表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
禁じられた破壊魔法使いの私は、呪われた辺境公爵へ嫁がされましたが、私には何が呪いなのかよくわかりません。  作者: 秋名はる
第一章:呪い解除編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/50

治癒の魔法

屋敷に戻ると、抱き抱えられた私とユリウスを見て、使用人たちが驚きの表情と共に駆け寄ってくる。


玄関先で主人の帰りを待ち構えていた執事のアルフレッドが事態を察して前に進み出たが、ユリウスは鋭い視線を向けて、彼を一喝した。


「アルフレッド。お前がついていながら

 私の婚約者を危険に晒すとは、どういうことだ。」


「……面目の仕様もございません。なんとお詫び申し上げればよいか……。」


私は彼がいつになくドスの利いた口調で叱りつけるのを見て、ビクリと飛び上がってしまった。

執事もまた神妙な面持ちで深々と頭を下げる。


(――勝手に出ていったのは私なので、そんなに彼を責めないでください……。)


一瞬口を開きかけたが、あえて自分が割って入るような雰囲気でもないので口をつぐんだ。


それよりも、私は別のことが気になっていた。使用人たちは皆、一様に顔を見合わせていてまるで信じられないものを見たかのように私とユリウスを凝視している。


(……これまでに、旦那様が女性を抱き上げるところなんて、誰か見たことがあったかしら?)


(旦那様には誰も触れられないはず……。触れれば皆、呪いの力で倒れてしまうのに……。)


(なのに、どうしてこの方は平気な顔をしているの……?)


直接声が聞こえたわけではなかったが、使用人たちの表情がそう語っていた。


続いて、何人かの使用人が前に出て、治療のために私の身柄を預かろうと手を伸ばす。

だが――ユリウスは、彼らを一瞥すると短く言った。


「いい。私が連れていく。」


ユリウスは私を抱きかかえたまま、一歩も譲らず屋敷の廊下を進む。


(……ど、どうしよう。こんなふうに抱きかかえられたまま、みんなの前を通るなんて……!)


私、重いですよ。という心配とともに、恥ずかしさで顔から火が出そうだったが、彼の腕の中でどうすることもできない。


こうして私は一人彼の腕の中であたふたしながら、それでもユリウスに抱えられ、周囲の視線を一身に浴びながら――自分の寝室へと運ばれていった。


* * * 


「じっとしていて。

 ――今、直してあげよう。」


「えっ?」


思わず聞き返すと、ユリウスはおもむろに私の足首のあたりへ片手をかざし、静かに力を込めた。


その瞬間、驚くような感覚が走った。

じんわりと温かな光が足元に広がり、くじいていたはずの痛みが少しずつ和らいでいく。


「……ユリウス様。あなた、もしかして――治癒の魔力をお持ちなのですか?」


「ああ。この程度の傷ならば治癒できる。

 私の持ついくつかの魔力のうちの一つだ。」


淡々とした口調のまま、彼は添えた手にさらに力を込める。


執事も言っていた。

公爵は、生まれながらにして複数の魔力を操る稀代の逸材なのだと。


この世界では、一つの能力を授かるだけでも稀だ。

二つ以上の力を持つなど、もはや伝説に近い。

だがユリウスは貴族としてその力をもって生まれ、その力で北の寒冷で荒れた大地を平定し、瞬く間に豊かな領地へと変えたのだという。


「よし、これで大丈夫だろう。――立てるか?」


気づけば痛みがすっかり消えていた。

ユリウスは治癒の手を止め、私の肩を支えて長椅子から立ち上がらせてくれる。


「痛みはないか?」


「はい……すっかり良くなったみたいです。ありがとうございます。」


そっと足に体重をかけてみても、さっきのような痛みはまったく感じない。

本当に不思議なほど、完全に癒えてしまっていた。


妹のエルミールも治癒魔法を使えたけれど、これはその比ではないほど正確で迅速。

一度の治癒魔法使いの中でも高い魔力を有していることがわかる。


「私の力で大抵の怪我や病気は治せるが……あまり無理はしないように。」


「……はい、気をつけます。」


そう返して部屋をあとにしようとしたとき、不意にユリウスが私の手を取り、その場に引き止めた。


「…? どうしました?」


彼に向き直った瞬間、ユリウスが私の腕をぐいと引き寄せる。

足がもつれ、そのままかけていたソファへと倒れ込んでしまう。

仰向けになった私の上に、ユリウスが覆いかぶさるように迫ってきた。


(わわっ……!)


心のなかで悲鳴を上げたが、彼は気にも留めず、じっと上から私を見下ろしている。


「あれからずっと気になっていたんだ。

 君は本当に、私がどこをどう触れても平気なのかと疑問に思っていてね。」


そう言って、ユリウスは私の顔へかがみ込み、両手で頬を包むようにして覗き込んできた。

私は気が動転して、顔から火が出そうだった。覆いかぶさる彼の温もり、至近距離で迫る薄紫の瞳。鼻先が触れそうなほど近くて、頭が真っ白になる。


固まったまま動けない私とは対照的に、ユリウスは淡々と私の顔や体へ軽く触れ、一通り確かめたあと、ようやく身を引いた。


「……やはり、何をしても君にはなんともないということなのか。」


ユリウスは私の動揺に気づかないまま、平然とそう言ったけれど

(なんともなくないですよ……!)と、私は内心で叫んでいた。


「では、私は執務に戻るよ。屋敷を開けていた間に貯まった仕事を片付けなければならないからね。」


そう言い残し、ユリウスはいつものように忙しげに私室へ戻っていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ