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禁じられた破壊魔法使いの私は、呪われた辺境公爵へ嫁がされましたが、私には何が呪いなのかよくわかりません。  作者: 秋名はる
第2章:妹編

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治癒魔法

昨晩、“公爵略奪作戦”を閃いたエルミールは、早速、翌朝から行動を開始した。


朝の食堂では、エドワードと姉、そしてユリウスが穏やかに談笑している。そこへ、彼女はかねてより計画したとおりに声を上げた。


「そういえば、ユリウス様は類まれな魔力をお持ちだとお聞きしましたわ。

 _偶然にも、私もユリウス様と同じ“治癒の魔法”を使えますの。」


声高らかに、エルミールは宣言した。


「ああ、フェンネルから聞いているよ。君も優秀な魔力の持ち主で、これまで多くの人々を治療してきたと。」


「お姉さまから伺っていたなんて、光栄ですわ。でも、私こそユリウス様は、まさに私の敬愛すべき先輩ですの。」


エルミールは言葉に熱を込め、さらに身を乗り出した。


「貴方様の魔力の素晴らしさは噂に聞いております。

よろしければ是非私の魔法を指南してくださいせ。」


エルミールは、姉と比べて自分のほうが優れた魔力使いであることを誇示する狙いがあった。


フェンネルが、公爵に自分の能力のことを話したのかは知らないが、姉は能力を使うことを禁じられているはずだし。


仮に話していたとしても、野蛮な破壊魔法なんかより、治癒魔法のほうがよっぽど有用で価値が高いに決まっている。そうして自分のほうが優秀な魔法使いだとわかれば、彼の思いはすぐに自分の方に傾くはずだ。


偶然にもユリウス様も同じ治癒魔力の使い手だと、ら事前に下調べしてある。エルミールは彼に急接近するチャンスだと感じていた。


「確かに、それは良い案だ。」


そう言って同意したのは、エドワードだった。


「ユリウス様は、王都でも名の知られた稀有な魔力の使い手。うちのエルミールも、これまで何人ものけが人や病人を救ってきたのです。

 

しかし、最近は魔力を使う機会が減っていて……。

もしご助言をいただけるなら、きっとさらに能力を磨けるでしょう。」


エドワードは真面目な表情でそう告げた。彼は、近ごろエルミールが治癒の力を使いたがらなくなったことを密かに気にしていたのだ。


「なるほど。では、使用人の中で最近体調を崩している者を何人か呼んでみよう。」


ユリウスはそう言って執事を呼び寄せ、屋敷内で治療を希望する者がいないか探すよう指示した。


「屋敷の者たちは、いつも働きづめだ。この機会に、少しでも楽にしてやれるなら彼らも喜ぶだろう。」


それを聞いてエルミールは一人ほくそ笑んだ。


* * *


しばらくすると、執事が数人の使用人を引き連れて戻ってきた。


彼らは、厨房の料理人や薪割りの職人、庭師など、普段から体を動かして働いている者たちだった。


「最近、腰が悪くて……。立ち仕事や重いものを持つのが辛いんです。」


「寒さのせいか、風邪気味でして。悪寒と頭痛が続いておりまして。」


「この前、庭木の剪定をしていたら枝に引っかかって……。右手を傷めてしまいました。まだ治らなくて。」


使用人たちは、それぞれの症状を口にした。

ユリウスがエルミールの方を向き、「直せそうか?」と尋ねる。


「お任せください。この程度なら、すべて私の魔力で元気にして差し上げますわ。」


エルミールには勝算があった。

だって、今まで魔力を十分に使うことができないでいたのは、単純に魔力を盗むために存在していた姉が不在だったからだ。


姉がこうしてそばにいれば、エルミールは際限なく魔力を発揮することができる。エルミールは張り切っていた。


「そうか、ではお手並みを拝見しよう。」


エルミールのやる気満々な様子を見て、ユリウスも次第にエルミールに期待を寄せていた。



彼女は一人目の使用人の肩に手を置き、ゆっくりと念を込める。すると、掌の内に淡く鈍い光が差し込み、触れられたあたりがじんわりと温まっていった。


「おおっ……! 確かに痛みが引いていく!」


使用人の声に、周囲から歓声が上がった。エルミールの魔法のおかげで、確かに使用人は治癒され元気になった。様子を上がっていた周囲の人々が感嘆の眼差しをエルミールへ向けて賞賛する。いつものお決まりの展開にエルミールはこの日も悦に浸っていた。


その場で一人だけ、顔色を曇らせたのがフェンネルだった。


(_まただ…。ひどい頭痛がする。)


以前から、エルミールが魔法を使うとき、たまに自分の体調が急に悪くなることがたびたびあった。


原因は分からない、たまたまエルミールが魔法を使う時に発症しているだけかもしれないし、もしかしたら自分の“破壊魔法”と“治癒魔法”の性質が合わないのかもしれない。


盛り上がっているエルミールたちの邪魔にならないように、とフェンネルは一人部屋の隅に腰掛けてじっと耐えている。すると、私の不調に気づいたユリウスがそっと声をかけてきた。


「フェンネル? 

 どうした、大丈夫か?」


ユリウスが心配そうに顔を覗き込む。


「いえ……大したことではありません。ただ、少し疲れたみたいで。」


そう、私は笑ってごまかしたが、おもむろにユリウスは私の肩に手を添えた瞬間、彼が何かを察したように目を見開いた。なぜだかフェンネルは魔力を使ってもいないのに消耗していた。ユリウスの持つ治癒能力によって、彼はフェンネルの体調不良の原因がわかった。


「なぜ、何もしていない君がここまで消耗しているのだろう。」


(……まさか。)


彼は一瞬、何かを思慮するように黙り込むと、思い出したように彼の治癒魔法で私を治療する。すると先ほどの不調は嘘のように消え去った。


そのあと、彼はどうしてだか再び魔力を用いて、私を包むように小さな結界を張った。そのまま立ち上がり、エルミールの方へ向き直る。


「いかがです、ユリウス様。

 私の手にかかればこの程度のことが可能です。」


私とユリウスのやり取りに気付いていないエルミールは、彼の関心を引こくために甘い声をかけた。


「確かに素晴らしいな。君は優秀な治癒の能力者だと思う。」


ユリウスが素直に感心するので、エルミールは更に天狗になった。


「エルミール、すまないが。君の治癒魔法の構成を、もう少し詳しく見てみたい。

 もう一度、別のものに治療を施してもらえるか?」


「ええ、もちろんですわ。」


エルミールは、にこやかに頷きながら次の患者に向けて再び魔力を込めた。


「あれ……? おかしいわね。

 さっきのように力が出ない……。」


エルミールは首を傾げた。


いくら集中しても、先ほどのような力が湧いてこず、うまく魔力を発動することができなかった。

三人目の使用人の右手の傷は、わずかに薄くなっただけで完全には癒えなかった。


「おかしいですわ。さっきまではうまくいっていたのに……。」


フェンネルに結界を張られていることに気付かないエルミールは、額に汗を浮かべながら何度も魔力を注ぎ続けた。しかし、どれだけ試してみても、それ以降使用人の容体が改善することはなかった。


「今日はこのくらいにしておこう。一度に何人も治療すれば、魔力の枯渇も早い。あまり無理はしないほうがいい。」


ユリウスは穏やかにそう言ったが、その目は何かを確信していた。代わりに彼が治癒魔法を発動すると、残りの使用人たちはあっという間に健康な顔色を取り戻した。


エルミールは唇を噛みしめ、拳を握りしめていた。


(どうして……どうしてうまくいかなかったの?

 お姉様がいるのに、どうして力が出ないのよ!)


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