、雪さんとして参加していただきたい。RCS2という組織には一切関係ない、雪さん個人の暇つぶし。』
「……ちょっと意味がわからないけど、要するにこういうことだね?君は日本子供倶楽部として動くつもりだけど、僕はRCS2として動かない。つまりは僕が何をしても組織には関係ないと。」
『そういうことです。いいですか?』
ふむ。まあ悪くはないね。
僕が日本子供倶楽部に有害な行為をしても、RCS2がなくなることはないと。
「いいよ。」
『よからぬことを考えてそうですけど。』
「別に?」
諸行雫はそうですか、と適当に返事をした。
一応確認しておいてあげよう。
「僕が誰を殺してもいいの?」
『……粗蕋抄夜を殺さなければ。』
「あっそ。」
お前に必要なのは粗蕋抄夜なわけね。
「わかったわかった。念頭には置かないけど、念足くらいには置いとくよ。」
『それはどうも。僕が電話した理由はそれだけです。』
「じゃ、ばいばい。もうかけてこないでね。」
言って、僕は返事を待たずに電話を切った。
携帯をポケットにしまい、少しだけ微笑う。
「雫、ごめんね。僕約束破る。」
人殺しはしちゃダメ。
僕の愛する君の言葉。君との約束。
約束は破るもの。
昔から言ってるこの言い訳。
さあ、目的地に向かおう。
僕は瞬間移動をした。
◇◆◇
マクドナルドって関西の人はマクドって言うんだっけか。
僕は基本マクドナルドっていってるから関係ないんだけど、っていうか、ドナルドってキャラがマクドナルドにいるんだからマクドってなんかおかしくないか?それをいっちゃあ、マックって誰だよみたいな。マックさんに失礼じゃないのかな?
だから、マクって呼べばいいと思う。
訳がわからない。
「ん。あれ。雪さんいつから………。」
マクの階段を登りながら(死色がアイスを食べたいと騒ぎまくったのでアイスを注文した。)雪さんが隣にいることに気づく。
「さっき。うん。さっきだよ。さっき。」
「はぁ…。」
まぁ、僕が気づかないなんてよくあることだからいいか。
「ん…………セツ?」
たしか、この人自己紹介のときセツって言ってなかったか?
ニュースで見たことあるような、えっと………
「あぁ、気にすることはないと思うよ。」
「え?あ。はい?」
読まれた?
超能力の分類かな…?その辺はよくわからないんだけど。
超能力の一つや二つ使えればいいのになぁ。
「あー!抄夜さんどうもですー。空ちゃんです。」
「え?」
階段の上を見上げると、紅咲がいた。
「皆さん、お集まり頂きありがとうございます。」
紅咲は丁寧にお辞儀する。
「名莉海さんは会うのははじめまして。」
「ん……はじめましてってね。」
「死色さんはお久しぶりです。」
「でし?誰でしかぁ?」
「ゆっきーさんはさっきぶりです。」
「どーも。」
「抄夜さんはどうもですー。ささー、皆様こちらへどうぞ。」
「……。」
紅咲は振り向いて、先にさっさと進んでいく。
こういうとき紅咲は少し冷たい。背が低いくせにっていうか幼い顔してるくせにかなり大人びているというか、感情が少しかけているっていうかジグザグで歪な感じがする。
白陽陰の名莉海君を呼んだのは紅咲だろうし、死色も勿論。
クライアントって誰だろう。
それに何をするつもりなんだろうか。
紅咲が、振り返る。
「メンバーは揃いました。」
「え………?」
紅咲が立っている後ろのテーブルには見覚えがある人物が一人いた。
否、僕が殺した人がいた。
「…………封磨……君?」