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禁じられた破壊魔法使いの私は、呪われた辺境公爵へ嫁がされましたが、私には何が呪いなのかよくわかりません。  作者: 秋名はる
第一章:呪い解除編

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屋敷に戻ってきてから

屋敷に戻ってから、私は文字通り泥のように眠った。

魔力の消耗はそこまでではないと思っていたけれど、実際にはかなり堪えていたようだった。魔物を倒し、ユリウス様の呪いを無事に解いたことで、緊張がほどけたのだろう。気を失うように眠り続け、ようやく目を覚ましたのは三日目の朝だった。


メイドたちは、私が起きたのを見るや否や飛び上がり、慌ただしく食事や湯浴みの準備に動き回った。

三日間まったく目を覚まさなかったせいで、相当心配をかけてしまっていたようだ。


食事を取り、着替えを済ませてさっぱりしたところで、ユリウスがわざわざ見舞いに来てくれた。


「フェンネル、もう具合は大丈夫なのか?」


「はい、おかげさまですっかり元気です。ご心配をおかけしてしまい、すみません。」


流石に3日も寝れば体力は全回復したのだろう、私はすっかり元気になって答えた。


「よかった。私の方こそ、君にこれほど負担をかけてしまってすまなかった。」


ユリウスはほっとした様子で微笑んだ。

呪いが解けたことで、彼自身も肩の荷が下りたのだろう。以前より表情が柔らかく見える。


「とんでもないです。お役に立てて本当に良かった。」


わたしもほっと胸を撫で下ろして微笑んだ。


「すっかり良くなりましたし、そろそろ起きて屋敷のみなさんにご挨拶をしてこなければ。」


そう言ってベッドから立ち上がろうとしたとき――。

不意にユリウスがその手を取って制し、私は軽く引き戻されて再びベッドへ倒れ込んだ。


「……ん?」


「だめだ。まだ休んでいないと。それに……まだ私との約束も果たしていない。」


ユリウスはたしなめるようにそういった。


「約束?」


「屋敷を出るときに言ったはずだ。

 もし魔物を倒して無事に戻れたら…君と、あの日の続きをしたいと。」


そう告げると、私の上に覆いかぶさるようにして退路をふさぐ。


「えっ……!? ユ、ユリウス様?」


私が混乱して身体を起こそうとするのもお構いなしに、ユリウスは両手で渡しの頬を包みこんで、わたしの唇を塞ぐ。


「⋯!?」


言葉を失って放心している私をよそに、彼はユリウスはいたずらっぽく笑っていた。


* * * 


そんなことがあり、あの日以来ユリウス様はすっかり人が変わってしまった。前はいつも忙しそうで、私と接する時も冷静で、どこか遠い印象を拭えなかったのに――。


というか、どちらかと言うと私がユリウス様に対する思いが変わってしまったという方が正しいかもしれない。

あんなことがあったあの日以来、彼は毎日私の部屋を訪れるようになっている。彼は気に求めていないみたいだけれど…。


私は目を覚ましたその日以来、毎日もうくたくたになってしまっている。もちろん”体力的”にということではなくて、彼は私をとてもこれ以上ないくらい丁重に扱っていたように思う。


だけど、私はとてもテンパってしまって、とても処理しきれない。今だって、時折昼間の出来事が断片的にフラッシュバックしてくるたびに、頭を抱えて悶絶しているくらいだ。彼は私の心臓に本当に良くない。当の本人は気にもとめていないみたいだけれど_。



この日も。朝食を取ろうと一階へ降りると、テーブルの端にユリウスが腰掛けているのが目に入った。


彼は私を見つけるなり、「おはよう」と言って柔らかく微笑む。


「お、おはようございます……」


不意に微笑まれ、私はまたしてもドキマギしてしまった。気を取り直していつものように向かいの席に座ると、ユリウスは私の顔を覗き込むようにして、またふっと微笑む。


――彼は、一体どうしてしまったのだろう。


呪いが解けたことで、張り詰めていた緊張の糸がほどけただけならいい。今までは、彼にあらゆることで無理をさせていた。これが本来の姿なのだとしたら、私もとても嬉しい。


屋敷に戻ってからというもの、いつも公務に忙しくしているはずの彼が、なぜかそれを後回しにすることが多くなった。代わりに何をしているのかと思えば――なぜだか私の行くところ、やることのすべてに同行してくる。まるで一日中、私の様子を観察しているかのように。


一度、どうして私のそばにいるのかと尋ねてみたが、ユリウスは詳しく答えず、ただ「そうしたいから」とだけ言って笑った。


この前などは、突然屋敷に大きな荷物が大量に運び込まれてきて驚いた。それらはすべて――高級そうなドレスや靴、装飾品、家具の数々。しかも、それらはすべて「フェンネルのために」と彼が用意したものだった。おかげで私の部屋はいま、必要以上に高価な品々で溢れかえっている。


……おそらく、魔物を討伐した私への褒美のつもりなのだろうか。


まあそれならまだ理解できる。ユリウスが妹や父のように、私の力を危険視しない人で本当によかった。一介の貴族令嬢が大魔物を討伐したと知れ渡れば、私を恐れてさらに忌避する人もいたかもしれないからだ。


正直、魔物を倒した直後は、村人たちがどう思うか心配で仕方がなかった。気味悪がられて屋敷を追い出される可能性だってあった。けれど――彼は、今も私をここに置いてくれている。人まずは安心できた。



でも、これもいつまで続くかわからない。だって、こうしてユリウス様が無事に呪いを解くことができた今、私は別にユリウス様にとって“特別な存在”ではなくなったということなのだ。


今までは、彼は呪いがあって他の人には触れられないという制約があった。だから私がそばにいることに幾ばくか意味があったけれども、今はそれがない。


そうなったら、彼は私なんかよりももっと上級の貴族の令嬢とか、もっとふさわしい相手が現れてもおかしくはないのだ。そもそもこの婚約は彼自身が言っていたように仮初めのもの。彼の意向次第で婚約破棄だってできてしまう。


私もここでの生活に慢心しないで、彼と別れた後どうするかをきちんと考えて置かなければ行けない。

_密かにそう決心していた。



前半終了となります!!

ここまでお読みいただきありがとうございます!!


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引き続き後半もお楽しみに!!


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