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禁じられた破壊魔法使いの私は、呪われた辺境公爵へ嫁がされましたが、私には何が呪いなのかよくわかりません。  作者: 秋名はる
第一章:呪い解除編

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瓦礫のなかで2人きり

二人は崩れ落ちる瓦礫の雨の中を、出口を目指してひた走った。けれど、あと一歩というところで頭上から大岩が崩れ落ち、行く手を塞がれてしまった。


「――っ!」


目の前で通路が閉ざされるのを見て、フェンネルは息を呑んだ。全身を覆うように落ちてくる瓦礫。その瞬間、ユリウスが彼女を抱き寄せ、強く腕の中に引き寄せる。


耳をつんざくような轟音と、世界が崩れ落ちるような音を最後に、フェンネルの意識は闇に呑まれた。


* * *


どのくらい時間が経ったのだろう。薄く瞼を開けると、あたりにはぼんやりとした明かりが漏れていた。


「……ここは、一体……?」


身を起こそうとして、初めて気づく。自分が誰かに後ろから抱きかかえられていることに。


「……気がついたのか?」


静かな声が背後から響いた。姿は見えないが、低く落ち着いた声――間違いなくユリウスだった。


「私どうしてここに……?魔物を倒して……それから……」


まだ頭がぼんやりしている。必死に記憶をたぐり寄せると、様子を察したユリウスが淡々と説明してくれた。


「魔物を倒したあと、私たちは瓦礫の中に閉じ込められたらしい。完全に洞窟が崩れる前に、私が結界を張ってここに逃げ込んだんだ。」


言われて見回すと、周囲は自分たちのいるスペースをあけただけで、それ以外は岩壁にとり囲まれていた。

狭い空間の一角からは、どこか遠くの方で淡く光るあかりが差し込んでいるようだが、それ以外にそこにあるのは私と、私を抱くユリウスだけ。


ほんの少しでも結界を張るのが遅れていれば、二人とも生き埋めになっていたに違いない。


「なんとか……ここから抜け出す方法を見つけないと」


私がつぶやいて身じろぎをすると、後ろにいたユリウスが私のことをしっかりと支え直した。


当然のようにユリウスに抱きかかえられているのだが、今まで彼とこんなにも接近したことはなかったので内心緊張して、必要以上に意識してしまう。


と、同時に、こうなったのはそもそも私の軽薄な行動が全てだったので、彼をこんなことに巻き込んでしまい、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。


ユリウスはそんな私の内心など気づきもしていない様子で、冷静に周囲を見渡していた。その優しさが私の心に刺さった。


(なんとしてでもここから2人で生きて抜け出さなくては_。)


「隙間から光が漏れているから、ここは地上からそう深くないはずだ。ただ、上に積もった瓦礫が重くて、私の力では押し上げられない」


私が目を覚ます前から、ユリウスはここで色々と状況を確認していたのだろう。


「なら、私が魔力を使ってみます」


フェンネルは腕を上げ、光が差す方へと顔を向けた。

破壊魔法を使えば、上の岩を吹き飛ばして外に出られるはずだ。ユリウスの結界が守ってくれているから、多少の衝撃なら崩落の心配もない。


「本当に大丈夫か? 君はさっき、魔物を倒す時に相当な魔力を消耗していたようだが_。」


ユリウスは心配そうにつぶやいた?わたしは小さく微笑んで頷いた。


「平気です。まだ力は十分残っている気がします」


自分でも不思議だった。あれほど全力を使ったはずなのに、まだ体に魔力の流れを感じる。さっきのをもう一度やってみることだってできそうなくらい、私はピンピンしていた。


私は一度深く息を吸い込み、手に力を込めた。


「ドッカーン!」


けたたましい爆音とともに、頭上の岩が弾け飛んだ。

続いて眩しい陽光が差し込む。私は思わず腕で顔を覆った。




「_ユリウス様! フェンネル様

 ――ご無事ですか!」


私達がそこから崩れた瓦礫をよじ登り、ようやく地上へたどり着いた同時期に周囲の捜索に当たっていた衛兵たちが、私たちを見つけて駆け寄ってきた。


どうやら、私が放った魔力の爆音を聞きつけて、慌ててこの場所に向かってきたようだ。


衛兵たちに両脇を抱えられ、私はようやくしっかりと地に足をつけた。地上の空気は冷たく、けれどそれが生きている証のようで、胸の奥から息が漏れる。


「皆、大事はないか? 周囲の村人や町の様子は? 何か被害は出ていないか?」


ユリウスは、私を洞穴から助け起こすと、すぐに兵たちへと問いかけた。


「麓の村や村人には被害はありません。

 洞窟の崩落による地響きがあり、兵たちは一時退避しましたが、今のところ皆無事です!」


「行方不明となっていたのは、旦那様とお嬢様だけでございました。よくぞご無事で……!」


「ただ……魔物の動向はいまだ不明です。

 再び暴れ出す危険もあります。現在、衛兵たちが総出で村人の避難を急がせています」


報告を聞いたユリウスは、ようやく小さく頷いた。

その横顔には安堵と、張り詰めた緊張の影が入り混じっていた。


「そうか……被害が出ていないのなら何よりだ」


そう言ってから、彼は簡潔に洞窟内での出来事を説明した。魔物の討伐と、洞窟の崩落。


「……おそらく、今は瓦礫の下敷きとなっている。

 あれだけの崩落では、再び起き上がることはないだろう」


その言葉に、兵たちは一斉に歓声を上げた。


「魔物が……倒された!」

「これで村が救われるぞ!」


歓喜の声が次々と上がり、辺りに安堵の空気が広がっていく。けれどユリウスだけは、浮かれる兵たちに鋭い視線を向け、静かに告げた。


「崩落した地盤はまだ不安定だ。周囲の安全確保を最優先とせよ。

 瓦礫の下に取り残された者がいないか、引き続き捜索を続けろ」


その的確な指示に、兵たちは再び引き締まった表情で散っていった。冷静で毅然としたその姿に、私は改めて彼の指揮官としての強さを感じた。


私達は、救護の兵士に付き添われて山を降りることになった。そういえば、と側近の兵の一人がためらいがちに口を開いた。


「……旦那様、ひとつ報告がございます」


ユリウスが振り返る。


「被害というほどではありませんが……この一帯に、少々“異変”が起きておりまして」


「異変?」


フェンネルとユリウスが同時に顔を見合わせた。

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