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目覚め #1

 

 冷たいような。温かいような。

 不思議な感覚に身を包まれている。


 暗い。一切の光が無い、そこで”私”は目覚めた。


 ”私”───そう、”私”


 それが自我であることは理解できている。

 しかしそれ以上はない。

 ”名前”と呼ばれるもの。”私”にはそれがない。


 いや、思い出せない、と言った方が正確だろう。


 ”私”には前世と呼ばれるものがある。

 そこでは。そう、ヒトと呼ばれる存在であった。

 死んだ、という記憶もある。理由は忘れたが、”私”は確かに息をしていて、確かにその命を終わらせた。


 では、今ここで漂っている意識は何だ?”私”とは?


 思い出そうとしても何も出てこない。何かを掴みかけても、するりと零れていく感覚。

 いくつもの感情が泡沫のように浮かんでは消えていく。


 いつから”私”はこうしていた。あるいはずっとこのままなのか。

 一筋の光もない暗闇の中、自問自答を繰り返す。二度、三度。”私”とは何か。

 何かに触れる感触もない。自身の鼓動の音すらもない。息を吸うための肺も、空気もない。


 意識が徐々に遠のいていく。


 あぁ、この感覚は・・・


 これが幾度となく繰り返されていることなのを思い出し、


 意識が闇へ溶けていった。








 ◇◆◇






 突如、意識が目覚めると同時に体が引きずられる感覚。

 抗う間もなく、上へ引きずり込まれる。

 この闇の中で初めて与えられた感覚だ。頭が混乱する。


 ベチャリと

 何か硬いものに体がぶつかる。混乱がますます強くなる。


 目がうまく開かない───そこで目があることに気づく。

 自身の右側から伝わる冷たい感触。手があった。


「───ァ」


 口が、開いた。


 どういうことだ?


(死んだ、はず?)


 そのはずだ。死因は思い出せないまま、死んだという意識だけがあった。

 しかし、現状はどうだ。


 息を吸える。手が、足が、口が、まぶたが。どれもわずかではあるが動く。


(一体・・・)


 重く震えるまぶたを何とか開く。

 暗く、おぼろげな影のみが見える。

 あれは───


(足・・・?)


 人の足、だろうか。薄暗く、ハッキリとは見えないがそうだろうと決めつける。

 上体は見えない。いや正しくは見ることが出来ない、だ。

 何か、小さな影が人の上体に覆い被さっていて揺れていた。


 不意に、強烈な飢餓感が襲う。

 理性が消え、不思議な力が湧き起こる。

 本能のまま足が動く。フラフラと。先ほど見た人の足の方へ。


 覆い被さっていた生き物を横にどける。

 力なく手足を投げ出していたそれは、間違いなく人であり、女性であった。

 考える間もなく体が動く。女性の乳房を口に含む。


 喉を鳴らし、口に流れ込む液体を嚥下する。

 生温かいそれは、飢えていた腹を瞬く間に満たしていく。

 もっとよこせと乳房を握る手にさらに力を込める。


 あぁ、美味い。

 無我夢中でむさぼっていたその時、

 ガツン、と。


 鈍い音。体が宙を舞う感覚を最後に、またもや意識が闇に落ちていく。

 まぶたが落ちるその直前、確かに見た。

 薄暗いこの空間の中でもぎらつく黄色の瞳。人のものとは思えない緑色の肌。


(なんだ、あれは───)








 ◇◆◇







「───ッ!?」


 意識が戻る。

 慌てて立ち上がろうとし、力が入らずその場で足がもつれる。

 手を伸ばしきれず、したたかに顔を地面に打ち付けてしまう。痛い。


(夢・・・じゃない)


 痛む顔をさすり上体を起こす。

 そして徐々に、先ほどまでの記憶を取り戻していく。


(そうだ───)


 顔を巡らすと・・・いた。

 這いながら、見つけたそれに近づく。間近で観察すると、確かにそれは人の女性であった。


(こんな薄暗いところで?)


 あたりを見渡す。

 ぼんやりとした明かりのみが照らす空間。


 天井が明らかに人工物のものではない。

 塹壕、という言葉が脳裏をよぎる。といってもその言葉を知っているだけで、どういったものかは分からない。

 しかし、それは違うのだろう。


 女性は裸であった。そして、その身体には明らかに・・・


(・・・いや、それは私も、か)


 先ほどまでの行為を思い出す。

 だが何故だろう。不思議と嫌悪感はなく、疑問だけが残る。


 なぜあのような行動を取ってしまったのか。


(突如襲った空腹。あれは、尋常ではなかった)


 嫌な予感を首を振ることで消し、思考を巡らす。

 まず、気になるのは最後に見えたあの緑色の生き物の正体。


(私の記憶にはない・・・緑色の肌の生き物なんて知らない)


 いや、待て。

 緑色は見間違いで何か刺青をした人、という考えはどうだろう。

 犬猫が人を犯すなど聞いたことがない。そう考えると先ほどまでの行動も理屈が通る。


(話が通じると良いんだが・・・)


 腹が鳴り、その音で肩が跳ね上がる。

 視線を落とし───首を横に振る。

 足に力を込める。何とか立ち上がれた。そのまま一歩、一歩とゆっくりと歩を進める。


 あの空間に女性は複数人いた。

 それを、"私"は努めて見ないようにした。




 あてもなくさ迷う事しばらく。何かをたたく音が耳を打つ。

 さらに進むと広間に出た。そこでは───やはり薄暗くよく見えないが───先ほど見た緑色の生き物がいた。


(───大体、10人ぐらいか)


 近寄る。彼ら?はこちらを気にする様子もなく、何かを口に運んでいた。


「───ォ」


 声を出そうとし、失敗する。

 焦れてさらに近づいてみせる。そして、彼らが何に手を伸ばしていたかが目に入った。

 生き物だ。小動物。その破片、一部。

 よく見るとそれはコウモリのようなものであったり、ネズミのようなものであったり。あるいはカエルのようなものであったり。そういったものが山のように積み重ねられていた。

 ような、というのはほとんど原型を留めておらず、食い散らかされていたからだ。


「───ッ!?」


 嫌悪感とか拒絶感とか。

 そんなものよりも、襲い掛かる強烈な空腹感。


 気づいた時には駆け出し、目の前のぐちゃぐちゃの山に手を伸ばす。

 掴み取ったものを確認することもなく、口へ運ぶ。

 味が分からないことが救いだろうか?一心不乱に口へ運ぶ。運ぶ。運ぶ。


 ふと我に返ったとき、その広間にいたのは自分一人だけであった。

 ぐちゃぐちゃだった山は、もうほとんどない。思い返せば、入れ替わりが何回かあったような気もする。


「フゥーーー」


 膨れた腹をさする。さて、ここから───


「Ghow」


「───ッ!?」


 肩を掴まれた。そこには背丈が自分よりわずかに高い緑色の生き物がいた。


「───ァ───ッ!」


 離せ、と叫ぶことすら出来ない。

 肩を強く掴まれたまま身体を引きずられる。

 滅茶苦茶に暴れようにも引きずられる力があまりにも強く。肩を掴む腕を叩くぐらいしか出来ない。

 というよりも痛い。肩が握りつぶされそうだ。


「~~~ッ!」


 このままではまずいと自ら歩く。痛みがわずかに和らいだ。


 引きずられるまま歩く。

 一体どこまで、そんな考えも間もなく明かりが見えてきた。


(外───)


 体を投げ出され、前につんのめる。

 慌てて顔を上げた先には何人もの緑色の生き物。


 瞠目する。


 太陽の下、映し出された緑色の肌は刺青などではない。

 黄色くぎらつく瞳の瞳孔は縦に割れている。

 頭髪はない。先が尖った耳が嫌に主張する。

 衣服と呼ばれる類は腰に付けた何かの皮のみ。中にはそれすらない個体もいる。


「───ッ!?」


 腹部を蹴られ、数度地面を転がる。

 ゲゲゲと耳障りな声が響いた。ついで、肩を掴まれ無理やり立たされる。


 まとまらない思考の中、一匹の緑色の───いや、化け物が吠える。


「Fogow!Fogow!」


「rou!rou!」


 それに合わせるように周りの化け物たちも吠える。

 一番に吠えていた化け物はある方向を指さし、先陣を切って歩き出した。


 従うように、他の化け物たちも歩き出す。

 肩を叩かれた私も呆然としつつ、足を進めていく。


 歩きつつ、少しずつ、少しずつ現状を整理していく。

 まず、この化け物たちは何者か。


(明らかに見たことがない二足歩行する生物・・・いや、単に無知なだけかもしれないが)


 先頭を歩く化け物の姿をさらに観察する。

 爪はねじれており、先が鋭くとがっている。

 手の指は5本ある。対して足には大きな指が1本と、それを挟むように比較的小さな指が2本生えていた。


(宇宙、人・・・?)


 先ほどの声は、もしかしたら化け物なりの会話なのかもしれない。

 歩きつつ、あっちこっちから何かを回収しては、隣の個体と会話を交わす様子が見られる。

 群れの数は、正直わからない。とにかく多い。


 では目の前にいる化け物は宇宙人だと仮定しよう。


 そうなると、次の疑問は


(ここはどこで。今はどんな時代なんだ?)


 宇宙人に侵略されたあとの世界、と考えるのはいささか突飛だろうか。

 踏みしめた草。横を通り過ぎる木。頭上をよぎる影。

 生物についての知識はまるでない。これらを見たところで生息地を判別するのは難しい。


(暑さはほどほど。並ぶ木々もかなり大きいし、あれか?熱帯雨林とか?)


 そんな思考を巡らせることしばらく。

 やがて黒い雲が空を覆い、ポツポツと雨が降り出した。

 雨足が次第に早くなっていく。ぬかるみに足を取られた何匹化の化け物がイラついた声をあげた。


 いったいどこまで。そう考えたときだった。

 先頭にいた化け物が不意に声をあげた。


「Wofl!Ghoa!」


 こぶしを振り上げる。同時に雄たけびを上げて、他の化け物どもが駆け出す。

 一体何が?

 突然の出来事に思考が停止する。しかし、それでも体が動いた。

 何も知らず、ただ駆ける。

 その先。それを見て、目を大きく開かせる。


(んだ、あれ?)


 鹿。そう形容できる生き物。

 ただ大きい。記憶にある馬より遥かに。


「oOOhhhh!!」


 鹿が雄たけびを上げ、その巨体を震わす。

 先頭にいた化け物もかなり大きかった。2メートルほどはあっただろう。

 しかし、鹿の大きさはそれを優に超える。


 立ち並ぶ木々の半ばまである巨体。

 それを支える極太の四肢。四肢を覆う、山脈を想起させる筋肉。

 紫の瞳を輝かせ、頭部の両端にある角を振り回す。


 先頭にいた化け物のそばを一匹の化け物が横切り、そのまま鹿へ躍りかかる。

 手にはこぶしほどの大きさの石。それを勢いよく振りかぶる。


 一撃。

 振り回された角が化け物の腹をたやすく引き裂き、衝撃で体が千切れる。


「OOaahhhh!!」


「Blowwwww!!」


 それでも進行は止まらない。

 仲間がやられたことへの怒りか。化け物たちはさらに速度を上げ、鹿へととびかかる。

 あるものはこん棒で。あるものは木の棒の先をとがらせただけの槍で。あるものは拳で。

 ひたすらに鹿へ挑む。

 先頭にいた化け物が再び雄たけびを上げる。

 見ると他の化け物とは違う、手の込んだ石斧を両手に持って振り回している。


 鹿も負けていない。

 巨大な四肢を震わせ、縦横無尽に駆ける。

 巨体があたれば吹き飛び。放たれた蹴りはたやすく化け物の頭を、腹を、胸を足を手を粉砕する。

 角の一撃は凶悪の一言に尽きる。かすっただけでも手足が千切れ、伝わる衝撃で体も千切れていく。


 無限にいるとも思えた化け物の影がどんどん消えていき、代わりに見るも無残な肉塊が積み重なっていく。

 それでも足を止めない。吠える口を閉じない。


(なぜここまで───ッ?)


 飛んできた化け物の破片をかわす。

 化け物たちの勢いは止まらず、次々と鹿へ飛びかかっていく。


 無茶だと吐き捨てる。

 鹿の巨体には確かな傷跡が見えるようになってきた。

 口の端から涎を垂らすその姿は、疲労を感じているようにも見える。

 それでも、その巨体が凶器であることは変わらない。


 持ち上げられた脚が大地を踏み鳴らす。

 巨体が揺れ、この大雨の中であったも鈍い輝きを宿す角が振りかぶられる。

 ただそれだけで、いくつもの屍が積み重なる。


 それでもなお挑み続ける理由。

 おそらく、これは───


(狩り、か!?)


 偶発的な出会いであれば徹底でいいはず。

 爛々とした輝きを目に宿した化け物たちは、明確な殺意を持っていた。


(食うのか!?正気か!?)


 ふざけるなと怒鳴りそうになる。

 しかし漏れ出たのは意味不明なうめき声のみ。

 ギリッ、と歯を鳴らす。


 その時だった。


「───ッ!?」


 鹿が雄たけびを上げ、縦横無尽に駆けまわる。

 道中にいたものは踏み潰されるか、吹き飛ばされるか。

 抵抗は、無意味。


 その突進がこちらへ向かってくる。


(かわ、せない───ッ!?)


 両隣にいた化け物が鹿へ飛びかかる。

 結果は変わらない。物言わぬ肉塊が、耳元を横切る。


「───ァ」


 死が迫ってきた。


 鹿の吐息が聞こえる。

 代わりに大地を踏み鳴らす音が変に遠い。


(いやだ───)


 1歩。2歩。

 もう、目前まで。


(いやだ───)


 歯を食いしばり、全身の筋肉が千切れるのではないかとばかりに体をひねる。

 少しでも、衝撃から身を守るために。


(死にたく、ない───ッ!!)


 巨体が体を叩く。

 内臓がつぶれたのかと思うほどの衝撃。

 音も痛みも、あらゆる感覚が吹き飛ぶ。


 気付けば、体が横に倒れていた。


「───ハ───ハ」


 遅れて強烈な痛みが体を襲ってきた。


(力が、入らねぇ...)


 生きてはいる。辛うじて。

 乱れた呼吸が肺をかき回す感覚。それすらも鈍痛へ変わっていく。

 やや遅れて聴覚が戻ってきた。跳ねる雨の音。遠くから聞こえる怒号。悲鳴。


 顔を滴る雨粒を払いのける力もない。

 震える腕をなんとか動かし、上体を起こす。


「───ガッ!?」


 バシャリと音が鳴り、起こした上体がそのまま倒れる。

 手を突く間もなく鼻を強打する。ドクン、ドクン、とまるで顔が鼓動しているかのような感覚。


 まだ。まだ生きている。

 まだ動く。


 ゆっくりと身体を起こす。

 ポタポタと落ちる水滴が、地面に出来た水たまりを揺らす。

 そこに映り込んだ姿を見て、あぁ、と息を漏らした。


(分かっていたさ───)


 それでも認めたくなかった。

 緑色の肌。黄色い目。尖った耳と鼻、そして鋭い牙。

 紛れもない化け物の姿で、そして───私の姿だった。


 分かってはいた。

 それでも───


 ギリッ、と歯が鳴る。

 悔しい?違う。怒り?違う。

 形容しがたい感情が心の底から湧き上がってくる。


(私は・・・何を・・・)


 期待してたんだろうか。

 そう吐露しかけたとき、


「UooOOOOOO!!!」


 地鳴りを思わせる重低音の雄叫び。

 死屍累々と化した台地で、巨体は高らかに咆え立てた。


 周りを囲う化け物の数ももう少ない。

 それでいて戦意だけはあるとばかりに目をギラギラと輝かせていた。


 一体何がそこまで奴等を掻き立てているのか、さっぱり分からない。

 さっぱり分からないが、


(このままでは、全滅する───)


 それは確かだった。


「ハ───ッ」


 死ぬのは嫌だ。


 漠然とした。ありふれているであろう願い。

 死を目前にした今だからこそ、より強く願う。


 と、そこまで考えたとき思わず笑みがこぼれた。


(馬鹿げているな)


 一度死んだはずの命。

 生まれ変わって、また1日も経っていない命。

 それでも、死は怖い。

 死にたくないと願う。


 だから、


「ギ───ギギ」


 歯を食い縛り、立ち上がる。

 鹿はこちらに気付いていない。気付いたところで、意にも介さないだろう。

 それでいい。


 荒い息を整えつつ、辺りを見回す。

 先の尖った木の棒を見つけ、更に近場に落ちていたみたいなもので手に巻き付ける。


(狙うは一点)


 徐々に力が戻ってくる。

 主要な骨が折れていなかったのは幸いと言うべきだろう。即席の槍を握る手に、更に力を籠める。


「フ───ッ」


 短く息を吐き、勢いよく駆けだす。

 想像より速い。

 急な加速に面食らうも、脚はついてきた。やや後ろに倒れそうだった身体を前傾に直し、更に加速する。


 巨体がみるみる近づいてい来る。

 それでも、先ほどまで感じた恐怖がほとんど薄れていた。


 記憶にない速度で走るたびに湧き上がる高揚感。

 やれるという万能感。

 それらが恐怖を掻き消す。


「ッ!?」


 鹿がこちらに気付いた。

 彼我の距離は10メートルもない。

 しかし、対処するには十分な距離。


 鹿が巨体を震わし、巨大な角を振りかぶる。

 あの一撃を喰らえばひとたまりもなく身体は引き裂かれるだろう。


 目をカッと見開く。


(集中しろ!)


 ありったけの神経を注ぐ。

 かわす。かわす。かわす。かわす!


 奴はこれまで、その一撃で何匹も敵を倒してきたのだろう。

 ゆえにその一撃には自信が籠められていた。

 その一撃には、慢心が籠められていた。


「───ッ!?」


 全てがスローに動いていく。

 頭上。その斜め上から振り下ろされるような角度の角。

 踏みしめられた前脚が大地を削る。


 歯を食い縛る。

 チャンスは一度きり。次はない。

 叩き込むイメージは出来ている。あとは、それをなぞるだけだ。


 実戦、どころか喧嘩すらもしたことがない。

 習い事で多少武術はやっていただけだ。

 おぼろげな記憶には、型とか技とか残っていない。

 ただがむしゃらに動くだけだ。


 皮肉にも

 この醜い身体は


「───ォオオ!!」


 私の希望に応えてくれる。


 身体を後ろへ、無理矢理引き倒す。

 ブチブチと何かが切れるような音を努めて無視し、再び上体を前へ。

 角は僅かに顔をかすめ、遠くへ飛んでいく。


 その瞬間を逃さない。

 勢いそのままに槍を突き出す。

 お世辞にも狙いすましたとは言えない一撃。

 だが、


「GYAAAAAAA!!!」


 執念の一撃は、その巨体を震わせるに至った。





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