(6)
(6)
「お連れしました!」
私が連れてこられたのは、さっきの部屋よりも何十倍も広くて、天井も高い部屋だった。
部屋の中には何も無くて、奥の方に大きな椅子だけがある。
これが、謁見室というものか……。
定時帰りの庶民にはまったく縁のないものだ。
そこにいたのは、
(アルフォンス王子……!)
明るいところで初めて見る王子は、見たこともないくらいのイケメンだった。
金色の髪はキラキラと光っているし、
目の色も透き通った緑色。
慌てて頭を下げた私のところに、アルフォンス王子やってくる。
「ようやく会えた。僕の聖女」
「……??」
驚いて、思わず顔を上げると、至近距離でアルフォンスが私をのぞきこんでいた。
(か、顔が近い……!)
「君が驚くのも無理はない。この国では実は、王子と結婚するのは聖女だという決まりがあるんだ」
「えっ……」
初めて聞いた。
「君が知らないのも無理はない。これはこの国に伝わる極秘の事項だから。そのためにわざわざ王宮で聖女を雇っているんだ。真の聖女を探すためにね」
「し、知りませんでした…。」
(まさか高待遇、定時で帰れる簡単なお仕事の聖女にそんな側面があったなんて……)
「僕は実は……君が本当に聖女ならいいなと思っていた」
「え……」
思わず顔を上げると、アルフォンス王子と至近距離で目が合った。
フェラルドとはまったく違う、真摯な瞳が私を覗き込んでいる。
驚いている私の顔がキラキラと光る瞳に写っている。
「で、でも……」
答えようとした時だった。
「メアリ様! お待ちくださいませ!」
バタバタと廊下の方が騒がしくなる。
「聖女様はこちらにいらっしゃるんでしょう?ならば一度ご挨拶をしなくては!」
止める兵士たちに混じって女の子の声が聞こえてくる。
「なんの声でしょうか?」
開いていたドアから入ってきたのは明るい蜂蜜色の髪を綺麗にカールさせたびっくりするくらい綺麗な顔の女の子だった。
綺麗な、とか可愛いとしか言っていないけどそうとしかいいようがないから仕方ない。
メアリ様と呼ばれた女の子はパタパタッとこちらに駆けてくると、アルフォンス様の腕を取った。
「アルフォンス様、こちらが聖女様?わたくしにも紹介してくださらない?」
「メアリ。謁見中だぞ」
よく見ると、メアリ様の目は少し私を睨んでるような気がする。
ふと、時計を見た。
16:45。
……今日の定時帰りは難しそう。




