聖女とは。
いま自分が通っているこの学園には聖女候補が在学している。
平民出身で、侯爵家の援助を受けて王都の高等学園に通っているのだが……
「アーネスト殿下は本当に頼りになります~」
「ははは、そうだろう、リリサは素直で可愛いなあ、誰かと違って」
この国のたった一人のバ×王子に上目遣いで話しかけて、しなだれかかって、媚びてという、どこの夜をひさぐ女だという感じでまとわりついている。
自分に全く関係なければよかったのだが、その王子が自分の双子の妹の婚約者である以上、無関係を決め込めなかった。
周りの生徒たちは王子と聖女候補にはしたないと警告するわけにもいかず、近寄らないように頑張るか、見ても眉をひそめて目を背けるか、端から無視する者がほとんどだ。
だがその一方で、王子の婚約者を攻撃してくる者もいて本当に頭が痛い。
おバカな二人も問題だが、準王族というのを除いても、由緒正しき公爵家の娘を侮るなど、格下の貴族の態度として正しくないと思わないのだろうか?
……思わないからできるんだろうなあ。
あと、婚約解消の相談を父を通じて陛下にしたことがあるのだが、
「お前の娘にしか支えられないから頼む」
と返されてしまったと、父は渋い顔で溜息をついていた。
とりあえず「王太子殿下の仕事は肩代わりしない」という約束だけは取り付けたようだ。利用されるだけ利用されてポイ捨てなんて叶わないからな。
しかし、その婚約者の目に入る場所で行われている醜聞に、どうにかならないかと兄としては憤りを感じていた。
「大丈夫か、リージア」
「ロイル。うん、別にどーでもいーもの」
「……そうか」
諦めきっているな、妹よ。
もともと王子のことは好きでも嫌いでもないし、一度お願いしてダメだった以上どうしようもないと諦めているので、王子が何をしようと本当に気にしないというか……本当にどうでもいいのだろう。
だがそれは自分の人生も諦めているということにならないか?
兄は心の底から心配になるよ。
「ロイルこそ、どうなってるの?」
「国外の有力貴族の娘も視野に入れて、選定して頂いている最中」
そう、自分は自分で婚約破棄をしたばかりなので、跡取り息子として公爵家にふさわしい嫁を新たに選ばなければならない。
まさか、病弱で領地からなかなか出てこられないと聞かされていた婚約者が、領地で色々な男性と関係をもった挙句に妊娠していたなんて……外れクジ過ぎるorz。
黙っていた伯爵家は男爵まで降爵したし、領地の一部を慰謝料代わりに頂くことになったから、まあいいかってなった。
……俺の心がちょっと傷ついたくらいかな。
「彼女の為に神官様に治癒魔法を教えて頂いていたのが無駄になったのがなあ」
「あら、治療もできる文官って王宮で重宝されるんじゃない?」
「かな?でも……」
ちらっと王子を見てしまった。
「あれの為には使いたくないな」
「……そうね」
心底嫌そうな顔をしていた自分の顔が面白かったのか、それを見たリージアはクスクスと笑いだした。
「じゃあ、私のために使ってね♪」
妹の顔に久々にいい笑顔が浮かんでいて(お兄ちゃんはうれしいぞ!)ってなったのは内緒だ。
「いい笑顔ね、リージア」
「フェイス様」
「お久しぶりです、フェイス殿下」
「久しぶりね、ロイル」
同じ学園に通っているとはいえ、学年が我々より一つ上のフェイス殿下とお会いするのは、ほぼ一ヶ月ぶりだった。
弟とは違い、立ち振る舞いも言動も知性に満ち溢れているフェイス殿下は、一部の貴族からは王太女にと望まれていた。
「そういえば来月の巡礼の話は知っているかしら」
「巡礼?」
「3年に一度の霊峰アイラティアへの巡礼のことですか?」
「ええ、それよ」
この国の国教は女神ハンナアイラ様を崇める神聖女神教だ。
そしてこの国には女神様が降り立ったと言われる霊峰アイラティアがある。そしてその山頂には「女神の碑文」と呼ばれる石碑が存在する。
初代聖女が建立したとも、女神からの賜物とも言われ、そこに刻まれた神聖文字の文章を読むことで聖職者は女神の恩恵を得られ、聖女はその時折に必要な力を得ると言われている。
そして聖女候補は、赴いた折に浮かぶ「特別な碑文」を読むことで聖女として開花すると言われている。
「開花……じゃあ、あれの手にある花が開くということなの?」
「そのはずだよ」
聖女候補らしからぬ怠惰な少女リリサの左手の甲には、木蓮の蕾の模様が浮かんでいる。
聖痕と言われるそれは、その者が聖女と認められたときに花開き、聖女の力も得られると伝えられている。
前回聖女が現れたのが百五十年ほど前の為、情報もあやふやなものが多いが、教会に伝わる話だから間違いはないだろうと言われている。
聖女が聖女としてこの世にあらわれるのではなく、聖女候補として蕾を頂き、それを花開かせるために巡礼に行かねばならない理由は何処にも書かれていないらしい。
でもまあ、あの様子を見るとなあ……聖女の資格があっても、性格的に問題がある人の場合、女神様も蕾を開かせたくなくなるだろうな……。
「読むのって神聖文字よね?あれがそれを学んでいるようには見えないけど?」
「司祭様が二日に一度、教えにわざわざ学園までお見えになっているよ」
「それで何とかなりそうかしら?」
「読めなくはないものの正確ではないので大丈夫かと、案じていらっしゃいます」
女性二人の疑問はよく分かる。自分も思うことだしな。
「ロイルは神聖文字を読めますのよね?」
「はい。司祭様から直接教えて頂きました」
「それは素晴らしいですわ」
丸三角四角などに点やバツや線が加えられた記号で構成される神聖文字。
教会の壁や祈禱室に書かれている模様としても有名だが、これを発音できるものが少ないらしい。
自分はなぜかできてしまったんだが……。
「もしも私が公爵家の跡継ぎでなければ、教会にスカウトしたかったそうです」
「それならそれで、私が公爵家を継ぐだけよ?」
「禁欲主義の生活は、学術的欲求にまみれた自分には無理だから」
「あー、そうね」
聖職者になれば、女神に仕えるものとして清貧な生活を送ることになる。
戒律も多く、それが嫌で聖女候補は学園に来ているという噂があるくらいだ。
もしも王族に求められたら、教会ではなく王城で生活することが許される。
だからああして必死になって殿下を口説いているんだろうなというのは、誰もが思うことだった。
自分はというと、知識欲というか雑学欲が強く、色々な本を読むのが大好きだ。
王宮の文官になりたいのも、給料と自由時間を天秤にかけたところ、王宮の歴史編纂課に入るのが一番と判断し、そこを狙っている。
父の爵位を継ぐまでは稼いだ金でのんびり本を読む生活がしたい――という私欲にまみれた自分に、聖職者は無理と分かっていた。
「それよりも巡礼件なのだけど、二人にお願いがあるわ」
王女殿下からの頼みは巡礼への同行だった。
「何故騎士でもない貴様らが一緒に来るのだ」
「文句があるならお父様や教会に言いなさい」
二つの満月が昇る日の朝、巡礼の一行が霊峰の麓に集合していた。
今回は王族も参加するということで、聖職者の一団以外にも騎士団の一行もいたが、それ以外にも参加者がいた。
王族のアーネスト殿下とフェイス殿下に聖女候補のリリサ。そしてアーネストの婚約者のリージアとその兄の自分だ。
アーネスト殿下が同行すると言った時に、姉のフェイス殿下もお目付け役として行くようにと陛下から命じられたそうだ。
リージアと自分の同行を言い出したのはフェイス殿下で、一人では不安だということで許可をもぎ取ったとのことだ。
どのみち司教様からも聖女の監視を頼むと言われたので、アーネスト殿下以外は自分たちのことを受け入れてくれていた。
警護?……それができるなら文官は目指してないとしか言いようがない。
防御魔法は得意なので、一瞬守るくらいはできるけど、闘う能力はない。その分逃げ足は速い(キリッ)。
それはどうでもよくて。
とにかく王子殿下と聖女候補が同じテントで寝るようなことにならない、外で致すようなことにならないように、二人を監視するのが自分達の仕事だった。
そんなことあるわけないだろうと思いつつ引き受けたわけだが、結果を言えば引き受けて正解だったとだけ言っておく。
昼過ぎに山頂まであと少しのところに付き、仮眠を取り、そんなこんなの後に夜更けに山頂を目指した。
真夜中の天頂には二つの満月が並び、その柔らかい光の下には黒光りした石碑が立っていた。
石碑の表面はつるつるとしており、文字が掘られているようには見えなかった。
「誓約文が書かれてるから読めって言われたのに、無いじゃない!」
「祈りを」
「え?」
「皆様で一緒に祈りを」
聖職者たちは石碑の前に跪き、女神に感謝と平和を誓う祈りの言葉を唱え始めた。
自分も同じように唱え始めると、護衛の半分とフェイス殿下とリージアも唱え始めた。
すると突然足元が明るくなった。
顔を上げると石碑が淡く光り、文字が黒く残っていた。
「これが神聖文字なのね。確かに教会でよく見る模様だわ」
「そしてこれが誓約文ですのね」
「さあ、候補様」
「分かってるわよ」
そこに浮かんだ文章を聖女候補が読み始めた。
たどたどしく時折発音を間違えながら。
聖職者一同の眉間にしわが寄り、自分もこれでいいのかと頭を抱えてしまった。
それを見たリージアにどうしたのと聞かれたので、正直に答えた。
「つっかえているのは分かるか?」
「ああ、やっぱり?」
「それどころか、所々発音を間違えていて」
「え?」
「あ、今飛ばした」
「なんてこと」
それが聞こえたのかフェイス殿下もこめかみに手を当て始めたが、聞こえていないのか聞く気が一切なかったのか、アーネスト殿下はひたすらリリサを褒め称えていた。
「美しい声、美しい祈祷、さすがは聖女リリサだ」
一応何とか適当に最後まで読むことのできたリリサの左の手の甲は柔らかく光り始めた。
「これで花が開くのね!」
「すばらしいな!」
「どれくらいで咲くのかなあ」
「見ていればすぐ咲くのではないか」
などとバカがきゃきゃしている横で聖職者一行は不安そうな顔をしていた。
どの文献にもどれくらい時間が経てば花が咲くとは書かれていなかった。
だから、花は、すぐに咲くと思われていた。
碑文を適当に読んでいたあたり、このまま咲かないんじゃないかと心配になってくる。
もう一度読ませた方がいいんだろうかと思っていた時だった。
「これはなんて書いてあるのかしら?」
フェイス殿下が碑文を見ながら質問してきた。
そう言えば内容は何だったかな?
「……この碑文を読んだ聖なる力を持つ者よ。そなたを守る者と共に力を合わせ、我が愛しき花々を愛し、慈しみ、守りなさい……と言ったところでしょうか?」
「そういえば発音も習ったのよね?神聖言語的にはどうなるのかしら?」
聞かれるままに読んでみたが、今の発音・言語体系とも全く違う為に外国語どころか言葉として認識できないかもしれないと思った。
懸念した通りリージアには「何の呪文?」と言われてしまったが、
「春先の風の音に似ている気がする」
とフェイス殿下に言われて、気恥ずかしさを感じる反面、なんか少し嬉しかった。
しかし、そんな風に和んでいたら「どいてよ!」の罵倒と思に突き飛ばされてしまった。
とっさに石碑に手を突かなかったら、頭からぶつかっていたかもしれない。
ううっ、肘が若干痛いTT
「いったい何を」
「他に文章が出てくるかもしれないでしょ?だってその時その時に要る力がもらえるってことだもん。もっと力が欲しいわ!」
「そうだな、君なら様々な力を手に入れられるだろう。さあ、どけ、家来。石碑ももっと呪文を出せ」
誰が家来だ!
っていうか、石碑をそんなにバンバン叩くなんてと自分は焦った。
神をも畏れぬ行為ができるなんて、本当にこの子は聖女なんだろうかと疑問がわいてきた。
「だいたい、ここで碑文を読んだらすぐ聖女になれるはずなのに、どうなってるのよ。もっと呪文をよこしなさいよ!」
ぶつぶつと文句を言いながらの暴挙に、正直自分は怖かった。
元々はおとなしい子だったのに聖女候補になってから厚顔無恥になったと有名だったが、それにしても怖すぎる……。
そうドン引きしていたら、背中が、石碑が柔らかく光り始めた。
「やった!」
振り返れば、石碑に新しい文字が浮かんでいた。
「え、えっとー……ΘЖΘ……Δφ?……ЖΦЖφ……」
「違うよ。ΘЖΘ⊿φδЖΦЖφだよ」
「ΘЖΘ⊿φδЖΦЖφ……」
間違っていたのを訂正したら、すべて先に読めと言わんばかりににらまれたので、しょうがないから先に読んだ。発音はできるらしく復唱する分には正しく言葉にできていた。
そして聖女候補が読み終わった時だった。
石碑の光がいきなり消え、一瞬あたりが真っ暗になった。
あたりを照らすのは、二つの月の月明かりだけ。
ぼんやりとした明るさに目が慣れたときに、森の中から魔物の群れがぞろぞろと出てくるのが分かった。
最初に反応したのは騎士たちで、皆を守るべく魔物と正対する位置を取った。
次に反応したのは聖職者で騎士たちのサポートと防御を展開しているようだった。
だが何故か魔法防御も物理攻撃も上手くいかないらしく、護衛騎士たちが慌て始めた。
その時、一番近くにいた神父がこちらに向かって声をかけてきた。
「聖女様、どうか我々に力を」
「え? 力って……」
「さっきの碑文は『その場にいる全ての者を守る術を得よ』という意味だったから、皆を守る力を頂いたんじゃないか?」
「ではそのお力で、我々をお守りください」
「どうやったらいいの!?」
「どうって、皆を守りたいと願えばいいと思う。だから必死になって祈り続けろ」
「命令しないでくれる!」
「祈り続けてください……とにかく早く」
聖女の力は祈りの力だ。祈ることによって聖女の力は発動すると言われている。
だから自分は聖女候補にひたすら祈るようにと説得し、聖女は頷いて祈り始めた。
だが、魔物の歩みは止まらなかった。
「そんな、どうして!」
このままじゃだめだ、自分も危険だが妹や殿下達も、ここにいるすべての人が死んでしまう。
そんなのは嫌だ、皆で街に帰るんだと、誰一人死んでほしくないと、誰か皆を守ってくれと心の底から願った時だった。
自分の左手が、目を開けていられないほど輝き、その光が落ち着いた時には魔物は消えていた。
何が起きたかはわからなかったが、とりあえず魔物がいなくなったことにほっとした。そして同時に、聖職者たちが一斉に声を上げた。
「おお、これが女神の試練だったのですね」
「ありがとうございます女神ハンナアイラ様。お喜び申し上げます、聖女様」
主にこの二つだったんだが、なぜか視線が聖女候補ではなく自分の方を向いている気がして、頭の中が疑問符でいっぱいになっていた。
「何か起きてるかわからないって顔ね」
「まあ、十中八九このせいでしょうね」
そう言いながらリージアとフェイス殿下が自分の左手を取って胸の高さまで上げたのだが、その甲には美しく花開いた木蓮の花が描かれていた。
「はっ!!??」
「えええええ!どういうことよ!!」
「「男が聖女ってあり得ない」でしょ!」
「「そこ!?」」
聖女と自分の叫び声にリージアとフェイス殿下のユニゾンが返ってきた。
「この文様は私の物のはずよ!!!返しなさい!!!!」
自分の手の甲から花が消えているのに気づいたリリサが発狂して自分に襲い掛かってきたのも怖かったし、それをやめさせるために騎士たちが容赦なく彼女を地面に押さえつけることで確保する様子と鬼の形相で抵抗する彼女が恐ろしかったし、何よりも自分の身に何が起きているのかわからず困惑した挙句……
自分の意識はそこでぷつんと途絶えた。
2日後、王城の客室のベッドで目を覚ました自分は、あの後のことを聞かされた。
とにかくリリサの罵詈雑言がひどかったらしい。
捕まっているのに口だけはフリーダムだったので「印を盗んだ」「私がヒロインなのに」「私の幸せを返せ」「活躍して注目を浴びるのは私だ」と叫んでいたらしい。
そのうちアーネスト殿下を涙で潤んだ目で助けを求めるように見て、ついで甘く媚びた声でおねだりしたそうだ。
「アーネスト様、お願い。そいつの左腕を切り落として……そうしたらきっと、印は私のところに戻ると思うの」
その声に操られるように、アーネスト殿下はふらふらと剣を抜き、自分の手を切ろうとしたらしい。
怖っ!!!
殿下も騎士たちに取り押さえられ、そのまま皆で王城まで引き返したらしい。
そんなバカ二人のことはどうでもいいので置いておくとしてだ。
「これ、どうすればいいんだ?」
綺麗に花開いた木蓮の印が浮かぶ左手の甲を眺めながら、自分は困惑したままだった。
「どうすればって」
「自分を聖女と認めるしかないでしょうね」
「公爵家を継ぎながら聖女の活動をするのって、可能なのか?」
「無理じゃない?」
妹よ、スパーンと否定してくれるな。
「聖女になったら教会に保護されるか、王家に嫁ぐしかないんじゃないの?」
「うっ……清貧な生活は無理だよ、自分には」
「まあ、公爵家は私が継ぐから安心して」
嬉しそうだな、妹よ。
王子妃教育もさっさと終了した君なら、領主教育もお手の物なんだろうな。というか、狙っていただろう、父さんの跡継ぎの座を。
「では、私が頂きましょうか」
「は?」
今、フェイス殿下が何か仰ったようなんだが…………え!?
なんで自分、手にとはいえ、フェイス殿下にキスされているんだああああああ!!!!!
「フェ、フェイス殿下!?」
「ふふ、ずっとお慕い申し上げていたわ、ロイル様。わたくしの婿になってくださいませ」
「えええええ!?」
目を白黒させて驚いている自分の横で、リージアが「プロポーズが済んだことを父様と陛下に報告してくるわ」と告げて部屋を出ていってしまった。
「え?あのっ!」
「これで男女二人きり……邪推されてもおかしくありませんわね」
二人きりって、と部屋を見渡せば、さっきまでいた侍女たちもリージアと一緒に部屋を出ていったようだった。
フェイス殿下は掴んだままだった自分の指先を、細くやわらかな指の腹でゆるゆると撫でながら至極の笑顔を浮かべ、とても楽しそうに自分に話しかけ始めた。
「わたくしの王配となって、わたくしを支えて頂けませんか?聖女様」
「せっ聖女って……男の自分が聖女っておかしいと……」
「ふふ。では聖男様という呼び名でも作りましょうか?」
「えええ」
「それともこのまま、聖女様と呼ばれ続けますか?」
「……お願いします」
頭を下げてお願いしながら、自分はそのまま布団に突っ伏してしまった。
もう何が何だかという感じで、とにかく寝逃げしようと思ったが。
「……邪推を本物にするのも良いかもしれませんわね」
「え?」
「このまま襲ってしまった方が早い気がしてきましたわ」
自分、口説かれてるというか襲われかけてる???
ギクッと反応した自分を見てクスクスと笑っているあたり、冗談だとは思うんだが……。
「結婚式がすむまでは我慢してください」
とりあえず顔も見ずにそうお願いした。
きっと先ほど同様のいい笑顔を浮かべているのだろうなと思っていたら、頭に柔らかく暖かいものが一瞬落とされて離れていった。
優しく嬉しそうな小さな笑い声と共に。
後日、無事聖女ならぬ聖男誕生と国民に広く知らしめられた。
フェイス殿下の導きの下、その花を開花させた聖男で、王太女殿下自らが望んだ伴侶としても。
フェイス殿下に言われるがまま神聖文字の碑文を読んだのは確かなので、間違ってはいないんだが、ハメられた感というか、殿下はどこまで読んで自分を巡礼に参加させたんだろうという疑問もわいている。
でもまあ、お互い初恋同士だったと分かった今はどうでもいい話なので、現状を受け入れることにした。
王太女として、女王として国民の前に立つフェイスを支えつつ、国を守る結界を貼る聖男兼王配として彼女の横に立ち続けると女神様にも誓ったのだった。
おしまい!
※厚顔無恥=ずうずうしく恥を感じない態度や性格を指す言葉。 他人の感情や立場を考えず、自分の都合を優先して振る舞う様。
お読みいただきありがとうございます。
面白いと思っていただけたら、ブックマークや下の☆での評価をお願いいたします。
リアクションの方もよろしくお願いします!
とても励みになりますし、頑張る気力にもなります。
男性が聖女になったら聖人なのか、聖男なのか?
というか男性が聖女ってなくね?
……って思ったら頭に浮かんだ話でした。
代表作「ドラゴンの使者・ドラコメサ伯爵家物語 ドラゴンの聖女は本日も運命にあらがいます!」を最近書き終えたばかりです。
URL:https://ncode.syosetu.com/n4604ho/
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