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力とその一閃  作者: 遠井 椎人
第一章

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第一章 第3話 探求

 アルスタッドにやってきた浮浪の少年が雷を撃つ、という話が町に広まっていく。


 魔法で雷を使うなんて発想自体がなかった。魔法による熱作用の発展のためか、雷を研究しようという動きがそもそもなかったのだ。


 今までにない魔法に町の人々は驚いた。大都市では大騒ぎになっていたかもしれない。でも、勤勉に働く少年は少し違ったものを女神メーデルシア様からもらっていたのだ、と地方の町ではおおらかに受け入れられた。


 マガスの雷の魔法が話題に上がると、パン屋の職人も、農業の従事者も、加工場の工員も、皆が口を揃えて「ああ、あの良い子ね」と微笑ましく反応していた。アルスタッドはそういう町なのだ。


 とりたてて暖かいと表現する必要もなくなってきたある時、マガスが鍛冶屋の外のテーブルで、工房の職人と二人で休憩していた。


「マガスがここまで頑張るヤツだとは思っていなかったな」


 いかにも鍛冶屋という風貌の大男がマガスに言う。


「カールさんが色々教えてくれるおかげです」


 大男は名をカーライル・ハマーといい、カールと呼ばれている。


「クソ暑い工房で丁度いい感じに運んできてくれたりして助かってるぜ。頭の回転も早いし、大したもんだ」


 カールはマガスのことをとりたてて良くしてくれている。そこへヴィルがやってきた。


「カールさん、マギー、今休憩中ですか?」


「おう、ヴィル。ちょっと休んでてな。コレットさん達は元気か?」


「ええ、おかげ様で。お父さんもお母さんも元気にやってますよ」


 カールが鍛冶屋で見習いとして働いている頃から、雑貨屋にお使いに行ったりするなどでヴィルの両親とは交流がある。ヴィルも、小さい頃にカールに遊んでもらった記憶がある。


「じゃあ、俺は工房に戻るかな」


「あ、それなら僕も……」


 立ち上がったカールに続くように、マガスも立ち上がろうとしたら制された。


「いやいや、マガスはヴィルとゆっくりしててくれ。一人でやりたいこともあるしな」


「ああ、それじゃ」


 カールが工房で一人であれこれやるのは珍しいことではないので、邪魔をするのも悪いかと思ってそのまま戻る。そして、カールと入れ替わるようにヴィルが座った。


「ちょっと近くまで来たから寄ってみたの」


 手持ちの鞄から、ごそごそと小さめの袋をいくつか取り出す。


「クッキーが上手く焼けてね、ほら、これが特にうまくできたの」


 ヴィルがクッキーの入った袋を置いた途端にバチッと音がした。本人も驚く。


「あ、ごめん。何か最近多いんだよね、びっくりさせてごめんね」


 小雷と呼ばれる現象、かつては異端の力と難癖を付けられることもあった。文字通り、小さな雷のようなものだろうと言われている。


 しかしマガスは、自然現象ではないことを直感した。ヴィルが驚愕するレベルの魔法による圧を一瞬でかけた、マガスはそう感じ取った。ただ、幸か不幸か魔法の攻撃力としてはおそろしく出力が低かった。


「ヴィル、今のは魔法だよ……おそらく、僕と同じもの」


「あれ? そうなの?」


 思ったより冷静なヴィルを見て、マガスは一呼吸置いた。


「うん、雷の魔法。練習して、もっと使えることを目指してみたらどうかな?」


 マガスは練習を勧めるがヴィルは戸惑った。


「え、えへへ……私、魔法はどうも苦手みないなんだよね」


「僕がコツとか教えるようにするから」


 普段は温和なマガスが、思いのほか熱心に言ってくる。一方、かつての騒動の記憶があるため、ヴィルは魔法に対して気後れしていた。ただ、以前のような結果になるとしても、マガスに良く言われるのは悪い気がしないという気持ちもある。


「そこまで勧められたら……ちょっと、やってみてもいいかなぁ、なんて」


 マガスがどのような真意で勧めるのかヴィルには正直量りかねたが、その目には冷やかしめいた興味というものはないように見えた。前向きな好奇心と、ヴィルに対する何らかの熱意、そんな応えてみたくなるようなものを感じた。


 色々と感情的に流されている感じがするものの、ヴィルは再び魔法に取り組んでみることにした。


*****


 マガスはランタンに着火して以来、雷の魔法について色々と試していた。


 密度の高い所と低い所をイメージして高い方にガスを注ぎ込む、すると低い方へ吸い込まれるように移動する、という感じだった。この密度の違いを雷圧、移動の流れを雷流、と捉えた。そしてこうした一連の動きを作ることにより、雷に酷似した現象を引き起こすこと、それを雷撃と命名した。


 これをヴィルに伝えるが、なかなかうまくいかない。意識的に雷撃とすることができないのだ。


 練習も思うように進まず、二人で木陰で休んでいると、木から落ちた実がコロコロと転がるのが見えた。マガスは、ちょっと違うかなと思いつつもヴィルに言ってみた。


「坂道を作ってボールを転がす、っていうのはどうかな?」


「ああ! それ! 分かり易い!!」


 思いがけない反応に驚く。さらに驚くことに、すぐに意識的に雷圧を作ることができるようになった。


 しかしながら雷流が大きくならない。来る日も来る日も微弱なバチバチの繰り返し。


「なんかねー、ボールが大きくならないんだよね」


 あまり大っぴらに人前では練習しないようにしているものの、ヴィルがバチバチいわせるのは少し人目についた。


 エストブランではポットに避雷針を付けるようになったの? と揶揄されていた。

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