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死に戻った姉は妹に報復できない

作者: 篝火篝
掲載日:2026/03/03

短編でよくある妹に陥れられた姉で、妹の方に転生した主人公です

はじめまして、ジブリール・マラウ・ターウスです。


どうも異世界転生なのか憑依なのか、ありがちな電子書籍世界に来ました。たぶん死んだので、家族には本当に申し訳なく思ってます。遺族付加年金と脂肪退職金、生命保険あるので、そちらでよろしくお願いします。葬儀は簡素でいいし、墓参り大変だろうから樹木葬にしてください。


しかし悪役令嬢(笑)ではなく、悪役令嬢ガチのほうです。よくある可憐な美少女の妹が、真面目優秀の姉の婚約者を奪って、冤罪を押し付けて、姉が死ぬやつです。そして死に戻って復讐する感じのやつ。無論、姉は自覚のないハイスペック愛されとする。


オタク大好きの多重世界とか倫理学可能性世界と違うあれこれなのかはともかく、こういうの悪役令嬢(笑)になって、ハイスピード冤罪晴らすのではないか。できる気しないけど。


「ヤバ……さすがサークラ系清楚ビッチ。超可愛いですわ。色気ある可憐美少女……えっ、セイレーン?私が親なら溺愛通り越して心配で、塾も送り迎えするレベル。大丈夫?最近変な人多いから、心配で〜(親戚のおばちゃんトーン)」


悪辣を積み重ね、断罪確定なのにこのプリティさは「なるほどこれはまどわされますわ」となる。これは親や周囲が見落としたばかりでもない魅力がある。


二人目が一人目よりも可愛く思えるというケースは珍しいことでもない。

上の子供がイヤイヤ期や悪魔の3歳児に二人目がバブ。さらに赤ちゃん返りなどをされたならば、気持ちになみが生まれても無理はない。現代ならばSNSで書き込んだり、家庭センターや子育て支援センターに行くという手もあるが、少女のような年齢で子供を産めば、男で無いことに文句を言われ、舅姑や親戚に口を突っ込まれるのだから追い込まれたらノイローゼ気味にもなる。


香子はこの年若い母親に同情した。そして情報集のために水を向けた。


「ごめんなさい、お母様……。私が男の子に生まれていればよかったのに」

「そんな、そんなこと言わないでちょうだい!強くなれなかった私が悪いの!!」


泣きながら明かされる新事実。

光源氏の母親のように血筋は王族にも連なるが金のない名門から、権力も金もある貴族に援助と引換えでの結婚。嫁いだ家の采配が若い母に重くのしかかったのは当然であるが、母は「何も知らないお嬢様」と嫁いびりも受けていたのは察していた。


しかし、長女を取りたげられ、姑の名前を付けられたまでは知らなった。子供はすぐに乳母をつけられて毎日泣いたという。物心ついた頃には祖母が亡くなっていたが、次女の妊娠中は病床からの指示で、男児祈願のミサに引き出され、結果として早産。

誰もが、何なら教会関係者すら「あの意味不明なミサに妊娠後期で付き合わされたせいなんじゃね?」という空気があるという。


そのため、両親ともに次女に罪悪感を抱いており、それを家門の人間も臣下も知っている。そしてやっと手元で可愛がれたのが次女なのだ。徳川家三代目のゴタゴタかな?それだけではないだろうが、新たな女主人の意向や同情は確実に死に戻り前に影響しただろう。


ましてや次の当主はヒロインであり、女であれば反感は強い。さらにあの性格だ。前侯爵夫人の影響がつよく出ている。能力評価制度導入で張り切り、低評価もつけないといけないからと真面目に実施したならば、部下がやる気を無くしたり副業をしだしたり、ついにはメンタルヘルスで脱落しだす管理職状態。

若いお嬢さんにそこまで要求するのは酷だし、重責を負わされた世間知らずの上に、肩肘をはりすぎて厳しかったところはある。フォローする家臣とか学友いなかったのか。

その立場に長子として優遇されると引き換えに、いざとなれば過剰な責任の矢面に立たされるのが特権階級の悲しさだ。学級委員的な性格では悪意の策略に太刀打ち出来なかったのだろう。それやったのは、私(仮)だが。しかし、様々な罪を積み上げられたのだから、冤罪を作り上げる下地はあった。


婚約者は元からの性格もあれど、長女の生真面目かつ壁を作る性格が好みでなく、無意識にマウントを取られてると感じたのかもしれない。妻が高学歴かつ高収入な場合、拗らせて家事を押し付けたり、家を自分が建てたと詐ったりすることは現代社会の恋愛結婚でも引き起こされる。そこが政略結婚で実質婿入りで、相手はハイスペック女子なら、鬱屈も想像がつく。


ただ、死に戻りをして遠慮せずに行動してからは未練を見せていたし、ヒロインは元からハイスペックであるので、家臣団が支えれば、浮気程度で済むだろう。そうでなくとも本人が努力とか勇気でどうにかしてもらうということてで。


個人的に母親が気の毒になり、ベッドでも出来るお手伝いとして、一緒に礼状やご機嫌伺いの手紙書きを行いをする。連絡手段や情報収集として手紙は最重要で、また貴族婦人の重要な仕事でもある。やりたがれば、将来のためにも教えられた。看病の合間に家の書類や帳簿を見ているのでしげしげと覗き込んでいると、『身体は弱いが、手伝いの出来る賢い娘』として母親には映ったらしい。屋敷を連れて歩き、家の取りしきり方や家宰との対応も教え、女主人としてのあり方を仕込んでいった。領地についてのやり取りも夫不在の際は妻の仕事であるらしく、色々と教えてくれた。嫁入りの予行練習である。


子供の特権で思いつきを装い提案してみれば、「いつもベッドで本を読みながらそんなことばかり考えていたの?」と驚かれ、頬を撫でられた。そして静養も兼ねて領地に母と一緒に行ったときはかなり色々したのは余談である。これで評価に『ちょっと変な子』も加わった気がする。


今のところ、姉(仮)とは顔をろくに合わせないこともあり険悪ではないが「お姉ちゃん(跡取り)なのだから我慢しなさい」がナチュラルでは、仲がいいとも思えないし、コレーの記憶をさぐってもあまり仲の良かった記憶はない。学者を招いてのスパルタ教育の真っ最中で、ホテルのような大きさの屋敷に住んでいるので顔も合わせない。この時代の貴族の長子の優遇を思えば、兄姉の自覚がない方がまずいので、しょうがないことだろう。

しかしながら爵位と特権、莫大な財産を得る代りに、姑に奪われたことで母親からの愛を失い、厳しい帝王教育を受ける長子と手元で育てられ愛されるがスペアであり期待されていない末子(しかも栄達の難しい女児)の長年積み上げられた恨み辛みは現代の比ではないだろう。


これが自分の変化球走馬灯や統合失調症の妄想でなくとも、次女は元からスペアの事故保険なのだから穏便にフェードアウトするのが一番である。

仮にジブリール(真)が戻ってきても、恥に思わない立場かつそれなりに満足できそうな場所を確立するのが、最低限の義務であろう。思うに彼女は貴族の姫君に向いているようで向いていなかった。そこにおさまりきらなかった衝動と熱量が最悪の方向に走り出した。承認欲求もあるのだろうが、この社会構造の息苦しさで女に産まれ、当主に着く姉に向けられたのならば、別の方面も用意してあげよう。


それに、死に追いやるつもりはないので破綻はしないが、元から仲の良くない姉が当主の実家で気兼ねしながら修道女のように暮らすのはツラい。



※ ※ ※



実家は貴族でも歴史ある名門。降嫁の姫君や庶子を婿養子に迎えたこともあり、王族に近いと言っても過言ではない。そこに姉から婚約者を奪い、周囲を味方につける美貌の少女とかやるじゃねえか。だが、病弱。

現代日本ならば予防接種に小児科通いと投薬でどうにかなるかもしれないが、この時代では知識にある食事と予防を総動員するしかない。


ヤスパースなんて、難病、ナチス、奥さんユダヤ人、第二次世界大戦という四重苦超暗黒時代を生き延びてラジオで語りかけたんだ!異世界転生で貴族なんて大当たりやろ!!YES I Can!!挫折から学ぶしかねえ!!


まず落ち着いて現状から理解してみよう。


血筋的には他国の王族も狙えるが、貴族の青い血を残す役目となると中々難しい。

じゃあ現代人としては自立はとなるが、出来なくはないし、女性にもギリギリ相続権や財産権はある世界であるが、実家が零落したわけでもない貴族女性が経済的自立など詩人や小説家等の文芸関係か事業、時々教師。最近は医師になるものもいるが、基本的に生活をするための職となると下級貴族あたりの令嬢が多く、数も少ない。下準備はするがまだ10歳には厳しく、未成年のうちにフェードアウトするには結婚が早道だ。


おまけに万が一の場合、長姉自分を守ってくれる男が必要であり、やらかしたり没落しそうな人間は論外。しかし、時期当主をスルーできる男など、とっくに売約済みである。

これは地位があり甘やかしてくれそうな異国の王族の後妻か大貴族のおじいちゃんを狙うべきかと思っていた。前世で家庭についてはやりつくしたので、ロマンチックは求めていないし、名門の奥向きなどハードな仕事だ。同じ年頃の青少年は、子供に見えて無理。今はほんの少女だし、大人の男は若い娘は好きでも、人形遊びしていそうな痩せた小娘などに興味を持たないものだ。興味を持つ人間は要注意人物の変態だろうし、家としてもワケアリクズには嫁がせること了承しない。これは逆に中々見つからないかもしれない。


そう思っていた時期が私にもありました。


「はじめまして、ひとりかな?」

「まさに泡から生まれた少女神のように可憐だ」

「何やらお悩みのようだ。よろしければ相談に乗ろうか。どこかでーー」

「ここから抜けないかい」

「私のことはどう思う?」


質問が1秒ごとにストレートになっていく。

ついでに距離も近くなってきている。誤解でも何でもなく、これ、私に気がありますわ。知ってる?これ、パーティーとかじゃなくて聖域たる教会で社交界デビューもしていない子供に言ってるんだぜ?世も末だよね?


母は教会の一角で、最近子供を産んだ親族に授乳クッションを贈っているはずだ。

森番の妻が赤ちゃんを抱いていたのを見て思いついたという形で提案してみると、「なんで私は自分の時に思いつかなかったのかしら!」と感動していた。

喜んでくれるのは嬉しいが、お茶会から抜けて庭園を覗き、なんとなく政治の前哨戦をしてそうな人を眺めていたら見つかり、今はジブリールが一人だけである。


いや、まさかこんなちびっ子相手にそれはないからハニトラか?とそっと伺えば、こちらの首筋をガン見していた。成人男性の真顔に、おいおい子供相手にマジか、と流石にぎょっとしたのに気がついたのか、ニコと微笑むが手遅れである。


母に渡した、前世の有名作家と哲学を交えた物語が子供の教育のために広く広まってしまいますそれでジブリール個人にも興味を惹かれたらしい。割とパクリであるが、不思議と罪悪感はない。やり遂げればオマージュも達成感があるものだ。


「私と、寝たいんですか?」

「うん、君が欲しい」

「お母様とお父様が結婚していいと言えばいいですよ」

「そこは私に任せておいてくれ」





青褪めて涙ぐみながら母が父を責めている。父は強張った顔で責められるにまかせていた。

母の気持ちはわかるし、大変に申し訳ない。ごめん、憐れな仔羊どころか共犯っす。


あの後、現国王の年若い叔父であるサバーリヤ大公に結婚を申し込まれた。


血塗れの大公と近年の戦争で知らぬものはいない。年上の甥を助け、その知性を盤石にした。先々代国王の二番目の妃の息子であり、王位継承権争いを避けるための元聖職者であるが秀英を謳われた頭脳は、戦場と政治でも抜群の働きを誇った。

「その狡知、神の使いにあるまじき」と言われることとなった、国王を守り、王位を盤石にした策謀の政治家。


そして、その大公と政治的に争うことになり、没落こそしなかったものの、厳しい立場になったのが我が家が所属する一派である。

そこで開祖以来を謳われるやり手の政治家に王家傍系の母親を持つ家の娘を嫁がせての和解は定番であり悪くないどころか最善だ。しかも向こうから気に入られた。政治だけではないとは期待できる。そう、年齢差さえなければ。年は三十代になるところです。親とのほうが年が近い、というか同世代。


だから父親は悩んでいるし、母親は泣いている。ちょっとどころでなく、後ろめたい。


しかしよくよく考えると、原作当初で妹が婿をとって家督を継ぐのは先代の影響が強い長子を排除して、名門で裕福だが綺麗で無害なアクセサリーとして落ち着くという意思表示として受け入れられた可能性がある。もしくは利権の一部を渡して黙認か。


どう考えても長子を勘当しても醜聞は残る。そして死に戻って来たとしても、お家騒動ほど体力を無駄に消耗させるものはない。江戸時代の大名なら最初の時点でお取り潰しの危機だ。私ならば長子を乱心ということで押し込めて隠居か病死させる。そして身内を纏めるために血族か和解のために向こうから婿を取る。


把握しながら家をエゲつないくらいに引っ掻き回されたのではないだろうか?姉妹してやっちゃったかもしれんね。


「お父様、お母様、わたくし、結婚します」

「ジブリール!!何を言っているの!!」

「どうか病弱な身ではありますが、この家の娘として生まれた役割を果たさせてくださいませ」


頭を下げると、ワッ!!と母親が泣き出してジブリールを抱き締めた。綺麗な顔立ちをした父親は片手で顔を覆ってしまい、「すまない」と言った。


いや、もうなんか本当にごめん……。


使者は纏まった話に大喜びをして、次の日には大公が訪れた。こうして結婚は決まったのである。



※ ※ ※



ここまで原作崩壊させたし、そもそも嫁いで家にもいないのだから、長子である姉がどうこうなんて起こらんだろ。普通に政争や戦争ばかりはどうにもならないが、それはしょうがない、ドンマイということで。


そんな風に思っていた時期が私にもありました。


「ジブリール」


実家を訪れた際に東屋で庭園を眺めていた際に自分を見る長子の恐怖と嫌悪、怨嗟の目にまさかとこちらこそ驚いた。目には拭いきれない昏い陰があった。つまり彼女は死に戻ったのだ。まさか未来で夫と組んで姉を横死でもさせたのだろうか。死に戻られると困るから、隠居くらいにしておけばいいのに。


「お久しぶりにございます。姉上」


探りを入れるためにも立ち上がり、あえて仰々しく礼をする。本来は大公妃となりら王族の一人となった自分が礼をする理由などないし、真面目な姐ならば止める。しかし相手は眉を顰め、そして息を呑む気配が伝わった。そう、立ち上がれば、僅かに、しかし明確なほどに膨らんだ腹に。


「ジブリール、貴女、いったいーー」

「ああ、ジブ、寒いのに、ダメじゃないか。すまないね、どうしてもママがいいらしい」


丸っこい頬を涙と鼻水でベショベショにした1歳半ほどの男の子を抱き上げた大公が早足でやってくると、飛び出さんばかりに身を乗り出す子供を受け取るのも慣れたものだ。

愕然とした顔でこちらを見る姉に大公が「おや、姉上」と冗談めかして言う。姉が慌てて腰を折る。その顔からは完全に血の気が引いていた。確信した。これは原作の死に戻った主人公だ。


「姉上、つわりも酷くて、子供が仔犬みたいに騒がしいから婚約式出れないかもしれないんです」

「どうしてーー」

「お父様とお母様、姉上の婚約者の方は身体が一番大切だと言ってくれたんですが、姉上には私から謝りたくて。ごめんなさい」


悪夢でも見ているような顔をした主人公を残して、駆けつけた侍女が抱き上げようとしてもベッタリの息子を抱き上げたまま屋敷に戻る。


初孫、それも王位継承権すら持つ次期大公になる男児に母は夢中だ。早すぎる妊娠に心配していたが、生まれてみれば母子共に健康。出来れば次の子も男児がいいと言われている。予備は必要だと盛り上がっているし、何なら家臣たちは男児誕生に「お世継ぎ!!」と歓喜していた。男女差別そのものだが、まあ時代的にこんなもんだ。


例の婚約者は『帝国の真珠』と呼ばれる自分と男児を見て、「いいなぁ」という顔をしていた。あれでは苦労するだろう。これでも夫を助け、また様々な利益を生み出したラッキーマスコットとして有名になれるくらいには努力した。

自称錬金術師を捕獲して陶磁器作らせたりもしたし、婚約祝いに一揃用意している。


「……前の『姉上』のほうが好きだったな」


学級委員的なナイーブさがあり、恐る恐る甥を抱き上げて、ミルクを吐かれて慌てている少女のほうが。


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