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禁じられた破壊魔法使いの私は、呪われた辺境公爵へ嫁がされましたが、私には何が呪いなのかよくわかりません。  作者: 秋名はる
第2章:妹編

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上級貴族たちの洗礼

会場へたどり着くと、早速“上流階級の洗礼”を受けることになった。


長らく社交界に姿を見せていなかったユリウス様には、会場中の注目が集中した。

もともと悪い噂がまことしやかに囁かれていたこともあり、高名な公爵の実物――それも若く、美しい佇まいの本人を一目見ようと、貴族たちは興味津々といった様子だった。


「ユリウス様、お会いできて光栄です。北でのご活躍、かねがね聞いております。」

「本物を拝見するのは初めてですが……まあ、なんて立派な方。どうぞ今後ともお見知りおきを。」


興味を持った貴族たちが次々と押し寄せてくる。

ユリウス様は慣れた様子で対応していたが、隣の私はてんやわんやだった。


「こちらのご令嬢はどなた?」

「あまり社交界では見かけませんわね。」

「どこかの小男爵家の令嬢と聞きましたわ。ユリウス様の隣に……何か親しい関係?」

「婚約者ですってよ。ユリウス様ほどの方が、どうしてこんな辺境の男爵令嬢を?」


ヒソヒソとした声があちこちから聞こえてくる。

彼らは一様に私を値踏みするような目で見下ろしてくるのだった。


「ユリウス、ごきげんよう。久々に顔が見られて嬉しいわ。体調はもう良いの?」


「叔母様、お久しぶりです。」


ユリウス様は、叔母に当たる侯爵夫人――この夜会の主催者であるヴィクトリア夫人を私へ紹介した。

私は姿勢を正して挨拶をする。


「この方が、あなたが言っていた婚約者なのですか。」


婚約者という言葉に、周囲の貴族たちは一斉にざわめいた。

ヴィクトリア夫人は私を上から下までゆっくりと見回す。


「まあ、とても可愛らしい方ね。」


当たり障りない様子で言った。

それから公爵夫人とユリウスは、何か二人きりでお話したいことがあると言って、二人で奥の部屋に入っていった。一人取り残された私には、取り巻きになっていた他の貴族たちの洗礼が待っていた。


「あなた、どこか弱小男爵家の令嬢なんですってね。」


「どうしてあなたみたいな子が、ユリウス様の婚約者まで成り上がったのかしら。」


「何か汚い手を使ったに決まっていますわ。分不相応な。」


ユリウスが目の前からいなくなったことに乗じて、他の令嬢たちがここぞとばかりに本性を表してきた。私は返答に詰まってしまう。だって、彼女たちの言っていることは、まあ正しいといえば正しいから。あまりにも格差のある婚約を彼が了承しているのは、私も不思議ではあるが、理由がまったくないわけではない。


「どんな手を使ったの? お金で買収したとか?」

「私達になくて、あなたにだけユリウス様の心を射止める何かがあるとでも言うの?」


「えっと・・・そうですね。

 私だけにあって、貴方方にはないもの、ありますよ。」


それは魔力だ。彼のために魔物を倒して呪いを解いたこと。ユリウス様が私に対して買っている要素があるとしたら、むしろそれぐらいしか思いつかない。


「はあ? あなた何言っているの?

 私はあなたよりもずっと上級貴族の娘なのよ。 一体何が勝っているというの。」


「それは_。」


私は言葉に詰まった。なぜなら私の力は色々誤解を生んでしまうもの…。


「なんて高飛車な子なのかしら。

 ふん、分をわきまえるってことを教えてあげるわ。」


言葉に詰まる私を見て、図に乗った令嬢の一人が手を振り上げた。私が目を瞑ってその一撃をこらえようとしたとき_。


「パシンッ!」


乾いた音がしたが、それは私になんの痛みも衝撃も伴わなかった。

恐る恐る目を開けると、眼の前に掲げられた彼女の手のひらを、後ろから誰かが掴見上げて動けないようにさせている。


「ユ、ユリウス様?」


私への一撃を防いでくれたのはユリウスだった_。


「私の婚約者に手を出すとは、一体どういうつもりだ。アンネ伯爵令嬢」


鋭い声で威嚇されて、アンネ伯爵令嬢と呼ばれた女性は竦み上がった。


「フェンネルに無礼を働くものは、この私への不敬と捉える。よく覚えておけ。」


そう言われてしまえば、周りにいた他の貴族たちも、口を噤むしか無かった。

ふと奥を見れば、先程ユリウス様と一緒に出ていった、ヴィクトリア夫人がこちらへやってきた。


「ユリウス、あなたの覚悟は聞かせてもらいました。

 あなたの決めた相手なら私も文句は言いませんわ。でも、私は心配しているの。

 その子に背負わせるにはいささか重荷になっているのではなくて?」


公爵夫人は、私の内心を見透かしたように言った。


確かに、上級貴族として自然に振る舞うユリウス様の隣に立つ私は、こうして必死に取り繕うしかなく……その場にいる者たちの好奇と警戒の混じった視線に、神経をすり減らしていた。


ユリウス彼のために気を張っていたけれど――無理をしているのかもしれない。私が落ち込んでいるのに気づいたのか、公爵夫人は少しだけ表情を和らげた。


「私はフェンネルを守り、幸せにすると誓いました。

 今は理解されなくとも、いつかここにいる方々にも認めていただけるよう努力します。」


「では、婚約者のあなたにも助言をしましょう。

 ユリウスとともにいたいのなら、あなたもそろそろ覚悟をお決めになって_。」


そう言い残し、私たちの前から去っていった。

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