(2)
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聖女というのは、困っている人の話を聞いての症状に合う対処をするというもの。
聖女は基本的には魔法の力を持っている人がなる。
私のように雇われ聖女はできないと言われているけど、ケガを治すことができる聖女は伝説としてあがめられている。
「お、王子何を…!」
ケガがすっかり治った王子は従者の言葉に見向きもせず、潤んだ瞳で私を見ている。
金色の絹みたいに綺麗な色の髪が、昼間よりも少し冷たくなった風に吹かれて揺れている。
(柔らかそうだなぁ…じゃなくて!)
「け、結婚ってどういうことですか?」
「僕は、本物の聖女を探していたんだ」
「だ、だけどこの娘は雇われ聖女で大した力もなくーー」
「だけど、僕のケガを治した! 見てなかった人はいないだろう?」
王子の言葉に従者たちが戸惑ったように顔を見合わせる。
それもそうだ。
【雇われ聖女】
最低限のことしかしない、魔力だって微々たる量しかない。
大きなケガとかは治せるわけもない。
せいぜい落ち込んだ気持ちを軽くするとか、簡単な擦り傷を治すことができるくらい。
それが私への評価だから。
「とにかく、」
まだ何か言いかけた王子が、頭を抑える。
「王子!!」
従者たちがわらわらっと寄ってくる。
その隙に私はーー
ダッシュで逃げた。
「に、逃げたぞ!!」
「追え、追え!」
*
「ふうん…なんだか、面白いことになってきたね」
*
王子たちから逃げた私は、そのままの勢いで家に飛び込んだ。
「はぁ、はぁ、危ないところだった…」
小さいけれど、内装にこだわり抜いた綺麗な一軒家。それが私の家。
そしてそこにはーー
「あー、やっと続きができる!」
ぬいぐるみ達と、それからぬいぐるみに着せるための服。
私は昼間の仕事中に考えていたあれやこれやを考えながら、針を手に取った。
*
「なんですって、王子が【雇われ聖女】に求婚を!?」
だだっぴろい大広間。
シンシアの仕事部屋のものよりも何百倍も高価そうな調度品の数々。その中にいたのは、髪を高く結い上げた妙齢の女性。
そして、その向かいに座るのはまだ幼いともいえる少女だった。
「王子の許嫁は、この娘なのに!」
言われた娘は不敵に微笑む。
「ええ、そうね。お母様。
王子と結婚してこの国の女王になるのは私」
「【雇われ聖女】が王子のケガを治せるわけが無い。なにかトリックがあるんだわ!」
唇を噛み締める母親を娘はかわいそうなものを見るような目で見て。
「大丈夫よ。お母様。
計画通り、お母様を宰相にするから。」
そう言って母の手を取る。
「そして、この国に復讐しましょう。」




