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春風  作者: 睦月
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第1話

ご不快に感じられた方は、回れ右でお願い致します。


更新は亀更新になると思いますので長い目でご覧いただければ幸いです(m´・ω・`)m

人生何がどう転ぶかわからない。


今まさにその言葉を実感している最中です。


「・・・・大丈夫か?私・・・・・」


現在の居場所を知らせろって言われたら間違いなくこう言うよ。


『場違いな場所にいます』


ってね・・・・・。





★☆★








事の起こりは1週間前・・・・・・。

私は、唯一の家族で最愛の母を病気で亡くした。

癌だった。

見つけた時にはすでに手遅れで癌の進行は止められなかった。

医者は、少しでも長く生きられるようにと治療を進めて来たが家には継続して治療を受けられる程のお金もなければ、母自身それを嫌がった。


「貴方に辛い思いをさせてまで長生きしようとは思わないわ。これが私の最後のお願いよ?」


そう言って、母は最後まで私の側に居てくれた。

その母が最後にこう言った。


「人生なにがどう転ぶかわからないのよ。今をしっかり生きればいいの!後悔しない人生を送りなさい」


最後の最後まで笑顔で母は物ごころつく前に亡くなっていた父のもとに旅立っていった。



母の葬式も無事に終え、私は一人これからの事を考えていた。

現在、17歳。母も父も親兄弟、親戚すらいないという天涯孤独の身だった。

たった一人になった私は両親の仏壇の前で一人今後の事を考えていた。

母の死亡保険金がおりてこのまま高校を卒業するまでは何とかやっていけるだろうと思っていた矢先だった。

家のチャイムが鳴ったのは。

その時は、母の死を知った人が焼香をあげにきてくれたのかな?なんて思って扉を開けた。

だけど、扉の先に居た人たちは見るからに怪しかった。


「鳥居 里奈様ですね」


扉を開けて視界に入ったものは黒い服。

つつつっと視線を上にあげれば黒いスーツをきて黒いサングラスをしたお兄さんらしき人が数人たっていた。

これは、やばい!と思って反射的に扉を閉めようと思ったが、黒スーツのお兄さん、がしっ!っと扉をつかみましたよ。

えぇ・・・。ガシッと・・・・。


「鳥居 里奈様ですね」


さっきから、断定的に聞いてますよね?

そう思いつつも黒集団に圧倒されながらうなづいた。

すると、その集団の一人が名刺を取り出してこう言った。


「私、春野グループ会長春野敏明様の秘書を務めております寺井と申します。本日は里奈様をお迎えにあがりました」


丁寧なお辞儀にうっかり私もお辞儀してしまう。


「はぁ・・・これはご丁寧にどうも・・・」


って、おい!違うだろ自分!!

うっかり心の中で突っ込んだことは内緒です。


「・・・で、その寺井さん?が何の御用でしょう・・・・」


思い切り不審の目で見上げでやったが、全く効果なくその寺井さんという人は話を始めた。


「はい。先日亡くなられました鳥居あかり様は春野敏明様のご息女でございました。しかし、数十年前、あかり様はあなたのお父様とかけおちをされ家を出られてしまわれました。会長はそのことに激怒しあかり様を勘当され、今までご縁を絶っておいででしたが、このたびの事で会長が後見人となりあなた様を引き取る為、お迎えに参上した次第でございます」


すらすらと出てくるその話に思わず目が点になった。


「ですので、今からお屋敷の方へ来ていただきたいのです」


「は?」


寺井さんの言っている意味がさっぱりわからず思わず間の抜けた声が出てしまった。


「・・・・突然のお話で混乱されているのはわかります。ですが、こちらも時間がありませんので、失礼して荷物をまとめさせていただきます」


そう言うと、寺井さんの後ろにいた黒集団がどかどかと我が家へ入り込んで、どこに隠し持っていたのか、段ボールにつぎつぎと荷物を入れていく。


「ちょ、ちょっと!なにしてるのよ!!勝手に人のものにさわらないで!!」


慌てて黒集団を止めに部屋の中へ戻ろうとしたが、寺井さんに引きとめられた。


「お待ちください。彼らに任せておけばすぐに終わります。また、あなたに拒否権はないのです。申し訳ありませんが少しの間眠っていてください」


そう言って口元に白い布の様なものが当てられた。


「ちょ!どういうい・・・・・み・・・・」


そのまま私の意識は落ちてしまった。






★☆★






そして、冒頭に戻ると言う訳だ。


「で・・・・。ここどこよ・・・・」



目がさめれば見知らぬ部屋のベットの上。

それも、異常なくらい広い部屋。

何があったのか徐々に記憶がもどってくると、私は慌ててベットから立ち上がった。


「かあさん!!?」


黒集団に勝手に荷物を段ボールに入れられていたが、母の遺影やお骨はどこへやったのか。

あわてて部屋中を探すと、母と父の遺影と共にお骨も窓際に置いてあるテーブルの上に並べられてあった。


「ほ・・・・。かあさん・・・・。一体、何がどうなってるの・・・?」


母の遺影を見つけると安心して思わずその場にへたり込んでしまった。

しかし、首だけを回してみるとここはまるで高級ホテルのスイートルームではないかと思うくらい豪華な部屋だった。


「なんだっけ・・・・。かあさんが実はどっかの会長の娘でなんたらかんたら・・・・・っていってたよね?」


よいしょっと腰を上げるととりあえず今着ている高そうな夜着を着替えるべく自分の荷物を探すことにした。


「ん~・・・。って事はかあさんは天涯孤独なわけじゃなくってお父さんが居たってことだよね?それで、その人は結構えらそうな感じの人・・・・」


ぶつぶつ言いながら部屋の中を歩きまわる。


「そんでもって、かあさんったら父さんと駆け落ち結婚だったのか。そんな事一言も言ってなかったなぁ」


部屋に取り付けられているクローゼットに手をかけ一言失礼しますと言って開けてみる。

そこには雑誌などで紹介されているような服がずらりと並んでいた。


「すっご・・・・。こんなにいっぱい誰が着るんだろう」


なんて感想を言いながらも自分の荷物を探すが見当たらない。


「ん・・・。どこにやったんだろう・・・。もしかして、私が逃げないようにどっかに隠したとか?ははっ!なんて、漫画の読みすぎかなぁ。そんな事あるわけないよね」


なにがあってもいつもこんな感じの楽観さは絶対に母譲りだと自信を持って言える。

母さんもよく、なんとかなるなるなんて事を言ってたから。


「それにしても・・・・・。部屋にバスルームもトイレもついてるってどういうことよ?やっぱりここはホテルか何かなの?」


一通り見て回った部屋は明らかに一般家庭にはない様な部屋であることを認識した。


「・・・・こんなところテレビでしか見たことないわ・・・・・」


ほぅっとため息をつくと扉からノックをする音が聞こえた。

いよいよ、ココに連れて来た人とご対面って訳?

そんな事を考えながら叩かれる扉に近づき返事をして扉をあけた。


「・・・・また黒ずくめ・・・・・」


開けた先に待っていたのは先程の黒集団の一人だった。


「里奈様、会長がお呼びです」


私の言葉に眉を寄せながらも平然としゃべるそのお兄さん・・・いや、寺井さん・・・だっけ?・・・が、私を見下ろしていた。


「・・・・っていうか、私の着替えがないんですけど・・・」


意外と私も冷静に返事が出来たことに自分でもびっくりだ。

いや、まぁ動揺しても仕方がない。


「まぁ、この格好でいいっていうならいいんですけど」


ちょっぴり嫌みを言う余裕もあるようだ。

にんまりと笑って寺井さんを見上げると寺井さんは私の姿を見るとごほんと咳払いをして視線を私からはずした。


「失礼しました。里奈様のお持ちだった物は少々汚れておりましたので、すべてクリーニングに出しております。クローゼットの者はすべて里奈様の為にご用意させていただいたものですので、どうぞそちらをお使い下さい」


そう言うと寺井さんはぺこりと頭をさげ部屋の扉を閉めた。

汚れてるって・・・・。ちゃんと洗濯してますけど!!

まぁ、確かに多少年代物の服もあったけど・・・。

いや!っていうか、返事も待たずに扉を閉めるとは、さっさと着替えろってことですか!?


「・・・・ふぅ・・・いけない。ちょっと考え方がひねくれてきてる・・・・」


まぁ、ひねくれたくもなるけど。

とにかく、このままでも埒があかないので、私はクローゼットの中を再び覗いてみる。


「・・・どれもこれも欲しくても手が届かないものばっかりだわ・・・・」


そこに並んでいる服はすべてがブランド物である。

だけど、母一人子一人でやってきた家庭でこんな贅沢な物お目にかかる機会もなかった私は、無意識のうちに汚してしまってはいけないと一番地味で値段も手ごろではないかと思われる服を手にとって急いでそれに袖を通した。


「・・・サイズ・・・ぴったりなんですけど・・・」


いつのまに私のサイズを調べたのか不思議であったが、そこを気にしてはいけない様な気がしてとりあえず廊下で待っているであろう寺井さんの元へと向かった。





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