夏の白夜と夜のカーテン 2
太陽が二つ昇る白夜にも慣れた頃、両親にもうすぐノーザンライが空に現れると教えてもらう。
この、ノーザンライが空に現れると白夜も終わり夜が訪れる合図だという。
これ以降また太陽は一つに戻る。
この空の現象はこの雪の降る国ならではの現象らしい。また、私たちの住んている所は他の地域比べて更に強い魔力が降り注ぐ為、この地域の人々は魔力が高く寿命もかなり長くなるらしい。
その為、この時期は魔力を浴びる為にこの地域へ訪れる人々も一定数いるらしい。
日光浴的な何かの現象がもうすぐ起きるらしく私もその現象を体験することになった。
皆、外は明るいとはいえ夜の時間帯にそろそろだなと言いながら外へ行く準備を始める。
そうしているうちに夏の季節なのに雪を踏みしめるようなグググというかキュッキュッというような音が響き始めた。
この音が明るい夜空にノーザンライが現れる知らせのようなものらしい。
皆に倣って空を見上げると薄明りのパステル画のような柔らかな淡いピンク色から青へと移りゆくグラデーションの白いっぽい空に突如として光のカーテンが現れた。
それは、遥か彼方からゆっくりと舞い降りてくる、巨大な羽衣のようでもある。
緑、ピンク、紫、黄色、青と様々な色が複雑に絡み合い、まるで生きているかのように蠢いている。
その美しさに、私は息をのんだ。
言葉を失い、ただただ、その光景に見入っていた。
空が割れそうな音がしている。ギュギュというような不思議な音だけど、不快感はない。
これは異世界版オーロラだな…。と思いながらカラフルな明るい夜のカーテンを見つめ続けた。
「アナスタシアは去年は小さかったから覚えてないんだろうね。」
とお父様がこちらを見て微笑む。
お母さまも優しい顔で
「そうね、去年も静かに空を見ていたけど、すぐに寝てしまったもの」
なんて会話を聞きながら
「きれぇー……」
って単語しか口から生まれなかった。
魔力を浴びながらこれで今年も無病息災で長生きって感じなのかなと思いながら芝生の上に敷かれた、いつもの赤いタータンチェックのブランケットに寝転がり一夜を明かした。
翌朝、気が付けばベッドで寝ていたので、誰かが部屋まで運んでくれた事に感謝をし、朝食を迎える。
今日もいつもの細長くカットしたトーストと半熟卵の組み合わせかと思いきや、ノーザンライが現れてきょうからまた夜が訪れる記念ということでブルーベリーやラズベリーを練りこんだクレープが出された。
ノーザンライに見立てた光のカーテンを色々な色のクレープで表現しているらしい。
甘い生地にホイップクリームがたっぷりのっていて朝から幸せ。
分厚いベーコンとスクランブルエッグ、コールスローサラダも本当に美味しい!
この世界で暮らすようになってから本当に美しくて不思議な事が沢山ある。
魔法もまだ教えてもらってはいないけど、いずれ教わって使えるようになるかと思うと楽しみで仕方がない。
とりあえずはこの大きなお城の探検をしようと思う。
巡回馬車が走るくらい広大な土地なので、全部見て回るにはどれだけ時間がかかることだろう。
最近、小さい湖も見つけたし、果汁園や農場、研究所とかも見てみたい。
魔法を使った訓練や練習を行う運動場みたいなところもあると聞いたので、魔法を使っている所もみたいんだよね。
色々な場所で電力のように魔力が使われているのは分かるのだけれど、「ザ・魔法」っていうのも見たいとどうしても思ってしまうのは仕方がない。