結婚式②(結末)
「エルミール、どうしてそんなことを? それは事実なのか?」
エドワードの驚愕した声が響いた。だがエルミールは取り合わない。
「はい、エドワード様もお聞きになっていたはずですわ。私は村人からの証言を聞いて警察に相談したまで。このまま見過ごすわけには行きませんもの。」
彼女にとっては、この結婚式が台無しになればそれでいい。それにより姉である私の評判が下がるのことがそもそもの目論見だった
エルミールの思惑通り、周囲の貴族たちもざわつき始める。
「確かに……おかしいと思っていたのよ。フェンネル様が攻撃士の魔法使いだなんて。」
「ドラゴン討伐だなんて、嘘みたいな話……最初から疑っていたわ。」
ヒソヒソと、あらぬ噂があっという間に広がっていく。
「エルミール。他でもないあなたがそんなことを言い出すなんて……とても残念です。」
突然、私は声を張り上げて前に出た、そしてまっすぐ彼女を見据える。
「私は攻撃士として、ドラゴンを討伐しました。嘘をついているのは――あなたの方ですよ。」
普段おとなしい私が凄みを聞かせてそう言い放つので、エルミールは目を丸くして言葉を失った。
「まず、私が村を破壊しようとしたこと、それはあなたが村人につかせた嘘ですね。
実は、この話が上がったときに、私達はエドワード様から直々に相談を受けていたのです。
あなたが私の結婚式を台無しにしようとしていると。」
(えっ…、エドワード様が?)
信じられないというようにエルミールが夫を振り返ると、エドワードは厳しい顔をして顔でうなずいた。
「そして、あなたが私とユリウス様の結婚を良く思っていないことも、知っています。」
「昨晩、君が私の部屋へ来て突然告白してきたことも、私はフェンネルとエドワードに相談してある。」
傍に寄り添っていたユリウスが声を上げた。
(なっ…!!)
「その話をするとエドワードは、エルミールが“式の日にフェンネルを逮捕させるつもりだ”と話してくれたんだ。君は、自分の姉も、夫すらも裏切った。もう、言い逃れはできない。」
「ち、違います……!私は決して皆さまを裏切るようなことは……しておりませんわ……。
信じてくださいまし……!」
エルミールは泣きそうな顔で必死に縋りつく。
(な、なんで……どうして全部バレているの? 完璧に作戦を練ったつもりだったのに……)
更にユリウスがトドメを刺すように静かに告げた。
「それに、君はそもそも治癒魔法使いとしても失格だ。」
「っ……!」
「君には治癒の素質はあるが、潜在的な魔力量が極めて少ない。
……今までは、フェンネルの魔力を“奪って”治癒魔法を発動していたのだろう?」
ユリウスは以前屋敷でエルミールが治癒魔法を施して見せたときのことを覚えていた。
(ど…どうしてそれを…?)
ここまで見抜かれてしまっては、エルミールにも反論の余地はなかった。彼女は観念したように肩を落とした。
「君が私たちの結婚式を台無しにした罪は重い。
しかし……フェンネルの妹という立場を考慮し、警備隊に突き出すのは見逃してあげよう。今すぐここから出ていきなさい。」
そう言い渡すと、エドワードは蒼白になったエルミールを引きずるようにして、式場から連れ出してしまった。
* * *
「すまない。君との晴れ舞台だったのに……こんなことになってしまって。」
「ユリウス様が気にすることではありません。
私のほうこそ……妹が、すみませんでした。」
エルミールが本当に愚行を働くのかどうか、実際に確かめなければ判断できなかった私たちは、一旦彼女を泳がせることにした。しかし、まさか本当に私を陥れようとするとは思わなかった。
にわかには信じがたい。と表面上は思っていたけれど、確かにこれまでのエルミールとの関わりから、全く身に覚えがまったくないとも言い切れないので、その意味では、私も複雑な気持ちだった。
「気にしないでくれ。
ただ……君のために、今日の日を最高のものにしたかった。
もっと毅然とした対応をしていれば、エルミールも諦めたかもしれない。」
「いいんです。今こうして私は、みんなに実力を認めてもらえましたし……誤解も解けました。
無事に式も終えることができましたから。」
思わぬハプニングには見舞われたが――結果的には、万事うまくいったと言えるだろう。
ユリウス様は少し照れくさそうに、それでも真剣な眼差しで私を見つめた。
「フェンネル……改めて聞いておきたい。
私は君に対して、まだ至らないところがあるかもしれない。
それでも、これからも君を幸せにすると約束するよ。
……これからも、ずっとそばにいてくれるだろうか。」
不意にそんなふうに畏まって言われ、私は頬が熱くなるのを感じた。
「……はい。
これからも、ユリウス様と二人で、一緒にいたいです……。」
そう答えると、ユリウス様は誰より優しい笑みで私を見つめ、そっと手を取ってくれた。
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