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力とその一閃  作者: 遠井 椎人
第三章

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第三章 第21話 次の旅へ

「そうですか。大きな決断をされましたね」


 シリルが穏やかに言う。


「はい。我々も王国軍と共に、王都に向かいます」


 ジョンが、改めて決意を口にする。


「実は、我々は進む者と残る者で、ほぼ半分に分かれることになりました」


 誰もが驚くも、シリルは続ける。


「中央教団と対峙するのは、慈愛の導きの理念に適う行為ではない、という意見が出されました。私もこれには賛成です」


 凛とした佇まいが漂う。初めて慈愛の導きの説明を受けた、あの時のことを思い起こさせる。


「ですから、慈愛の導きはこれまで通り、不条理な搾取や略奪と戦います。そして、中央教団との対峙を望む者達で、新たに隊を作って王国軍と連帯します」


「すると、シリルさんはどちらに?」


 ジョンが、確認するように尋ねた。


「私は、慈愛の導きを信念ある者達に託し、新たな道を進むことにしました」


 その表情に決意が滲む。


「幸いにも、私個人に同調してくれる者達もおり、概ね半分が共に来てくれることになりました。新たな門出として、お互いに檄を飛ばし合いました」


「なるほど。ちなみに、新しい隊は何か名前があるのですか?」


「私は、名前はいらないと言ったのですが、お恥ずかしいことに、皆の圧しに負けてシリル隊という名前になってしまいました」


 シリルとしては珍しく、照れくさそうな表情を見せた。


「皆さんは、別の名前にしてください」


「いや、私達はシリル隊の雷貫分隊ですよ」


 ジョンが、晴れやかな表情でそう答えた。


*****


 王国軍とシリル隊が連帯に至ったが、良くも悪くも想定とは少し違っていた。


 まず、元来からの義勇軍のメンバーは、前線のバックアップとして配置された。そして、雷貫分隊はそれとは別に後方支援として配置された。激しい戦闘も覚悟した決断だったが、少々肩透かしを食らった感があるのは否めなかった。


 もっとも、慈愛の導きの誰もが、本格的な軍事行動には不慣れであることは間違いない。そう考えると、王国軍にとっても、義勇軍にとっても、この采配は妥当と言えるだろう。実際に、新たな戦場の雰囲気に対して、徐々に順応していくことができた。


 その一方で、雷貫分隊の活用の仕方によっては、もっと有利に戦況を進められたと感じられることもあった。シリルも何度か掛け合ってみたが、王国軍には検討の余地すらないように思われた。


 これは、王国軍も現時点では大規模な衝突は避けたい、という考えからきているのだろう。中央教団は曲がりなりにも大儀を掲げており、それに明らかにそれに反することは慎みたい。そうすると、雷貫砲は威力も刺激も強すぎる。このような判断があったとしても、不思議ではないだろう。


*****


 後方支援として配置されていても、戦闘行為が必要なこともあった。


 献槍隊が、兵站を直接的に崩そうとして、奇襲をかけようとすることがよくあるからだ。その場合、身軽で手数の多い戦法で攻めてくる。現状の雷粒レインの威力と範囲では、近距離での牽制が主となるため、かなり押され気味となってしまう。


 そこで、誘雷球という銅球に雷導索を付けたものを作成した。誘雷球に付けた雷導索を雷導尾と呼んだ。


「左前方から四人来る。」


 レナが、小走りで戻りながら報告する。ジョンがそれを受けて指示を出す。


「俺は右警戒継続、カールさん下がって誘雷球、レナは事後対応準備」


「マガス、ヴィル、行くぞ」


 カールが下がりつつ誘雷球を構えると、マガスとヴィルがその近くで構える。


「しゃっ!」


 カールが誘雷球を敵兵に向けて投擲する。マガスが磁線で投擲の方向を微調整する。


 誘雷球自体は銅球だが、鉄の部分もつけてある。磁線の作用を効かせるためだ。もっとも、投擲直後に調整できる程度なので、必ずしも任意の軌道にできる訳ではない。


 ともあれ、誘雷球が雷導尾を引きながら、放物線を描いて飛んでいく。


「えいっ!」


 バシッ!


 ヴィルの掛け声と共に、雷導尾に雷撃が走り誘雷球を経由して敵兵に着雷する。


「ぐぁっ!」


 敵兵が怯んだところで、念のためにレナが反撃に備える。そうしていると、周辺の王国軍の兵士が献槍隊への対処をしてくれる。


 場合によっては、ジョンやカールも着雷後の対応をすることができたし、次の誘雷球を投げることもできた。


 誘雷球は雷導尾で遅くなる半面、軌跡の安定性が向上するし狙いもつけやすくなる。また、カールだけでなくジョンも投擲できるし、マガスも雷撃を撃てるので、理論的には戦術の幅があった。ただし、投擲と魔法の連携となるので、必ずしも自由自在な戦術を実践できる訳ではなかった。


 そして、監視の役割も兼ねているのか、雷貫分隊の近くには、王国軍の兵士が数人配置されているが常なので、事後の対応に苦慮することもほとんどなかった。


 状況にもよるが、誘雷球が有効に機能した後、レナがマガスとヴィルの近くまで寄ってくる。


「ありがとう。助かったわ」


 そう言いながら、ヴィルの肩を軽く叩く。


「うまく行って良かったです!」


 もちろん、すぐに持ち場から離れられないこともある。そうした時でも、最終的には声をかけているようだった。


 マガスは、ヴィルの雷撃の出力が、少しずつ強くなっていくのを感じていた。自己肯定感という正の感情によるものなのかもしれないし、ある種の罪悪感という負の感情によるものかもしれない。正直なところ、何がどこまで作用しているのかはわからない。


 そうしたヴィルの成長は、頼もしくある一方で、精神的な負担となってしまうかもしれない、という懸念もあった。それでも、レナのちょっとした配慮は、非常に効果的だと感じていた。


 王国軍との連帯の中で、専守防衛の態勢が主となり、旅は次の段階へと進んでいった。

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