付録1 いつかどこかでの会話
「隊長なんだけどさー」
「あー、この前何もないところでよろけて恥ずかしそうにしてた隊長が何?」
「何それ?」
「遠目で隊長だ、って見てたら何もないところでよろけて、慌てて周りを見回してすっごく恥ずかしそうにしてたよ。近くに誰もいなかったけど」
「へー、コケたことよりその反応が何か意外。気にせず笑うタイプかと思ってた。いやそれより、隊長の髪飾りってエストブランの中でも目を引くけど、ちょっとデザインが今風じゃないよね」
「他のを勧めても笑顔で流されるんだってさ。この前も第二王女が王宮付きの商人にいくつか持ってこさせたのに、一通り見ただけで断ったらしいよ」
「うへぇ、第二王女って隊長に似たフレンドリーさがあるけど、私だったら色々考えちゃって断れないなあ」
「ていうかビルヴァレットのナンバーゼロに似てない?」
「あの幻とかいう? 超プレミアの? でもブランド銘板がなかったような……ナンバーゼロにも銘板あるって話じゃなかったっけ?」
「何? 語って欲しい? 語るよ? いい?」
「確認ウザいから、さっさと言って」
「じゃあ……ナンバーゼロは正式なブランドになる前の作品だけど銘板がある。ていうかこの名前も公式じゃない。確か教団動乱終結後くらいに少し出回った程度。ビルヴァレットはモデル生産とはいえ個別製作するからどのナンバーも数は多くないけど、そんな中でもナンバーゼロはかなり希少らしいよ。で、隊長のは銘板があるべきところに代わりに可愛らしい感じのポットが金メッキされてる」
「可愛らしい? しかもなぜにポット?」
「そもそも荘厳がメインテーマのビルヴァレットシリーズからしたら、全体が何というか、こう柔らかくて優しい感じなんだよね」
「贋作とかパクリとかなのかな?」
「いやあ、素人目に見てもエストブラン特有の雰囲気はあるし、ちゃんとエストブランの認定刻印もあったよ」
「ナンバーゼロの試作品とか?」
「刻印は審査が厳しくて、どんな基準かは知らないけど試作品みたいなものは通らないって聞いたよ」
「でも、関係あるにしても価値の重み付けが少し違うよね。身につけるのは避けて、大事に飾って愛でるレベルのものじゃないの、ナンバーゼロって」
「戦闘作戦中は流石に外してるけど、それでも抗魔ケースに入れて肌身はなさず携帯してるってさ」
「凄いね。戦闘に携帯できる小物用の抗魔ケースって、いくらするんだろ? 特注品だよね?」
「小さくて、頑丈で、嵩張らなくて……そもそも敵からしたら、隊長はスーパーアンタッチャブルなんだから、普通のケースで充分だよねえ」
「大事にすることの次元が違うんだよ、きっと」




