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禁じられた破壊魔法使いの私は、呪われた辺境公爵へ嫁がされましたが、私には何が呪いなのかよくわかりません。  作者: 秋名はる
第2章:妹編

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誘拐

(……何が、起こったの?)


気がつくと、私はどこか見知らぬ暗い洞窟のような場所に押し込められていた。

両手は後ろ手に縛られ、うまく身動きが取れない。


倒れていた身体をなんとか捩じって周囲を見渡すと――自分以外にも、数人の男女が座り込んでいた。


彼らも同じように拘束され、ここへ連れてこられたらしい。


「ここは……一体……」


眠気眼で呟くと、そばにいた数人がこちらに気づき、私が起き上がるのを手伝ってくれた。


「ようやく気がついたようだな――」


状況を理解する暇もないまま、洞窟の入口の方から威勢のよい声が響き、私はびくりと身体を震わせる。


振り返ると、そこにはガラの悪そうな顔つきをした、粗野な男が立っていた。


「お前たちは主から“売られて”ここへ飛ばされてきた。今日から俺がお前たちの主人だ。自由になりたけりゃ、俺のために足繁く働け」


その言葉に、周囲がざわめいた。


「そんな……」

「旦那様が、私を見捨てたっていうのか……」

「こんな薄暗い洞窟で、一体何をさせるつもりだ……」


周りにいた人々は口々に不安や不満を口にした。

よくよく見えば、彼らは皆、貧しい身なりの使用人や労働者が多い。

私のような貴族、しかも幼い娘など――周りには一人もいなかった。


私は怯えながらも、できるだけ相手を刺激しないように言葉を選んだ。


「あの……私も状況がよくわかりません。

 一体、ここはどこなのでしょう。どうして私まで連れてこられたのですか?」


震える声を抑え、私は“新しい主”を名乗るその男にそう尋ねた。


* * *


フェンネルが屋敷から忽然と姿を消したという事実は、瞬く間に屋敷中に広まった。

使用人たちは総出で敷地内をくまなく探し回ったが、どこにも見当たらなかった。


「一体、どこへ消えてしまったというのだ。

 今朝までは確かに屋敷にいたはずなのに……」


ユリウスは憤りを隠せなかった。


「屋敷内にはどこにも見当たりませんでした。

 ただ、納屋につないでいた馬が一頭、姿を消しておりまして……装備も一式なくなっております。

 もしかすると、一人で外へ出られたのかもしれません」


執事はそう推測した。


「用事もなく、誰にも言付けもせず……なぜいきなり屋敷を飛び出す必要がある?

 そんなこと、考えられない」


ユリウスには理由がわからなかった。


「近隣の街まで使いを出して、周辺を捜索させてくれ。一人で出ていくなんて、あまりにも危険すぎる」


ユリウスの指示を受け、使用人たちは四方へ散っていった。


静まりかえった部屋に一人残され、ユリウスは深く頭を抱え込む。苦悩と焦燥が胸を締めつけていた。


そんな時、戸口のところにエルミールが現れ、静かに告げた。


「……ユリウス様。

 実はわたくし、姉が出ていった理由について心当たりがありますの」


「心当たり……?」


ユリウスは顔を上げた。


「はい……」


エルミールは、彼の隣へ寄り添うように立つと、甘い囁きを落とした。


「実は、以前から姉に相談を受けておりましたの。

 “ユリウス様との関係に満足していない”――と」


「フェンネルが……?」


ユリウスは信じられないという表情を浮かべた。


「姉は昔からそうでしたわ。

 “自分にはもっと高貴で魅力的な男性がいるはずだ”と、自分から縁談を断ったり、

 ぞんざいな態度をとってお相手を困らせることも多くて……」


エルミールは悲しげに眉を下げて続けた。


「もちろん、わたくしはあなたの価値を十分に理解しておりましたから、この縁談は逃してはならないと説得したのですけれど」


ユリウスは目を伏せたまま、言葉を失っていた。


「もしかしたら……わたくしがここへ来たことで、姉の不満をより募らせてしまったのかもしれませんわ」


「どういう意味だ?」


「だって……わたくしの夫、エドワード様は、もともと“姉の縁談相手”だった方。

 わたくしが幸せそうにしているのを見て、姉は嫉妬して自暴自棄になったのかもしれません」


「フェンネルが……君にそんなことを言ったのか?」


ユリウスは、なおも信じられないといったように問い返した。エルミールは、真剣な眼差しのままコクリと頷く。


「ええ。間違いございませんわ」


ユリウスの胸に、重たいものが落ちた。


思い返せば――

出会った当初、彼もフェンネルに冷たく当たってしまったことがある。自分の呪いのせいで、フェンネルに不自由な思いをさせてしまった時期もあった。


確かに、最近のフェンネルはどこかよそよそしかった気がする。昨晩だって、彼女はエドワードと親密そうに話しているのを目撃したし、理由を尋ねても彼女ははぐらかしたように思う。そう考えれば、辻褄が合うような気もしてきた。


「自分の姉ながら……何てわがままな方かしら、と。

 あなたに無礼な態度を取っていたこと、妹として謝罪いたしますわ」


エルミールはそう言うと、念押しするようにユリウスへと身を寄せた。ユリウスが何も返す言葉が見つからないでいるのを見て、エルミールは密かにほくそ笑んだ。

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