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禁じられた破壊魔法使いの私は、呪われた辺境公爵へ嫁がされましたが、私には何が呪いなのかよくわかりません。  作者: 秋名はる
第一章:呪い解除編

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魔力の実践訓練・剪定

翌日、フェンネルは屋敷の裏手にある廃材置き場で早速、魔力の特訓を始めた。

そこは使われなくなった古い家具や木材が積まれている場所で、多少ものが壊れても誰にも咎められないだろう。



まずは、昨日読んだ本に書かれていたように、殺陣のような刃物の一撃を発現させて物を切る練習から取り掛かる。これは先日、倒木を薪に変えたときにも応用した手法で、比較的難なく成功した。


次に、任意の地点で衝撃波を発生させる――いわば魔力の“爆弾”的な術も試す。発動地点を指定できれば応用は利くため、こちらも概念的には扱いやすかった。


今度は範囲を広げ、殺陣の一撃を木だけでなく、落ちていた陶器やガラス、さらには石にも向けてみる。陶器やガラスは、魔力が当たった瞬間に粉々に砕けてしまい、「切る」というよりは「粉砕」といった結果になった。効果は劇的だが、繊細な調整が必要な場面では使いにくい。



一方、石は頑丈でなかなか割れない。何度か当てるうちに、小さな引っかき傷のような跡が付く程度だった。ただし力の加減が難しく、少し出力を強めると石もガラスのように砕けてしまうことがある。


(鍵は、魔法の種類ではなく、力の“制御”にあるのかもしれない。)


確かに、こうして小さなものに対して小さい魔力を発動させようとすると、繊細な魔力の調整を行わなければならず、なかなかうまくいかなかった。見境なく力を発現させるほうが簡単なことのように思えた。


ここで疑問に思った_。

_もし限界まで力を最大限発動させたりしたら、自分は一体どのくらいのことができるのだろう。


当然ながら、私はこれまで自分の能力を限界まで発揮したことはない。破壊魔法は扱いを誤れば危険を及ぼす。だからこれまでは、どちらかといえば力を抑え気味に使ってきた。


腕を組んで考え込むと、本音が顔を出す。

正直、本音を言ってしまえばかなり大振りなものまで壊せてしまいそうな気がするのだ。この前倒した倒木だって、別に力いっぱいやったわけではなかった。本当に本気を出したらこの屋敷だって吹き飛ばせてしまいそうに思った自分がいたので、私は怖くなってそれ以上は考えないようにした。


(今できることは、出力の微調整を磨き、小さな成功を積み重ねること_。)



代わりに何かできることはないかと考え、私は屋敷の外へ出てみた。

しばらく散策していると、表庭の方で庭師の男性が枝木の剪定をしているのが目に入った。


「いい天気ですね。今日は枝木の剪定をされているのですか?」


声をかけると、庭師は顔を上げて微笑んだ。


「はい、お嬢様。お日柄も良いですし、冬に備えて屋敷の庭木を切りそろえておこうと思いまして。」


「でも、こんなにたくさんの木々をすべて一人で剪定するのは大変じゃないですか?」


見れば、男性はすでに年老いた庭師だった。

庭中には高木から低木まで数えきれないほどの木々が並んでおり、とても一人で数日で終わる仕事ではない。


「いえ、ご心配には及びません。いつものことですから。」


庭師はそう言って笑ったが、私はふと考えを巡らせてから口を開いた。


「もしよければ、この剪定――私に任せてくださいませんか?」


「えっ……お嬢様が、ですか?」


庭師はぽかんと口を開けたまま、言葉を失った。

無理もない。公爵の婚約者が、剪定の手伝いなどと言い出すとは思ってもいなかったのだろう。


「落ちた枝木の回収だけお願いしたいんです。

 剪定そのものは、すぐ終わらせますから。」


そう言って、私は軽く腕まくりをした。

庭師が止める間もなく、私は木々の方へ手をかざし、魔力を込める。


瞬間、空気がピンと張り詰めた。見えない刃のような魔力の一撃を小刻みに放つと、青々と茂っていた針葉樹の枝が音もなく切り揃えられていく。


(やっぱり、細かいものを壊すよりも、このくらい大胆に魔力を使うほうが楽にできるわね。)


フェンネルは心の中でそう呟きながら、軽く手を振る。

その動きに合わせて、破壊魔法の刃がまるで風のように枝葉を整えていった。歩くたび、枝が落ち、形が整う。私はまるで庭を散歩するかのように、屋敷に立ち並ぶ木々を一本ずつ剪定していった。


そして――あっという間に庭中の木々が見事に整えられた。


「終わりました。」


振り返って告げると、庭師はしばらく呆然と立ち尽くしていた。

その口は半ば開いたままで、言葉が出てこない様子だ。


「なんと_これは驚きだ。」


(……旦那様と同じように、この娘も“特別な力”を持っているのか。)


庭師は驚愕した。この地方では、魔力を持つ者など滅多にいない。最初は、庭師もフェンネルのような“能力者”を恐れていた。だが、ここまで鮮やかに、まるで芸術のように剪定を終わらせて見せられては――もはや恐れよりも感嘆の方が勝ってしまう。


庭師は深く頭を下げ、去っていくフェンネルの後ろ姿を、敬意と驚きの入り混じった目で見送った。

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